「2015年をグローバルな行動の年に」 事務総長、総会に今年の優先課題を説明
プレスリリース 15-003-J 2015年01月14日
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は1月8日、国連総会で193の加盟国に対し、2015年の優先課題について説明し、今年を「機会の年」にするという所信を表明するとともに、すべての人に持続可能な開発と人間としての尊厳を確保するため、革新的でグローバルな行動を求めました。
「2015年は開発、平和、人権という、私たちの活動の相互に連関する3本柱のすべてにおいて、大きな前進を遂げる機会です」。事務総長は、総会の非公式会合でこのように述べ、一連の持続可能な開発目標を含む新たな開発アジェンダの構築に向けた加盟国の取り組みに賛辞を送りました。
「すでに皆様のお手元にある統合報告書『The Road to Dignity by 2030: Ending Poverty, Transforming All Lives and Protecting the Planet(2030年までに達成すべき尊厳への道:貧困に終止符を打ち、あらゆる生活の変容をもたらし、地球を守るために)』の中で私は、この作業と、今後の道のりに関するいくつかの具体的なアイデアに支持を表明しています」
統合報告書には、ポスト2015年開発アジェンダに関する交渉の現状を把握し、ミレニアム開発目標(MDGs)の追求から学んだ教訓を振り返ることで、各国による議論の前進を支援するねらいがあります。報告書は、今すぐに人々を助けるとともに、新たなアジェンダに向けた出発点を作り上げるという2つの意味で、MDGsの「作業を仕上げる」必要性を強調しています。
事務総長は、各国のビジョンが一般市民に伝達され、各国の国内で達成されるようにするための「必須要素」が報告書で提案されているとしたうえで、新たなアジェンダの採択が2015年を「決定づける瞬間」になると付け加えました。
これに先立ち、ポスト2015年開発アジェンダを担当するアミーナ・モハメッド 事務総長特別顧問も同日、報告書に関する記者会見に臨み、「大胆かつ革新的な」持続可能な開発アジェンダができ上がりつつあると述べ、報告書には、各国レベルの実施を促進する必須要素として、尊厳、人間、繁栄、地球、正義、パートナーシップの6つが盛り込まれていることを明らかにしました。
「[これら要素には]加盟国とすべてのステークホルダーに対し、革新的でわかりやすい持続可能な開発アジェンダへの合意に向けた取り組みを働きかける意味があります」。特別顧問はこのように述べ、6つの要素の強みはその相互依存性にあるため、これらは全体として検討しなければならないと説明しました。
事務総長は、新たな開発プログラムの成果が、気候変動対策と切り離せないことを強調しました。そして、ペルーのリマで最近開かれた画期的な国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第20回締約国会議(COP 20)において、各国が2015年第1四半期に、それぞれの国のコミットメントを表明するという約束を行ったことを改めて強調しました。
3月の防災会議から、7月の開発資金会議、12月の気候変動会議、そして9月にニューヨークで開かれる首脳級会合に至るまで、今年予定されている国連会議はいずれも、相互に関連する持続可能な開発課題に取り組むものとなります。
「これら重要会議のそれぞれで、私たちは引き続き、貧困の解消や不平等の縮小に意欲的に取り組むとともに、気候変動に伴う機会の活用も図っていきます」。事務総長はこのように述べました。
事務総長は、西アフリカでのエボラ蔓延の影響により、最も被害が大きい国々が開発面で大きな後退を強いられていることにも具体的に言及しました。そして、被害国の状況には改善が見られているものの、人員と資金の不足はまだ続いているとしたうえで、「どこで起きるかに関係なく」、次の流行に対する備えも必要となっている、と述べました。
事務総長はシリアやウクライナ、中央アフリカ共和国、マリ北部などの地域で、紛争の影響が広がっていることも強調するとともに、その他数カ国も、国内情勢によって紛争のリスクを抱えていると指摘しました。
「いくつかの国では、民主主義の強化ではなく、選挙プロセスと改憲により、現政権の延命が図られています」。事務総長はこのように述べるとともに、イスラエル・パレスチナ間の交渉を求め、軍事行動だけでなく、過激主義を生み出す根本的条件への取り組みも含めた「残虐行為と過激主義」への対処を強く促しました。
事務総長は、武器貿易条約(ATT)の発効を歓迎し、核兵器が手に入る世界で、平和と安全は達成できないと述べました。そして各国に対し、核不拡散条約(NPT)に基づく責任を果たすよう強く促しました。
「核保有国は、兵器の廃絶どころか、その高度化に巨額の資金を費やし続けています」。事務総長はこう語っています。「4月に始まる運用検討会議は、核不拡散だけでなく、核軍縮にも向けた私たちの決意を新たにする機会となることでしょう」
国連活動の第3の柱である人権と法の支配に関し、事務総長は、パキスタンでの学童の「意図的で極悪非道の殺害」と、病院や学校その他民生施設に対する再三にわたる攻撃を指摘しました。
「政府も非政府主体も、ジュネーブ条約と国際人道・人権法を無視する冷酷な態度を示しています」。事務総長はこのように述べ、保護の強化と説明責任の拡充を求めました。
10年前、「保護する責任(R2P)」という原則を受け入れた国際社会は、依然として、あまりにも多くの危機の初期兆候に対処できずにいます。事務総長は、そもそもこの原則の受け入れを可能にした人間中心の視点に回帰するよう強く促すとともに、次回の報告で「R2P」のよりよい運用のあり方を探求すると述べました。
事務総長は、死刑廃止に向けた動きに対する期待とともに、移住者や難民、少数者その他の社会から隔絶された人々が直面する不寛容に対処する取り組みにも期待を表明し、2015年には「アフリカ系の人々のための国際の10年」がスタートすることを指摘しました。
「世界は長年にわたり、植民地主義と奴隷貿易の遺産、そしてアフリカ系の人々が依然として直面する差別を十分に認識してきませんでした」。事務総長はこのように語っています。「国際の10年を記念する重要な行事として、ここ国連本部では、[奴隷制の犠牲者と]大西洋横断奴隷貿易を記念する常設の記念碑の除幕式も行われます」
この1年間、相互に連関する3本柱の課題に取り組むため、国連は目的のために自らの適合性を高めなければなりません。事務総長は、平和維持や平和構築活動、人道援助活動の資金調達、事務局の刷新、サイバーセキュリティをはじめとする新たな課題への取り組みを含め、見直しや改善が行われている分野の概要も示しました。
国連は創設70周年を迎え、大きな課題に直面しているだけでなく、大きな機会にも恵まれているのです。
「予定どおりに活動が進めば、私たちは今年末までに、開発に向けた新たなビジョン、平和と安全の維持に向けた新たなアイデア、人権の新たな推進、そしてこれらをすべて達成できる、より強い国連の実現によって、さらに豊かな組織へと発展することでしょう」。事務総長はこう語っています。
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