気候変動アクション日本サミット 2024 に寄せるセルウィン ・ハート国連事務総長特別顧問(気候行動および公正な移行担当) 兼 事務次長補(気候行動チーム担当)基調講演
プレスリリース 24-073-J 2024年10月18日
ご来賓の皆様、ご列席、同僚、友人の皆様、
このサミットを主催し、私の考察を皆様と共有する機会をくださった、気候変動イニシアティブに感謝いたします。
今年のサミットは、気候危機との闘いにおける重要な局面で開催されます。
1.5度目標を現実的なものとし、気候危機の最悪の影響を防ぐ機会は、ほとんど失われています。
現在の温暖化レベルで、私たちはすでに地球上の都市、国、大陸で前例のない異常気象を目の当たりにしています。
しかし、希望はあります。気候変動による大惨事を回避するために、誰が何をいつまでに実行すべきかについて、これほどまでに明確になり、合意が形成されたことはありません。
私たちには、クリーンエネルギーへの転換を加速させる技術、ソリューション、ノウハウがあります。再生可能エネルギーと蓄電池は、かつてないほど安価で入手しやすくなっています。
事務総長が述べたように、化石燃料のない未来は今や確実なものになりました。しかし、公正で迅速なエネルギー転換はまだ確かなものになっていません。
これは私たち次第です。
親愛なる皆様、
世界が日本に期待するリーダーシップは、二つあります。
一つは、率先して模範を示すこと。2025年に各国が提出する予定の次期NDC、すなわち気候計画は、各国が自国のエネルギー戦略と経済開発の優先事項を気候変動の野心と整合させる、前例のない機会です。
次期NDCは、1.5度目標と整合し、経済全体とすべての温室効果ガスを対象とし、COP28の世界的なエネルギー転換目標のすべてに貢献するものでなければなりません。
G7と他のOECD諸国は、次のことにコミットし、主導的役割を果たさなければなりません。
石炭火力の新設プロジェクトと石油・ガスの上流プロジェクトの即時中止、
2030年までの石炭火力の段階的な廃止、
そして、2035年までの電源構成の完全な脱炭素化。
日本は、第7次エネルギー基本計画と新たなNDCを策定するにあたり、1.5度目標と整合するNDCとエネルギー転換計画がどのようなものなのかを、世界に示す必要があります。
石炭火力の段階的廃止の期日がなく、新たな石炭火力発電プロジェクトを検討している数少ないOECD加盟国の一つである日本は、石炭・ガスへの固執から早急に脱却し、国内的、地域的、国際的に再生可能エネルギーと貯蔵の展開を支援しなければなりません。
二つ目として、私たちは、財政を立て直し、公正で公平なエネルギー転換を確保するためのリーダーシップを必要としています。
中国以外の開発途上国や新興国におけるクリーンエネルギーへの投資は、2015年の水準にとどまっています。これらの国々は、世界人口の3分の2を占めますが、昨年誘致したクリーンエネルギー投資はわずか15%に過ぎません。
途上国の大半は、ネットゼロへの競争から取り残され、債務に苦しみ、グローバル・バリューチェーンの底辺に閉じ込められ、気候のカオスに見舞われています。
日本は、主要な二国間ドナーと国際開発金融機関の出資国であり、そのリーダーシップは、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の達成に見合う金融アーキテクチャの構築に必要な大胆な改革を進めるために、これまで以上に必要とされています。
私たちに必要なグローバルな金融システムとは、地球の破壊を助長し続け、資金を最も必要とする場所に手頃で十分な資金を提供できないものではなく、解決策の一部となるものです。
友人の皆様、
あらゆる都市、地域、産業界、金融機関、企業もまた、解決策の一部になる必要があります。
来年のCOP30までに、これらの主体は国連のネットゼロ宣言に関するハイレベル専門家グループの勧告に沿って、強靭で信頼性の高い1.5度目標と整合する転換計画を提示しなければなりません。
その計画は、バリューチェーン全体の排出量を対象とし、
中間点での排出削減目標値と透明性のある検証プロセスを含み、
そして気候変動にほとんどあるいはまったく効果がなく、人々の信頼を損なう疑わしいカーボンオフセットを避けるものです。
ご来賓の皆様、
この正念場においては、最大限の野心、加速、そして協力が求められます。
国連は全力を尽くします。信頼を築き、解決策を見つけ、利害関係者を招集し、世界が切実に必要としている協力を促すために、たゆまぬ努力を続けます。
ありがとうございました。
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