国連グローバル・コンパクト
アナン国連事務総長、GCサミット閉会のあいさつ
プレスリリース 04/060-J 2004年07月08日
~自主的イニシアチブがうまく行くことは実証済み~
以下は2004年6月24日、コフィー・アナン国連事務総長がグローバル・コンパクト(GC)・リーダーズ・サミットで述べた閉会の辞です。
最初に、きょうの午後、すばらしく示唆に富む報告を行っていただいた4人のプレゼンターの方々に感謝の意を表したいと思います。
きょうは特別な日となりました。
世界のあらゆる民族、すべての政府、そして国際社会を構成する他のステークホルダーが共通の課題を話し合い、共通の解決策を見出すために一堂に会し、この国連総会会議場で一日の締めくくりを行うことは、サミットにとってまさにふさわしいことと言えます。
理想を掲げることは立派ですが、実質にはさらに大きな意味があります。私たちはきょう、この実質面で大きな進展を遂げたのではないでしょうか。
GCを堅持し、責任ある企業市民であり続けるという決意を新たにしつつ、私たちの共同の取り組み、そしてそのあるべき方向性についての理解を深め、私たちは一日を終えることになります。
私たちはパートナーとして、意見の相違と緊張状態を行動を志向する建設的戦略へと変え、GCが抱える課題に取り組みました。皆さんは、先行きに対する不安と恐怖が高まっている時代でも、企業、労働者、市民社会、政府が反目を乗り越え、共通の土台に立って物事を進められることを実証したのです。
きょうははじめて、投資業界の方々をここにお迎えすることができました。このことは、市場利益とあるべき企業実践とを調和させることに対する関心の高まりを表しています。また、正しい行いを求める企業の姿勢をさらに強める上で、重要なよりどころを提供するものだとも言えます。
私たちはきょう、腐敗防止という10番目の原則をGCに加えました。この修正に至る過程で皆さんが行った集中的な協議は、参加者の大多数がこのようなGCの強化を望んでいることを示しているだけではありません。それ自体が他の模範となる審議過程でもありました。その結果、GCには、成長と発展を妨げる最大の障害の一つであるこの問題に取り組み、トランスペアレンシー・インターナショナルのような団体との協力を緊密化する体制が整いました。
皆さんはきょう、幅広い具体的な約束も交わしました。具体的には、各社のサプライチェーンでGCの原則を実施に移すこと、紛争地帯で人権を擁護すること、まともな労働条件を確保すること、クリーン・テクノロジーに投資すること、腐敗を許さない方針を実行に移すこと、エイズなどの病気と闘うこと、後発開発途上国で零細企業を育成することなどがあげられます。原則とプロジェクトは表裏一体をなし、規範面と実践面での取り組みは補完関係にありうる、また、そうならなければならないことを皆さんは実証しています。皆さんがこのようなやり方で、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に貢献することを、私は期待しています。
最後にはなりましたが、国連自身も、GCの原則を取り込むことに十分コミットしています。当初から、GCの特異な成果の一つは、内部からの国連の刷新を助けることでした。国連内部のプロセスでGC原則を採用することにより、私たちはこの方向へのさらなる一歩を踏み出すことになります。
多くの成果は得られたものの、やるべきことはまだ多く残っています。多くの重要な側面で、私たちの旅はまだ始まったばかりなのです。
過去4年間にGCが達成した成果を見れば、自主的イニシアチブは可能であり、しかも実際にうまく行くことは明らかです。しかし、そのためには確固たる意思が必要なことも私たちは学びました。政府には正しい行いが必要です。それは、国民全員の利益となるように、よい統治を行うことに他なりません。企業は、企業責任と慈善活動を通じて提供したものを、ロビー活動によって取り返すことを慎まなければなりません。そして市民団体は、財界が一枚岩ではないことを認める必要があります。そこには指導者も脱落者もいます。プラスの方向に踏み出した指導者は支援すべきです。時につまずくことはあっても、最初から努力を恐れるような状況を作り出すべきではありません。
私たちにとって目前の課題は、GCの新たな戦略理念の中身をしっかりと定め、対象範囲の拡大に見合う新たな統治機構を設計することです。
GCの中心的な比較優位は、その原則の普遍性、国連だけが体現できる国際的正当性、そして、先進国だけでなく開発途上国でも、幅広い訴えかけを行う真の意味でグローバルなプラットフォームとなれる潜在的な可能性にあります。よって、GCの新たな戦略理念は、グローバルな活動とローカルな活動との連携、相乗効果、そして相互支援の可能性に特に重点を置くものとしなければなりません。
GCの新たな統治機構を考案する必要もあります。ビジネスの言葉に置き換えますと、GC事務所は、ブランド管理と品質保証を第一の使命とすべきです。官僚組織化は避けなければなりません。また、オーナーシップと発案力は、企業、労働者、市民社会、原則の擁護者である国連機関、ほとんど自然発生的に林立、急拡大する国内ネットワークを含め、すべての参加者がさらに幅広く共有しなければなりません。これら国内ネットワークの3分の2は開発途上国に所在するほか、参加企業のほぼ半数も開発途上国に本社を置いています。
GCの体制をこのように変えることは簡単な仕事ではありません。これをやり遂げるには、皆さんの助けが必要です。私のGC担当特別顧問であるジョン・ラギー氏、そしてGC事務所のギオルク・ケル所長に対しては、集中協議プロセスを調整し、今から12カ月以内に、皆さんの最善のアイデアを反映する勧告を提出するよう要請してあります。皆さんには、ブレーンストーミング会合、作業部会、個別協議などへのお誘いがあるかもしれません。
私たちは引き続き、皆さんのリーダーシップに期待しています。皆さん自身の取り組みが結実し、さらに参加者が増えるよう、皆さんにはチアリーダー、人材スカウト、提唱者など、多くの役割を担っていただく必要があります。政府はこれまで、政治的な支援と、GC事務所への自発的資金供与により、GCの活性化に大きな役割を担ってきました。私はこの貢献に感謝したいと思います。
私たちを結びつける共通のきずなと価値観をさらに強めなければ、私たちが住む地球村は繁栄できません。貿易、投資、科学技術など、さまざまな要素が絡み合うことにより、私たちの未来は固く結ばれています。しかし、私たちに共通の希望と運命があることは分かっていても、その本当の意味は十分に理解されていません。ほとんどの人々にとって、そして人々から選ばれる政府にとって、地球村は相変わらず遠く抽象的な存在に止まっています。一人ひとりの生活がそこから大きな影響を受けていても、です。私たちは未だに、古くから受け継がれてきた考え方、そして、さまざまな出来事の名残である行動や制度に縛られたままなのです。
皆さんの声は、国際問題の隅々にまで届きます。皆さんには、ルールに基づくグローバル秩序を作り上げる力があります。私たちが共有する未来は、この秩序の構築にかかっています。短期的な戦術を捨て、継続的な参加を決心された皆さんに、拍手を送りたいと思います。ともにこの旅を続けようではありませんか。本当のグローバル市民になろうではありませんか。人々の生活にプラスの変化をもたらし、平和で正しく機能する持続可能な社会の礎を世界中に築くことができるまで、たゆまぬ努力を続けようではありませんか。
ご出席に感謝いたします。そしてご参加に感謝いたします。今後とも末永く、皆さんと協力してゆけることを期待しています。