本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

「国連識字の10年」オープニング式典でのコフィー・アナン国連事務総長による演説(2003年2月3日、ニューヨーク)

プレスリリース 03/039-J 2003年05月09日

私は、この極めて重要な目的のためにお集まりになった著名な方々とご一緒できることを喜んでいます。まずはじめに、この機会のためにご尽力いただいた松浦ユネスコ事務局長および米国連協会に感謝を申し上げたいと思います。
 
 特にローラ・ブッシュ夫人が参加されたことを光栄に思っております。識字運動に対する彼女の深いコミットメントは惜しみなく発揮され、常に私たちを鼓舞してきました。
 
 また、「国連識字の10年」の影の推進力となってきたモンゴル大統領と同政府に対しても感謝を申し上げます。
 
 私たちがここに集うのは、成人5人のうちの1人が読むことも書くこともできないという現実を伴って21世紀が始まったからです。今日、世界では9億人近くの人々が読み書きができません。そのうちの3分の2が女性です。
 
 私たちがここに集うのは、識字が人類の惨めな生活を解放するカギであることを知っているからです。それはすべての人間の可能性をもたらすカギであり、また自由と希望の未来の扉を開けるカギでもあります。
 
 私たちがここに集うのは、その希望を実現するにちがいない新しい10年を始めるためです。
 
 「国連識字の10年」は、これから予想される膨大な量の仕事に対し、集団の意志を持って取り組もうという呼びかけです。
 
 それは、これまで以上の努力を行わなければならないことを認めると同時に、過去の過ちから学んだ教訓を生かしていく機会でもあります。
「国連識字の10年」は、識字は人権であるということを私たちに思い出させるものです。55年前、世界人権宣言はすべての人には教育を受ける権利があると定めました。世界の成人の20パーセントがその権利を奪われているという現実は、私たち一人ひとりが心から恥ずべきことです。
 
 そして「国連識字の10年」は、識字とミレニアム宣言を実現するための活動とがしっかりと結びついていることを確認するものです。ミレニアム宣言は、21世紀においてより良い世界を築くための青写真として世界のすべての指導者が採択したものです。識字は、健全で公正かつ繁栄した世界のための必要条件です。
 
 これは特に女性の識字についていえます。これまで積み重ねた研究から分かることは、少女や女子の教育ほど効果的な開発の手段はないということです。
 
 それ以外のいかなる政策も、経済の生産性を高め、幼児や妊産婦の死亡率を下げ、栄養状態を改善し、HIV/エイズの予防も含めて健康を増進し、次の世代のための教育の機会を増大させることはできないでしょう。
 
 私はこうした理由から、「10年」の最初の2年間が「識字とジェンダー」の問題に焦点を当てることになっていることを歓迎します。
 
 私たちは努力を倍増して少女の教育を促進しなければなりません。彼女たちは世界で学校に行けない子どもたちの多数を占めています。
 
 私たちは成人の非識字の撤廃に対しても全力を尽くさなければなりません。最善の方法は、コミュニティの行動を基盤にして活動を進めることです。つまり、現地の状況や事情を考慮に入れ、かつ学習者のニーズに合わせた行動で、政府や国際機関、市民社会がそれを支援します。
 
 こうしたコミュニティの行動に関係している人々は、そのほとんどが女性ですが、私の知る中でももっとも勇敢な人々です。
 
 インドのタミール・ナドゥ地区の女性たちを見てみましょう。そこでは15年前には識字率が全国平均に達していませんでした。ここの女性たちは読み書きを学んでいる間に、同じことをもっと離れた村の人たちにも教えたいと願うようになりました。どのようにしてその村へ行くのか。自転車に乗る方法を学びました。そして3年以内に、この地区は全員が読み書きができるようになったと宣言しました。
 
 別の例を挙げましょう。戦争に引き裂かれたコンゴ民主共和国で働くボランティア・チームの話です。彼女たちは現地語であるンバカ語で読み書きを教えながら、国語であるリンガラ語とフランス語を教えました。このプロジェクトは戦争中も続きました。それが可能だったのは、その地域の人々が現地のニーズに合わせて、低費用でその活動を続けたからです。
 
 また、ハイチの村で読み書きを学んでいる86歳の人を紹介しましょう。「このプロジェクトの終わりに私が自分の名前を書けるようになったなら、そして、選挙に連れて行かれた時に何が起こっているかを理解することができるようになったなら、それは私が何かのために生きたという証しになります」。
 
 こうした例を私たちすべてにとって新しい活動の力としていきましょう。
 
 各国政府は2015年までにグローバルな識字率を50パーセント引き上げるという誓いを果たす義務があります。私たちはこのような約束を次々に行う一方、永遠に果たさない、と言われてきました。
 
 この10年が、そうした言葉が誤りであることを証明できるようにしましょう。私たちの誓いが現実となるのに必要な資源、人的・財政的資源を動員しましょう。
 
 この10年が世界中の何百万という人々の自由と希望の未来へのカギを与えるようにしようではありませんか。