国際移住者デー(12月18日)に寄せる
コフィー・アナン国連事務総長メッセージ
プレスリリース 03/132-J 2003年12月26日
世界中の国々で毎日、自分のために、そして家族のためによりよい生活を求めて、母国を離れる人々がいます。この移住という現象は、移住者を送り出す国々に対しても、移住者が通過する国々に対しても、移住者を受け入れる国々に対しても、大きな影響をもたらします。
移住の管理を改善することは、21世紀の世界にとって重要な課題です。移住の数多い現実的な利益を最大限に高める一方で、それによって生じ得る問題を最小限に抑える必要があります。国際移住機構はもちろん、国連の多くの機関はそのために懸命な取り組みを続けています。
最近になって発足した「国際移住に関するグローバル委員会」(Global Commission on International Migration)は、国際協力の一層の強化に貢献することができます。この委員会は先進・途上各国のイニシアチブによって設置されたもので、私も全面的に支持しています。委員会の最終報告書は、世論の移住者に対する理解向上と、すべての人々の利益となるように移住を管理するための国家間協力強化の枠組み構築に資するものと期待しています。
この枠組みを作り上げる際には、この問題の渦中にいる人々、すなわち移住者自身のことを忘れないようにしましょう。多くの人々は移住を余儀なくされ、危険に満ちた旅を経験した挙句、新しい母国で苦難に直面しています。悪徳な人身売買人、密航援助者、雇用主による搾取や虐待を受けやすい人々も依然として多くいます。近年ではさらに、一部の社会で非難の対象となったり、国内の治安を口実に権利を認められなかったりする移住者も出てきました。このような多くの障害にもかかわらず、移住者の大半は受入国の社会に大きく貢献するだけでなく、送金によって出身国の経済も支えているのです。
正規・非正規あるいは合法・非合法を問わず、移住労働者とその家族の人権尊重を確保するためには、一層の取り組みが必要です。そこで私は各国に対し、今年7月に発効した「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する国際条約」を批准するよう呼びかけます。この条約は締約国について、受入国における移住労働者の主要な人権と基本的自由の尊重を義務づけています。これは、移住労働者とその家族の搾取を防ぐ取り組みに欠かせない要素です。
条約締約国は2003年12月11日、ニューヨークで初会合を開き、「すべての移住労働者とその家族の権利の保護に関する委員会」のメンバーを選出しました。この委員会は、条約履行のために参加国が講じた措置に関する報告書を検討することになります。私はすべての参加国に対し、自国の司法管轄権に服する個人から条約による人権侵害の申立てがあった場合、これを受理、審査する委員会の権限を認めるよう促したいと思います。
4回目の「国際移住者デー」を迎えるにあたり、移住の管理を改善し、移住者の人権保護の取り組みをさらに強化することを決意しようではありませんか。