「メガスポーツ・イベント開催の価値 ~ 社会、経済、環境面における持続可能な開発手段として~」 事務総長挨拶 (ニューヨーク、2016年2月16日)
プレスリリース 16-017-J 2016年02月19日
ニューヨークの国連本部で2016年2月16日、「メガスポーツ・イベント開催の価値」をテーマにした会合が開かれました。潘基文(パン・ギムン)事務総長は、主催者であるドイツ、カタール、韓国、ロシア連邦およびチュニジアの国連常駐代表部に感謝の意を示し、以下のように述べました。
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スポーツには、人々を結びつける巨大な、そして多くの点で独特の、力があります。
ワールドカップやオリンピック、パラリンピックをはじめとする、いわゆる「メガスポーツ・イベント」は、まさに巨大な規模で団結の精神を広めることができます。
これらのイベントには、数千人のスポーツ選手と数百万人のファンが集まります。また、メディアの関心を引きつけ、全世界の人々に感動を与えます。
各国にとって、このようなイベントを開催できることは、まさに特権と言えます。
その影響はスポーツ界を越え、広大な範囲に及びます。
メガスポーツ・イベントは計画策定やビジョンを通じ、社会開発や経済成長、教育の機会、さらには環境保護を前進させることができます。
また、平和と人権を含め、国連の価値観や目的を推進するための基盤にもなります。
将来に目を向ければ、メガスポーツ・イベントには、新たに採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に貢献できる可能性と、その義務があります。
しかし、これはひとりでに実現することではありません。メガスポーツ・イベントの恩恵が必ずしも長く続いたり、持続可能となったり、広く共有されたりしないということは、数多くの経験が示しています。
だからこそ、私たちにとって、この歴史の教訓を学ぶことは非常に大切です。
メガスポーツ・イベントは、その計画段階の当初から、開発と環境の問題を優先的に考慮すべきです。私たちのねらいは、このようなイベントの恩恵を受けながら、そのカーボン・フットプリントを抑制し、労働者の権利を擁護し、透明性を確保するとともに、膨大な額の資金が動く案件には付き物の腐敗と闘うこととせねばなりません。
メガスポーツ・イベントは、現地の当局やコミュニティーと協力することにより、その計画策定をより幅広いプロジェクトや目的と結び付けるべきです。その中には、都市の再活性化や成長の促進、雇用の刺激、障害者にとってのアクセス改善などが含まれます。
また、試合や競技が終わってからも長く社会に恩恵をもたらす公平、包摂的かつアクセス可能な施設とインフラを整備することにより、永続的な財産を残すことも必要です。ごく短い間だけ利用され、脚光を浴びた後は、塵が積もるだけの施設の用地を確保するために、人々が退去を強いられることがあまりにも多いからです。
今後の土台とすべきプラスの例は数多くあります。メガスポーツ・イベントは、観光や輸送などの分野で、イノベーションに富んだ実践の開発と導入につながりました。
これまで、メガスポーツ・イベントの開催地となった多くの都市と国は、持続可能で包摂的な開発の道をたどり、地方、国、地域、そしてグローバルの各レベルで、遺産を活用する見事な取り組みを展開しています。
私はメガスポーツ・イベントのすべての開催地と候補地に対し、そのプロジェクトの各段階に、持続可能かつ包摂的な開発戦略を中心的要素として取り入れるよう促します。
私は特に、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、スペシャルオリンピックスの貴重な貢献を称賛したいと思います。
国連は、スポーツ選手やスポーツ団体とさらに密接な連携が図れることを嬉しく思います。
このような取り組みの一環として、国際オリンピック委員会と国連は、オリンピック開催期間中、戦闘員が戦闘行為の停止に合意するという「オリンピック停戦」のアイデアを復活させました。
今年のリオ・オリンピックとパラリンピックを控え、私はすべての戦争当事者に対し、オリンピック停戦を守るよう強く訴えます。
私は、今年のオリンピックとパラリンピックはもとより、その後に開催されるメガスポーツ・イベントもまた、持続可能性と連帯を促進するものとなることを心から願っています。
国連は将来の組織委員会や開催都市、政府、そして皆様全員と密接に協力し、その実現に貢献できることを楽しみにしています。
オリンピックのモットーは「より高く、より速く、より強く」です。
将来のすべてのメガスポーツ・イベントが「よりクリーンに、よりグリーンに、より持続可能に」をモットーに掲げられるよう、力を合わせていこうではありませんか。
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