以下は、12月11日にドイツのシュレーダー首相がベルリンで主宰したグローバル・コンパクト（GC）晩餐会でコフィー・アナン事務総長が述べた乾杯の辞の本文です。

　温かいお言葉と、このディナーを主宰してくださったことに感謝いたします。特に、私が5年近く前にGC構想を発表して以来、首相と貴国政府から頂いた温かい支援に感謝したいと思います。
　実際のところ、GCにこれだけの支援を行った政府は、貴国のほかに思い当たりません。
　ヨシュカ［フィッシャー］さん。国連総会でGCを真っ先に歓迎してくださったのはあなたでした。以後、貴省（外務省）からは政治的に価値あるご支援をいただいています。
　ハイデマリー［ヴィークツォレック］さん。貴省［経済援助省］からはGCの「ラーニング・フォーラム」にノウハウと資源を提供していただいています。
　そしてヴォルフガンク［クレメント］さん。労働大臣として、あなたは労働組合の立場から、GCの利益確保に尽力されました。
　事実、政府、企業、労組、市民社会が社会的合意に基づいて協力するというドイツのパートナーシップ・モデルは、GCの全体的コンセプトにも着想を与えました。
　私はこのような貢献にたいへん感謝しています。トップが指導力を発揮すれば、大きな変化が起こるからです。
　私はまた、きょうここにご同席の企業その他財界指導者の方々にも感謝したいと思います。皆様の多くはGC当初からの参加者として、勇気ある一歩を踏み出し、人権、環境、そして人間らしい職場環境が単に政府の問題でなく、ビジネスに携わる皆様にとっても極めて重要だということを宣言なさったのです。
　皆様はまた、グッド・プラクティスを見分け、これを広めたり、開発途上地域に技術や訓練を提供したり、実にさまざまな形でGCを具体的に支援されてきました。まさに今この時、ブラジルのベラオリゾンテでは、皆様の企業のいくつかがGC年次ラーニング・フォーラムに参加し、その経験を分かち合っているところです。これを含め世界各地でGCが根付くようご支援をいただいていることに対し、改めて感謝いたします。

　GCは着実に進歩を遂げていますが、依然として多くの戦線で厳しい闘いを強いられています。

l HIV／エイズの大きな被害は続いています。公衆衛生システムの能力はすでに限界に達しています。また、工業・農業生産性も脅かされているほか、一部の国々ではガバナンス（統治）それ自体が危機に瀕しています。
l 気候変動は私達が生きているうちに大きな混乱をもたらすおそれがあります。そうなれば、民間の保険会社も公的主体も大きな損害を被るでしょう。
l 貿易交渉の停滞は、開発途上地域に極めて耳障りなメッセージを送り、現在の形でのグローバル化が持続できないのではないかという疑問をさらに深めています。特に、貧しい国々が農産品のグローバル市場に進出することを困難にしている生産補助金や輸入障壁は撤廃しなければなりません。途上国の潜在的競争力がもっとも高いのは、農産品市場だからです。
l そしてもちろん、この1年のイラクをめぐる分裂は集団安全保障の根幹を揺るがし、世界中で不透明性と不安を高め、もっとも必要とする開発途上国に提供されるべき資源を奪い去っています。

　ですから今こそ、皆様の事業に関わる特定的な問題だけでなく、国際協力という事業全体についての立場を明確にしていただきたいのです。グローバル企業、グローバル市民社会、グローバル労組そして政府が、真にグローバルな市民として行動すべき時が来ています。私達が力を合わせれば、世界にオープンな経済を築き、国内にオープンな社会を築くことができます。それはすなわち、将来を見据え、私達全員が直面することになる多くの脅威と課題に他者とともに共同で対応する用意がある社会です。

　富と雇用とチャンスを作り出す企業の重要な役割は、もう広く認識され、理解されています。サプライチェーンの隅々での皆様の影響力、企業間の接触、そして消費者との関係を通じ、皆様は大きな力を行使できます。この力を使って、企業市民というよい行いを広めてください。ドイツ国内でも国外でも、同僚とパートナーの方々に、皆様と同じようにGCの根拠となる普遍的原則を取り入れるよう呼びかけてください。そして、来年の6月、私が国連本部で招集予定のGCに関するサミット会合にもご参加いただければ幸いです。

　お忙しい中のご出席を改めて感謝いたします。この極めて建設的なパートナーシップがさらに深まることを期待しています。そして、このすばらしいグローバル市民の姿をお見せいただいたシュレーダー首相にも感謝いたします。
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