事務総長声明:シリア危機解決のチャンスをつかめ(ニューヨーク、2016年3月15日)
プレスリリース 16-026-J 2016年03月17日
5年前、政治変革を求めて街頭に繰り出した数千人のシリア国民は、暴力と抑圧を受けました。私たちはこの重苦しい節目の時を迎えるにあたり、紛争の根源を思い返さねばなりません。2011年3月の希望にあふれた日々から一転して、シリアを飲み込んだ破壊は、避けられない事態ではありませんでした。
シリア当局は、実質的な対話と改革で、国民の正当な要求に応えることもできたはずです。地域的、国際的な主体も、シリアを地域的な対立と戦略地政学的な競争の舞台とするのではなく、その安定を支援するために一致団結できたはずです。
しかし現実には、25万人を超えるシリア人が命を失いました。シリア国民のほぼ半数が家を逃れ、国内、さらには国外に避難しました。世界は未曽有の人道的災害に直面しています。ダーイシュやヌスラ戦線といったテロ集団が混乱に乗じ、勢力を拡大しました。外国人戦闘員や各宗派の民兵が毎夜、シリアに潜入し、戦闘に加わっています。シリアの男性も、女性も、そして子どもたちも、国際社会から見放されたと感じています。
シリア紛争では、化学兵器や包囲、兵糧攻めが戦争の道具として使われたり、違法な拘禁や拷問、民間人に対する無差別の犯罪的な爆撃や空爆が行われたりする場面が数多く見られています。こうした犯罪の責任者を裁きにかけねばなりません。私は安全保障理事会に対し、シリア情勢を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう、改めて呼びかけます。シリアでも他の国でも、正義のない平和は持続しないからです。
シリア危機を解決できないことによるグローバルな影響は現在、嘆かわしいほど如実に表れています。こうした状況の中、シリア紛争の解決を探るための国際的、地域的な外交とコミットメントを新たにすることは欠かせません。「国際シリア支援グループ(ISSG)」が結成され、そのメンバーが当事者に対する影響力を行使し、シリア国内で包囲され、立ち入りが困難な地域への人道アクセスを改善するとともに、停戦の履行を図るという公約を行ったことで、またとないチャンスが開け、希望の光が見え始めています。
私たちはようやく、単に国際法に基づく義務を守るよう当事者に呼びかけることから、暴力を鎮め、困窮した民間人を援助するための協調的かつ具体的な行動へと歩を進めました。外交はついに、長く苦しんできたシリア人の日常生活に変化をもたらしつつあります。特筆すべきは、この2週間に暴力が収まったことにより、シリアの人々が再び街頭に繰り出し、5年前と同じように平和的なデモを行ったことです。
こうした動きは歓迎すべきことであるとはいえ、それだけでシリア紛争が解決できるわけではありません。そのためには、シリア国民の正当な希求に取り組み、全国的な停戦をさらに推し進める包括的な政治解決が欠かせません。安全保障理事会決議2254(2015)と2268(2016)は、安全保障理事会決議2218(2013)による呼びかけを土台として、この目標を追求するための政治的な道のりと日程を定めています。
私のシリア担当特使、ステファン・デ・ミストゥーラ氏は今週、シリア人主導による政治的移行の基盤として、ジュネーブ・コミュニケの全面実施を目指すシリア当事者間の交渉を招集しました。私はシリアの当事者、地域的、国際的なステークホルダー、そして安全保障理事会に対し、それぞれの責任を全うし、交渉の成功に貢献するよう訴えます。私たちがこの機会を逃せば、シリアの人々と世界にとって、考えることさえ恐ろしすぎる結末が訪れるからです。
ニューヨーク、2016年3月15日