「子どもに1ドル投資すると、社会には7ドルの見返りがある」
子ども特別総会(2002年5月8日―10日)における
コフィー・アナン国連事務総長の開会の辞
プレスリリース 02/046-J 2002年05月24日
この会議は、ただ子どもについて話し合うための集まりではありません。人類の未来を話し合うための会議です。私たちが今ここにこうして顔をそろえたのは、子どもの幸せな生活ほど、緊急性が高く、普遍的で、人々を一体化させるテーマはほかにないからです。これ以上重要な問題はないのです。
私たちは皆―国連や政府の職員も、市民社会の人々も、そして当然ながら本日この場に出席している子どもたちも―この総会が真に特別なものでなければならないことに疑いを抱いていません。少なくとも1つの点で、この総会は特別です。子ども自身がこのような場で初めて発言するのです。ここにご出席のすべての大人は、子どもたちの言葉に注意深く耳を傾けてください。子どもたちが幸せに暮らせる世界を築くには、子どもたちと力を合わせなければなりません。ですから、私はここで、世界中の子どもたちに向けて語りたいと思います。
私は皆さんに伝えたいのです。皆さんがどこに住んでいようと、
皆さんには、貧困や飢餓を経験することなく成長する権利があることを。
女の子であれ男の子であれ、質の高い教育を受ける権利があることを。
HIV/エイズを含め、感染症から保護される権利があることを。
安全な飲み水を手に入れることができる、きれいで健全な地球で成長する権利があることを。
戦争、虐待、搾取におびえることなく、安全な暮らしをする権利があることを。
こうした権利は明白です。しかしながら、残念なことに私たち大人は、その多くを皆さんに保証できないでいます。皆さんの3人に1人は、5才になる前に栄養失調に苦しんでいます。4人に1人はいかなる病気の予防接種も受けていません。ほとんど5人に1人は学校に通っていません。学校に通えない子どもたちのうち、5人に4人は5年生まで進むことができないでしょう。決して子どもが目にするべきではない暴力を目の当たりにさせられる子どもも大勢います。さらに、すべての子どもたちが環境悪化の脅威にさらされながら暮らしています。
私たち大人は、こうした数々の失敗を正していかなければなりません。そして、私たちはそれを約束します。私がここに述べた子どもの権利は、「ミレニアム宣言」の中でなされた約束の一部です。つまり、世界の指導者たちすべてが合意した約束なのです。世界の指導者たちは、2015年までに、1日1ドル未満で暮らす人々の数を半分に減らすと約束しました。同じく2015年までに、小学生の年齢に当たる男女すべての子どもたちが学校で学べるようにすると約束しました。エイズの蔓延を食い止めると約束し、戦争の防止と地球資源の保護に取り組むと約束しました。
この総会は、次世代の子どもたちに対してこうした約束がなされたことを改めて思い起こすためのものです。
つまり、2000年に生まれた子どもは、15才になったときには社会が大きく変わっていることを期待する権利があるということです。すべての子どもが、一生の間に、よりよい世界の実現を自分の目で見る権利があるということです。よりよい社会は、皆さんのような世界の子どもたちに投資することによってのみ、築くことができるのです。
そんなことは不可能だという人もいるでしょう。
けれども、過去を振り返って、わずか15年の間にどんなに多くのことが成し遂げられたか考えてみてください。
1954年生まれの子どもが命を授かったのは、まだ宇宙に衛星すら打ち上げられたことがない時代でした。ところが、その子どもが15才になったとき、人類は月に着陸しました。
1964年生まれの子どもが命を授かったのは、何千万もの人々が天然痘にかかる世界でした。ところが、その子どもが15才になったとき、天然痘は公式に撲滅が宣言されていました。
1976年生まれの子どもが命を授かったのは、南アフリカで非道なアパルトヘイト政策が過酷に行われている時代でした。ところが、その子どもが15才になったときには、本日ここにいらっしゃるネルソン・マンデラ氏が解放され、アパルトヘイト政策が終わりを告げました。それから10年を経た今日、この特別総会にマディバ(マンデラ氏の愛称)が出席し、子どもたちによりよい未来を与えるために今なお誰よりも熱心に活動していることを嬉しく思います。
1982年生まれの子どもが命を授かったのは、アンゴラやアフガニスタンなど世界各地に埋められて何千人もの子どもたちの生命を奪い重傷を負わせている地雷を制限するために、何の努力もなされていない世界でした。ところが、その子どもが15才になったとき、こうしたいまわしい兵器の使用を禁止する条約が締結されました。
これは何を意味しているのでしょうか。どうしてこのようなことが実現されたのでしょうか。そこにはどんな共通点があるのでしょうか。こうした偉業は、人々が、自ら課した目標に到達できるように頭と心を使って懸命に取り組み、協力し合ったがゆえに達成されたのです。
こうしたことはすべて、1人の人間の子ども時代という時間の中で達成されたのですから、世界のすべての国が同意した約束を私たちが同じく15年で達成するのは不可能ではないはずです。特に、私たちは、経験によって、子ども1人の育成に1ドル投資すれば社会全体で7ドルの見返りがあるということを知っているのですから。
本日ここにお集まりの大人の皆さんに申し上げます。自分たちの失敗を子どもたちに償わせるのはもうやめにしましょう。失望した子どもの目を見て恥ずかしく思ったことがない大人がここにいるでしょうか。この会場にいる子どもたちは、私たちの言葉の証人です。この子どもたち、そしてその仲間である世界中の子どもたちは、私たちが言葉を行動に移すと期待する権利があります。もう一度繰り返します。子どもたちは、私たち大人が言葉を行動に移し、子どもが幸せに暮らせる世界を築くことを期待しているのです。
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SG/SM/8228
GA/10017