G7サミット・アウトリーチ会合2「持続可能な開発目標(SDGs)」における 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長発言 (伊勢志摩、2016年5月27日)
プレスリリース 16/047-J 2016年05月27日
各国首脳の皆様、
ご列席の皆様、
皆様の「持続開発のための2030アジェンダ」策定におけるリーダーシップと、今年初めのアジェンダ発効を受けた17の「持続可能な開発目標」関連措置の本格的な実施に感謝いたします。
きょう、私は皆様に対し、私たちが共有する5つの優先課題への注力をお願いしたいと思います。
その1つ目は気候変動です。
20年以上にわたる交渉の末、昨年12月には「パリ協定」が成立しました。今年の4月22日には、175カ国の代表がニューヨークに参集し、協定の署名式が行われました。これほど多くの国が1日で国際協定に署名したことはありません(それまでの記録は、1982年にジャマイカで署名された海洋法条約の119カ国でした)。世界のリーダーたちは、気候変動に対処するという並々ならぬ決意を示したのです。16カ国はすでに、それぞれの国会での協定の承認または批准を済ませています。現時点では、2016年12月31日までに、全世界の温室効果ガス排出量の55%以上を占める55カ国の批准を確保することが目標となっています。私は年末までに、排出量の49%を占める42カ国が批准を予定していると理解しています。私はすべてのG7諸国と、欧州連合(EU)の加盟国のすべてのリーダーに対し、できる限り早期の批准に向け全力を尽くすよう強く訴えます。そうすれば、実施に向けた勢いが維持できるでしょう。
2つ目は人道対策です。
私はイスタンブールで開催された初の「世界人道サミット」を終え、日本にやって来ました。このサミットは、人道危機に関する私たちの集団的な考え方と行動を大きく前進させました。メルケル首相の参加に感謝いたします。
私がこのサミットを招集したのは、世界じゅうの人々の間で、人道援助の必要性が劇的に高まっているからです。15年前、この必要性に対応するための費用は、年間20億ドル程度でしたが、現在はこれが約250億ドルと、12倍に増えています。国連システムには、これだけの必要性に対応できる能力がありません。
サミットには9,000人を超える代表が出席しました。177カ国以上が代表を送り、首脳が出席した国も60カ国を超えました。私の「人道への課題」に含まれる各要素には、大きな支持が集まりました。
危機下での教育や、主要機関による援助提供の効率化など、多くの誓約もなされました。
私は、豊かな大国(G7諸国を含む)が、メルケル首相に倣い、私の「人道への課題」を支持することを頼りにしています。また、紛争予防とレジリエンス構築への投資増額にも期待しています。こうした投資は、2015年「仙台防災枠組」に沿った形で行うべきです。
3つ目は難民と移住者です。
多くの国々のリーダーは、紛争や気候変動の影響を受ける地域からの百万人単位の難民と移住者の流入への対応に苦慮しています。グローバルな手法を採用すれば、各国がこの課題にもっと効果的に対応することに役立つでしょう。
国連は9月19日、ニューヨークで移住に関するグローバル・サミットを開催します。皆様の出席をお持ちしています。9月20日には、オバマ米大統領が焦点を若干異にするサミット会合を招集する予定です。
4つ目はグローバルな保健です。
数人のリーダーと世界銀行はきょう、最近の2014年から2015年にかけてのエボラ禍をはじめ、健康危機に対する世界各国の寛大な対応について話し合いました。こうした貢献は高く評価されるものです。私たちは国連内部でも、エボラ対策への斬新な貢献として、国連初の公衆衛生ミッションという例外的な取決めを開発しています。
私はその後、ドイツ、ガーナ、ノルウェーから、エボラ禍から教訓を学び、これを応用するよう促されました。そして2015年には、ジャカヤ・キクウェテ元タンザニア大統領を議長とするハイレベル・パネルを設置しました。ハイレベル・パネルは2016年1月、27項目に上る有意義な提言を出し、その作業を完了しました。そのほとんどが実施予定となっており、現時点で実行不可能な提言はごくわずかです。その中には、現在流行中のジカ熱への対応にも応用できるものがあります。 私は、提言の実施進捗状況を監視し、その効果を検証するための取決めを立ち上げているところです。
そして5つ目が持続可能な開発目標(SDGs)です。
私は安倍総理が、政府全体で持続可能な開発目標(SDGs)を推進する拠点を自らの直属機関として設置したことを称賛します。私はすべてのリーダーが「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の当事者として、これを推進することを期待しています。また、これらリーダーに対し、政府全体でのSDGs実施を監督する小型のハイレベル機関の設置を促したいと思います。多くの政府からは、2030アジェンダを投資全体に反映させるつもりであり、そのために民間金融も活用するための誘因を策定中だという話もお聞きしています。
私はこうした動き、そして、成果に向けた皆様の個人的リーダーシップを頼りにしています。
ありがとうございました。