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コフィー・アナン国連事務総長、パレスチナ委員会への声明

プレスリリース 04/022-J 2004年03月19日

~ロードマップ(和平への行程表)はイスラエル、パレスチナ双方の希望実現への「もっとも現実的な道」~

以下は3月12日、パレスチナ人民の不可譲の権利行使に関する委員会2004年会期の開幕にあたり、コフィー・アナン国連事務総長が行った声明です。

きのう(3月11日)、マドリードで起きた恐ろしい悲劇を受け、私はスペインのフアン・カルロス1世国王、スペインの政府と国民の皆様、さらには死傷された方々の家族と友人の皆様に対し、心から深い哀悼の意を表したいと思います。

皆様、この悲劇で亡くなられた方々の冥福を祈り、共に1分間の黙とうを捧げることに致しましょう。

パレスチナとイスラエルとの間では、極めて厳しい緊張関係が続いています。和平への取り組みに目に見える進展はありません。占領に終止符を打ち、パレスチナ独立国家を樹立するというパレスチナ人の願いは、まだ手の届かないところにあります。イスラエル人の望む安全保障も、まだ実現していません。

それどころか、暴力の応酬により、現地の情勢は再び緊迫の度合いを強めています。イスラエルによるパレスチナ諸都市への侵攻や逮捕、家屋の破壊、封鎖、外出禁止令はなお続いています。目標を絞った暗殺も再び始まりました。その犠牲となるのは、目標とされた者に止まりません。悲しいことに、賑わう街で日常の生活を営む多くの民間人も殺されているのです。

過去数年間、パレスチナ人によるテロ攻撃により、罪のないイスラエル民間人の命が多く失われました。このような罪には何の言い訳も成り立ちません。包括的な停戦により、恐ろしいテロ行為を防止しようとする取り組みも、今のところ成果をあげていません。

パレスチナ人は、分離壁の建設のために土地がどんどん取り上げられてゆくことに対し、やるせなさを感じています。壁の建設に強く抗議するパレスチナ人は、怒りと絶望感を募らせています。

2000年9月以来、死者は増加の一途をたどっています。その数はパレスチナ人が3,000人以上、イスラエル人が900人以上に達しています。負傷者も数千人に及びます。死者の大半は民間人で、その多くは子どもたちです。

イスラエル人もパレスチナ人も、もう十分すぎるほど犠牲を払っています。時間を無駄にするのはやめましょう。この惨い紛争を直ちに話合いで解決することが必要です。

平和的な解決に向けた具体的な進展がまったく見られないことから、一般のパレスチナ人とイスラエル人の間には、絶望感が強まっています。和平プロセスの行き詰まりにいらだつ市民団体は、平和の実現を促し、プロセスを前進させる可能性のある道を探り始めました。昨年暮れのジュネーブ・イニシアチブとアヤロン・ヌッセイベ原則声明は、意見の相違を乗り越えた対話が可能だという強力なメッセージを送りました。

しかし、行き詰まりを打開し、プロセスを再開できるかどうかは、イスラエル、パレスチナ双方の指導者の明確な政治姿勢にかかっています。どちらかの側が、この泥沼化した紛争を一方的に解決しようとしても、怒りと暴力に拍車をかけることにしかならないでしょう。両者が話合いの席につき、パレスチナ人とイスラエル人が共存できる合意の内容を詰めてゆくこと以外に道はないのです。

2002年にでき上がった「ロードマップ(和平への行程表)」は、両当事者に受け入れられているだけでなく、国際社会からの幅広い支持も受けています。安全保障理事会決議242、338および1397に基づくこのロードマップは今でも、双方の希望を実現する上でもっとも現実的な道なのです。安保理決議1515は、ロードマップへの支持をさらに強いものとしました。この決議の目指すものは明らかです。それは、イスラエルとパレスチナという2つの国家が、平和と安全のもとで共存する姿に他なりません。

私はきょう、双方の当事者に対し、無条件でロードマップを実施するため、直ちに具体的な行動を起こすよう呼びかけます。パレスチナ自治政府に対しては、過激派によるイスラエルへのテロ攻撃を止めるべく、断固とした行動を取ることを求めます。一方、イスラエル政府には、これ以上の入植地の拡大と、分離壁の建設を止めるよう求めます。イスラエルのシャロン首相が、ガザ地区の入植地撤収計画を表明したことは、心強い動きといえます。私は、この撤収に期限が設けられることを期待しています。ガザ地区の入植地撤収は、より幅広いプロセスの一環として、つまり、ロードマップに沿って和平努力の行き詰まりを打開しうる暫定的措置として考えるべきです。

国際社会としては、現在のこう着状態を脱するためのパレスチナ、イスラエル双方の取り組みを助ける決意を固めるべきです。また、国連、米国、ロシア、欧州連合の四者は、両当事者を再び交渉のテーブルにつかせるため、さらに努力を重ねなければなりません。

昨年12月には、引き続き厳しい経済・人道危機に見舞われているパレスチナ人への資金援助を確保するため、ローマでアドホック連絡委員会が開かれました。特別調整官と人道問題調整部は、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、世界食糧計画(WFP)、国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(UNICEF)など、その他国連機関とともに、活動を継続しています。すべての機関が極めて困難な状況で活動しているばかりでなく、中には資源的制約の中での活動を余儀なくされているものもあります。このような中で、国際的な援助は特に重要です。国連は活動を継続してゆくつもりですが、国際社会からの寛大な援助も必要なのです。

パレスチナ委員会は、私たちに共通の目標を目指した取り組みにおいて、重要な役割を果たさなければなりません。中東和平への皆様の献身的努力に感謝いたします。そして、皆様の任務のご成功をお祈りします。