2015年を締めくくる事務総長の記者会見 (ニューヨーク、2015年12月16日)
2015年12月22日
皆様、おはようございます。
まず、皆様が良いお年をお迎えになることをお祈りします。また、この1年間の皆様のご支援とご協力に感謝いたします。
国連が創設70周年を迎え、持続可能な開発と気候変動協定の前進に向けて画期的な一歩を踏み出す転換点となった1年も、その幕を下ろそうとしています。
気候変動に関するパリ協定は、混迷を深める時代に希望の兆しをもたらしました。それは、多国間主義の勝利として、国連が世界に欠かせない成果を達成できることを実証しました。
フランスのフランソワ・オランド大統領とローラン・ファビウス外相は、11月13日に発生したテロ事件にも臆することなく、感動的なリーダーシップを発揮しました。
私は、この成果を可能にした政府指導者、ビジネス界関係者、そして市民社会のリーダーの方々すべてに感謝します。
パリ協定の内容は、期待を超えるものでした。世界のリーダーたちは、私たちに最低水準の合意以上のものを達成する能力と義務があることを認識しました。そして、さらなる高みを目指しました。パリ協定は、地球にとっていかなる代案でもない「本案」であり、しかもそこには「本気の案」という意味も込められています。
私は9年前の2007年に事務総長に就任した当初から、この合意を本気で追求してきました。そして今、私は世界のリーダーたちに、約束を実行に移すよう改めて訴えます。
私たちは、2015年に成立したその他の画期的な約束も果たしていかねばなりません。
貧困に終止符を打ち、平和な社会を構築することを目指す17の目標を盛り込んだ「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、私たちにとって総合的な指針となります。
7月に採択された「アディスアベバ行動目標」は、開発資金に関する私たちの青写真です。早期に開発への投資を行うことで、将来的な危機は回避することができます。
3月に合意が成立した「仙台防災枠組2015-2030」は、レジリエンスに至る道のりを示しています。
これら3つの計画と協定は全体として、誰も置き去りにしない未来に向けた土台を作り上げたのです。
皆様、
私たちは今年、膨大な数の難民や国内避難民の流れを目の当たりしました。2016年を迎えるにあたり、世界は人間の流動性に関する新たなグローバル協定を必要としています。宗教や民族、出身国に基づき、これらの人々を悪者や除け者扱いすることは、21世紀のあるべき姿ではありません。
国連は来年の人道ニーズの充足に向け、200億ドルの拠出を要請したところですが、これは10年前の金額の5倍に相当します。ドナーはこれまで、この上なく寛大な支援を行ってきました。しかし、私たちは100億ドルを超える過去最大の資金不足に直面したまま、2016年をスタートさせることになりそうです。
2016年5月にイスタンブールで開催される「世界人道サミット」会合は、構造的な資金調達問題に取り組み、危機への準備態勢と対応を改善するための具体的なステップに合意する、極めて重要な場となります。
世界は紛争の予防と終結、そして人権侵害への取り組みに、もっと政治的なエネルギーを注ぎ込まなければなりません。これらは、より大きな混乱が生じることを最もよく示す兆候だからです。
皆様、外交を通じて紛争の解決を図る取り組みは今週、最も大きな注目を浴びています。
リビアでは、長引く危機からの脱出を図るために欠かせない合意が当事者間ででき上がりつつあります。
イエメンについては12月15日、スイスで恒久的停戦と政治的移行の再開に向けた協議が始まりました。民間人はこの紛争の矢面に立たされています。私たちは流血に終止符を打ち、その苦境を和らげるための努力を怠ってはなりません。
シリアでは、国際社会が政治的解決に向けた積極的な関与を再開しました。12月18日には「国際シリア支援グループ(ISSG)」がニューヨークで会合を開くのに続き、安全保障理事会の会合も行われます。シリアは中東、さらには全世界にとって、大きく開いた傷口です。私たちは全国的な停戦と、1月の政治的移行に関する交渉の開始を強く求めています。この取り組みの手を緩めてはなりません。
ダーイシュ、ボコ・ハラム、アル・シャバブその他のテロ集団による脅威への対策は欠かせません。私は来月、国連加盟国に対し、暴力的過激主義の予防に関する行動計画を提出します。現在の紛争のほか、残念ながら紛争対策の中にも、テロリズムや暴力的過激主義のまん延を助長しているものが多くあります。
私は、ブルンジでの暴力の激化に危機感を募らせています。この2、3日の動向には恐ろしさも感じます。同国は、地域全体を飲み込みかねない内戦の危機に瀕しています。私は事務総長特別顧問のジャマル・ベノマル氏に対し、今週末までにこの地域に赴き、アフリカ連合(AU)、地域各国、そしてもちろんブルンジ政府とも協議を行うよう要請しました。包摂的な政治対話が緊急に必要とされています。私たちは、大規模な暴力の予防に全力を尽くすとともに、仮にこれが生じた場合には、断固とした対策を講じなければなりません。
南スーダンでは、国連の平和維持活動が引き続き、18万5,000人を超える民間人に避難場所を提供し、私たちの人的保護の取り組みを大きく前進させています。しかし、これは恒久的な解決策ではなく、引き続き暴力の脅威にさらされている国内避難民もはるかに多くいます。私は当事者に対し、1月末までに暫定的機構を確立するよう、強く訴えます。
皆様、
これらはいずれも、気の遠くなるような現状です。しかし私は、スリランカやナイジェリアをはじめ、過去1年間の政治的な前進や円滑な政権移譲に心を強くしています。
中央アフリカ共和国でも移行が進んでおり、先週は憲法をめぐる国民投票が行われたほか、今月末には大統領選挙と国会選挙も行われる予定です。
私はキプロスでの交渉進展にも勇気づけられています。数十年にわたる分裂の解消は、手の届くところまで来ています。
米州では、コロンビアが大陸で最も長く続く紛争の終焉に向け、歩を進めています。
ミャンマーでは、政府と軍が安定的な政権移譲に向け、アウン・サン・スーチー氏と協力しています。社会から隔絶された民族集団が参加できる包摂的な対話のプロセスをスタートさせるためには、継続的な取り組みが必要です。国連も私も、数年にわたってこのプロセスを支援してきました。この支援をさらに続けていきます。
皆様、
2015年には、突破口と恐怖がともに生まれました。
国連は、平和活動、平和構築、私たちの将来的な役割と能力の広範にわたる評価などを通じ、組織の強化を続けています。
紆余曲折はあるものの、和平プロセスから気候変動対策交渉に至るまで、私たちはどの分野でも手を抜くことはできません。その代償があまりにも大きいからです。数百万人が、私たちの前進に向けた取り組みを頼りとしています。
気候交渉が一進一退を繰り返した数年間も、私は信念を失いませんでした。
私は国連、そして国連職員を信じ続けます。その中には、究極の犠牲を払った者もいます。
そして、パリではっきりと実証されたとおり、世界の人々が共通の利益のために団結できることも信じ続けます。
この精神を守れば、私たちは2016年を達成の年とするとともに、われら人民にとって尊厳ある暮らしを真に確立することができるのです。
ありがとうございました。
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