イラク国連本部爆破1周年に寄せる
コフィー・アナン国連事務総長メッセージ(2004年8月19日)
プレスリリース 04/075-J 2004年08月19日
1年前のきょうバグダッドで起きた事件は、とりわけ亡くなられた22人の遺族の方々、そして身体的、精神的あるいは感情的に深い痛手を負われた方々にとって、計り知れない悲劇となりました。それはまた、国連で働く私たち一人ひとりにとっても大きな悲劇となりました。なぜなら、親友や身近な同僚の命が失われ、しかも国連の青い旗、そして懸命に国連の使命を果たそうとしている人々が直接の標的となったからです。私たちはこれまで、そして今も、このショックから必死で立ち直ろうとしています。
国連ファミリーが暴力や脅迫の対象となったのは、これが初めてではありません。事実、数百人の職員がその尊い命を失っています。しかし、国連本部のあったカナル・ホテルへの攻撃は新たな、さらに差し迫った危険が生じているという現実を私たちに突きつけました。それはすなわち、国連に奉仕する私たちが政治的暴力の矢面に立たされたという現実です。私たちは今、根本的なジレンマとの苦闘を強いられています。国連の主役は人々です。私たちは人々に近づかなければならず、また、人々は私たちに近づけなければなりません。このような「開かれた国連」の必要性と、今日の世界での治安対策とをどのようにバランスさせればよいのでしょうか。多くの人々が安全保障理事会を含む私たちの助けを必要としていながら、私たちの活動を断固として阻止しようとする人々もいるような場所で、国連はどのように活動したらよいのでしょうか。私たちは考え方を根本的に改めるべきなのでしょうか。それとも、これは一過性の悲劇に過ぎないのでしょうか。
殉職者の遺族の方々、この恐ろしい悲劇で負傷された方々、そして生き残った方々はこの1年間、並々ならぬ精神力と勇気を振り絞って生きてこられました。その苦悩はこれからも続きます。国連はこれらの人々に寄り添い、その悲しみと苦痛をともにしてゆきます。私は単なる友人としてだけでなく、国連職員の福祉と安全の最高責任者としても、深い苦悩、落胆、そして喪失感にさいなまれています。どんなに長くかかろうとも、私はこの残酷な殺人事件の犯人が決して裁きを逃れることがないよう祈っています。
この悲しい記念日に当たり、犠牲者の方々を追悼するとともに、遺族の方々に哀悼と連帯の意志を示そうではありませんか。