コフィー・アナン国連事務総長
第3回アフリカ開発会議(TICAD III)へのメッセージ
東京、2003年9月29日
プレスリリース 03/102-J 2003年10月07日
国連事務次長兼アフリカ担当事務総長特別顧問の
イブラヒム・ガンバリ氏が代読
アフリカの開発は世界の最も重要な課題の1つであり、国連事務総長としての私が最も優先する事項の1つです。ですから、第3回アフリカ開発会議(TICAD III)を主催してくださった日本政府にお礼を申し上げます。この会議は、連帯とアフリカへの支援における、日本の目覚しい活動の歴史に新たな1ページを刻むものであるとともに、協力関係を深めつつあるアジアとアフリカにとって話し合いの場を提供してくれます。
10年前に始って以来、TICADは、アフリカが自らの開発プロセスを自分たちのものとする重要性、ならびに協力の精神を持って国際社会がアフリカの努力を支援する必要性を強調してきました。それゆえ、TICADは今後、アフリカ開発に関するアフリカ自身の戦略、すなわち「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)の支援に向けて推進されていくものと私は確信しています。
国連はNEPADの実行を支援するための制度的能力を構築してきました。これまでに、農業、医療、教育、環境、観光業、インフラ、産業化という優先分野において、その実施が始まっています。
海外援助は1990年代に減少しましたが、最近では回復の兆しが見えます。アフリカの貧しい国の中で債務救済を受ける国も増えました。また、この大陸の膨大な投資の可能性に気づいている人はまだ少ないとはいえ、一部の外国投資家がアフリカへの関心を高めています。
こうした動きはすべて喜ばしいことですが、これまでより、より多くの努力が必要とされています。そうでなければ、アフリカ諸国の中でミレニアム開発目標(MDGs)を一部でも達成できる国はほとんどないでしょう。NEPADも支持しているミレニアム開発目標は、意志と資源があればまちがいなく実現が可能なのです。
アフリカ諸国は大胆な改革をしなければなりません。NEPADの優先事項に、どうにかして追加的な資金を配分する必要があります。市民社会と民間部門のすべての関与者にとってNEPADがいっそう自分たちのものとなるように、国レベルで広く知れわたることが必要です。
開発を阻むきわめて大きな障害になっているのがHIV/エイズです。特にサハラ以南のアフリカの諸国では非常に深刻な問題です。先週、HIV/エイズに関する国連総会ハイレベル会合で強調されたように、この恐ろしい病気と闘い、この病気がもたらす愕然とするほどのコストを削減するためには、真のリーダーシップが必要です。社会的な汚名と差別、特にHIV/エイズの発症者や感染者に対する差別をなくすためにもリーダーシップが必要とされます。そして、幅広いパートナーシップを通して、社会のあらゆる人々の力と貢献を求める必要があります。それはこれまでよりもずっと大規模に国内外の資源を結集するのに役立つでしょう。
しかし、アフリカの課題に立ち向かおうとするならば、先進諸国はもっと多くのことを実行する必要があります。援助、貿易、債務救済です。
政府開発援助の効果を高めるという面ではある程度の前進がありましたが、全体的な援助の額はまだまだ足りません。また、アフリカが自らの開発の主体者になるという原則も、多くの場合、ひも付き援助のために損なわれています。
さらに、先進国が提供する援助はしばしば、貿易政策、特に農業補助金によって効果が減じられます。こうした補助は、貧困と依存から抜け出す手段であるアフリカの輸出能力を妨げますから、段階的に廃止されなければなりません。残念なことに、最近カンクンで開かれたWTO会議では、この問題について合意に達することができませんでした。交渉の再開後、この議論が進展することが不可欠です。
貧困に苦しむ重債務国のイニシアチブにより、これまでに約20の貧しいアフリカの国々が債務救済を受けました。しかし、その実施はなかなか進まない場合もありますし、一部の国では輸出利益が減少したために債務の指標が悪化しています。今なお多額の対外債務にあえいでいるアフリカの国が多くあります。この問題についても、さらに対策を講じることが必要です。
武力紛争を防止し、解決し、アフリカの多くの国や地域に政治的安定をもたらす手助けをすることも不可欠です。最近、コンゴ民主共和国、リベリア、シエラレオネ、スーダンが平和に向かいつつあることに、私は勇気づけられています。しかし、コートジボワールでの最近の動きは、平和への歩みが脆いものであることを私たちに教えてくれます。そうした歩みを維持しようとするならば、平和維持、人道援助、復興支援、そして長期的な平和を築き良き統治を促進する上での助力など、多くの面で注目と支援が必要なのです。
こうした紛争はいずれも、アフリカの紛争の地域的側面に注意を払う必要があることをはっきりと示しています。私は、この点においてアフリカ連合、およびアフリカ各地域の組織による取り組みを歓迎します。
国連システムとしては、アフリカが数々の困難な課題に立ち向かうのを手助けするために、あらゆる手を尽くそうと努力しています。TICADのプロセスも同じ目的をもっていることを私は知っています。今、私たちに求められているのは、アフリカの深刻な問題に対処し、アフリカがいっそう力強い未来を実現できるようにするため、あらゆる方面で全ての関与者が効果的な行動を取っていくことなのです。