世界人道サミットを危機対応協力の「転換点」に (ニューヨーク、2016年2月9日)
2016年02月12日
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は2016年2月9日、今年は世界の指導者が一堂に会し、人道に対するコミットメントを新たにするとともに、危機の防止と収束、そして脆弱性の削減に向けて団結しなければならないと述べ、国連加盟国に対し、世界人道サミットが「現在、数十億人が経験している苦難に終止符を打つための具体的な措置」を講じる機会となるとしました。
事務総長は報告書「One Humanity: Shared Responsibility(人道理念は一つ、責任の共有を)」を発表するにあたり、「私たちは、紛争の中で暮らし、慢性的な窮乏状態と恒常的な恐怖に苦しむ数百万人に対し、これらの人々が期待し、かつ、当然受けるべき連帯を示さなければなりません」と語りました。報告書は、5月23-24日にトルコのイスタンブールで開催される史上初の「世界人道サミット」に向けて作成されたものです。
また事務総長は、「私たちは、こうした課題の緊急性と苦難の規模に鑑み、思いやりと決意をもって共有の責任を受け入れ、決定的な行動を起こさねばなりません」と付け加えました。
ニューヨークの国連本部で2月9日午前、加盟国に対しブリーフィングを行った潘事務総長は、この報告書が、すべてのステークホルダーが受け入れ、対応すべき5つの核となる行動責任、すなわち「人道への課題(Agenda for Humanity)」の概要を示すものであることを強調しました。
具体的には、1)紛争を予防し、これに終止符を打つための責任を担うようリーダーに強く促し、2)人道規範を堅持する責任を確認するよう各国に呼びかけ、3)誰も置き去りにせず、最も困難な状況にある人々に手を差し伸べるよう各国に訴え、4)援助の提供からその必要性の終焉へと軸足を移すことによって、人々の生活を変える責任を強調するとともに、5)特に脆弱な状況における現地の能力強化やリスク削減、効果的で包摂的な制度の構築を含め、人道に対する投資を求めています。
事務総長は「今日の複合的な課題は国境を越え、どの国も機関も独力では対応できない規模に広がっています」と強調し、次にように付け加えました。「私たちには、自分たちのグローバルな世界秩序と、国内、地域機関がこれら課題に効果的に対処できる能力に対する信頼を回復する必要があります」
潘事務総長はまた、今回のサミットが世界のリーダーにとって、仙台防災枠組、アディスアベバ行動アジェンダ、持続可能な開発のための2030アジェンダ、そして最近の気候変動に関するパリ協定をはじめ、2015年中になされた公約を実行に移す絶好の機会になるという点も強調しました。
「私たちは、紛争や慢性的貧困、自然災害と海面上昇のリスクの中で暮らす人々が、誰も置き去りにされないようにせねばなりません。私たちが掲げる目標は野心的ではあるものの、危機の緊急性と、数億人のニーズや期待を考えれば、私たちには、この『人道への課題』を実行に移す義務があるといえます」事務総長はこのように付け加えました。
同じくブリーフィングで発言したモーエンス・リュッケトフト国連総会議長は、加盟国に対し「事務総長のビジョンを支持」し、実質的な約束を果たすよう強く促しました。
「事務総長報告書の核となるのは、政治指導者その他のリーダーに、現状の後退傾向を逆転させる勇気を奮い起こすよう求める緊急の訴えとなっている点です。この後退こそが、国連が体現するあらゆるもの、すなわち、私たちが父として、母として、そして兄弟姉妹として守るべきあらゆるものを損なっているからです」リュッケトフト議長はこのように述べ、次のように付け加えました。
「それは、国際人道法、国際人権法、国際難民法という、世界で最も弱い立場に置かれた人々を保護するために、私たち全員が遵守に合意した基本的な法律と規範の再確認を求める必死の嘆願でもあるのです」
これまでの取り組みが「とても十分とは言えない」ことを指摘したリュッケトフト議長は、避難民約6,000万人と、人道援助を必要とする約1億2,500万人が依然として、緊急の対応を要する状況に直面していることも強調しました。
「イスタンブール会議は2030アジェンダへの合意以来、“誰も置き去りにしない”という原則に実質的な意味を与え、グローバルな人道危機についてさらに信頼性、公平性、持続可能性の高い対応を考案する初めての重要な機会となります」リュッケトフト議長はこのように述べています。
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