米国での9.11同時多発テロ1周年に寄せる
コフィー・アナン国連事務総長メッセージ
プレスリリース 02/076-J 2002年09月11日
米国での同時多発テロから1年が経ちました。1年という時が経っても、あの日の恐怖、衝撃、悲しみ、そして、犠牲者の子ども、配偶者、友人、家族への深い同情は、私たちの中から消えていません。あの衝撃は、今でも私たちの心に刻み込まれています。
昨年の9月11日、深い悲しみが世界を覆いました。それは、米国の人々との連帯だけでなく、私たちに共通の損失という感覚から生じたものでした。あの日、米国に住むことを選択したというだけの理由で、自国民を失った国々は、90カ国を越えています。きょう、私たちが世界共同体として結束するのは、私たちが世界共同体として攻撃されたからにほかなりません。
しなければならないこととして、テロ攻撃の原因を究明するための機会はこれまでにも存在し、そして、今後も存在することでしょう。また、当然のこととして、テロ攻撃に対する私たちの対応を話し合う機会も、さらに存在することでしょう。そして、これも当然のこととして、あの日のグローバルな結束を維持する最善の方法を検討する機会も、さらに訪れることでしょう。
しかし、きょうは追憶、そして尊敬のための日です。それは、惨事を避けようとして命を失った人々の損失、そして、その現場に駆けつけて命を落とした人々の犠牲を思い出す日です。それは、世界中から集まり、理由もなく、そしてなす術もなく、危険と死に見舞われた人々の命を思い出す日です。そしてこれはあの日、想像不可能な恐怖を前に、ニューヨークからテヘラン、ベルリン、さらには北京まで、世界中を包み込んだ結束の精神を思い出す日なのです。
9月11日の同時多発テロ以上に、国連の精神と目的を侮辱するものはありません。平和、開発、健康、自由という、私たちが実現を目指すものすべてが、この恐怖によって損なわれました。そして、人命の尊重、正義、寛容、多元主義および民主主義という、私たちの信じるものすべてが、これによって脅かされたのです。世界は力を一つにして、これに打ち勝たなければなりません。
9月11日に命を失った方々の記憶が、万人にとってよりよく、より公正で、より平和な世界の着想を与えてくれますように。