再任を受け、事務総長が総会で演説
プレスリリース 11-040-J 2011年06月27日
国連総会は2011年6月21日、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の再任を決定しました。潘事務総長の1期目の任期(5年)は今年の12月31日で終了し、来年1月1日より新たな任期(5年)がスタートします。以下は、総会の決定を受けて行われた潘事務総長による演説の全文(日本語訳)です。なお、英文オリジナルはこちらをご覧下さい。
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潘基文(パン・ギムン)国連事務総長による総会演説
(ニューヨーク、2011年6月21日)
~力を合わせれば、「不可能」はない~
総会議長、
安全保障理事会議長、経済社会理事会議長、信託統治理事会議長、
韓国外相、
総会副議長、
5つの地域グループ代表の方々、
国連常駐代表の方々、
各国代表の方々、
来賓の方々、
皆様、
私はきょう午後、皆様の温かい言葉を添えた決定により、言葉で言い表すことのできない、とても大きな名誉を授かりました。
私は今ここで、前任者たちが残した大きな遺産を心に留めながら、皆様から受けた信頼に身の引き締まる思いを感じつつ、私たちに共通の目的意識によって、一層大きな存在感を与えられたという気持ちを抱いています。
この荘厳な儀式には、もう一つの特別な意義があります。
私は先程、国連憲章の上に手を置いて、就任の宣誓をしました。それは複製の憲章ではなく、サンフランシスコで署名された憲章の原本でした。
国連創設の父たちがこの文書をどれだけ大事にしていたかは、憲章がパラシュートにくくり付けられ、ワシントンに空輸されたという事実からもわかります。憲章に同行した哀れな外交官は、こうした配慮を受けられず、運を天に任さざるをえなかったのですから。
私たちは、これまで憲章を大切に保管し、そしてきょう、これを快くお貸しいただいた米国国立公文書館に感謝いたします。
各国代表の方々、
皆様、
国連憲章は、国連という私たちの偉大な組織を突き動かす精神といえます。
65年間にわたり、この偉大な組織は「われら人民」という、人間の希望の光を灯し続けてきました。
それは第二次世界大戦からベルリンの壁の崩壊、さらにはアパルトヘイトの終焉を経た、長い年月でした。
私たちは飢えた人々に食料を提供し、病気や災難に苦しむ人々に安らぎを届け、戦争に苦しむ人々に平和をもたらしてきました。
人間の前進のために全力を尽くす偉大な組織、それが国連なのです。
各国代表の皆様、
4年半前、私たちは「新しい多国間主義」を目指し、ともに作業に取りかかりました。新しい集団行動の精神を求めたのです。
世界の人々が国連にますます大きな期待をかけていることは、私たちの日頃の活動でも実感できました。
私たちが統合と相互の結びつきの時代、つまり、すべての課題を単独で解決できる国などなく、それぞれの国々が解決に貢献すべき新時代に生きていることは、当時からわかっていました。そして今、その認識はさらに高まっています。
これこそ現代社会の現実です。私たちはこれと苦闘するか、これをリードしていくかのどちらかです。
国連の役割は、リードしていくことです。きょう、ここにいる私たちの一人ひとりに重い責任があります。国連がこれまでと違う形で、さらにその重要性を高めている理由もここにあります。
私たちがリードしていくためには、成果を残さなければなりません。単に数字上の成果だけでは不十分です。人々が見たり、触れたりできる成果、つまり、生活を変える、世界を変える成果が必要なのです。
議長、
各国代表の方々、
皆様、
私たちは善意と相互信頼の中で、将来のためのしっかりとした基盤をともに作り上げました。
私たちが一緒に作業を始めた当時、気候変動は目に見えない問題でした。そして今、私たちはこの問題をグローバルな検討課題として、しっかりと位置づけました。
当初、核軍縮への取り組みは長い間、凍結された状態にありました。現在は、これについても進展が見られています。
私たちはグローバルな保健、持続可能な開発、そして教育の問題も前進させました。マラリアによる死者をなくすことができるめども立っています。そして、かつての天然痘のように、ポリオの根絶ももう一息のところまで来ています。
私たちは貧しく、弱い人々を数世代に一度の経済的大混乱から守りました。
私たちは自然災害で壊滅的な被害を受けたハイチ、パキスタン、そしてミャンマーにも駆けつけ、人命の救助にあたりました。
スーダン、コンゴ民主共和国、ソマリア、さらにはアフガニスタン、イラク、中東など、国連が前線で人々を守り、平和の構築を助けることも、これまでになく多くなりました。
コートジボワールや北アフリカなどでは、毅然とした態度で民主主義、正義、そして人権を擁護しました。
私たちは「保護の責任」に新たな側面を加えました。
そして、世界各地で女性のエンパワーメントを図るため、UN Women (ユーエヌ・ウィメン)を創設しました。国連自体もその対象となっています。
とはいえ、今後どれだけ長い道のりが残されているかも、私たちは決して忘れていません。私たちは一緒に取りかかった重要な作業を、これからも続けなければならないのです。
各国代表の方々、
皆様、
私たちは未来に目を向けながら、断固とした協調的行動が欠かせないことも認識しています。
経済が低迷する中、私たちは資源を薄く広く使うこと、つまり、より少ないものをよりよく使うことを余儀なくされています。「一丸となって取り組む」能力を高めなければなりません。
私たちは女性と子どもの健康、グリーン成長、より公平な社会・経済開発など、世界的な諸課題の点を線でつなげ、あるグローバル課題の解決をすべての課題の解決につなげられるよう、さらに努力を重ねなければならないのです。
今後の時間枠は定まっています。例えば、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限は2015年です。来年にはリオ+20会議が開かれます。さらに今年9月には、原子力の安全に関するハイレベル会合が、来年にはソウルで核セキュリティーサミットが予定されています。
そのどれを見ても、パートナーシップこそが私たちの究極的な力です。
私たちが遺産と呼べるものを残せるとすれば、それは連携という形で、つまり世界の指導者たちが共通の目標をもってリードしていくという姿として記されることでしょう。
私はこれまでと同様、皆様のご支援と一層のパートナーシップに期待しています。皆様は私の再任をはっきりと支持することで、私に時間をくださいました。それは、私たちが一緒に取りかかった重要な作業を続けていくための時間に他なりません。
今後数カ月間、私は皆様からご意見やアイデアを募っていく予定です。そして、こうした議論を土台にして、来る9月の総会では、より幅広く長期的なビジョンを提示したいと思います。
かつての事務総長ダグ・ハマーショルドは「『平穏無事』を尊ぶがあまり、自分の経験や信念を曲げることなかれ」と語っています。私もこの偉大な大先輩が残した教訓を、しっかりと心に留めています。
国連の事務総長をこれまで務めてきたことは、大きな名誉です。再びその役割を担うことになった私にとって、その名誉はさらに大きいものとなりました。
皆様からの支援と激励に感謝しつつ、そして皆様からの信頼に敬意を払いつつ、私は皆様の支持に応えるべく、全力を尽くすことを誓います。そして誇りと謙虚さとをもって、皆様からの再任をお受けいたします。
私は事務総長として、加盟国の間で、国連システムの内部で、そして国連と多彩な国際パートナーとの間で、調和と架け橋を築く役割を果たしていきます。
偉大な哲学者、老子は次のような言葉を残しています。
「天の道は利して害さず。聖人の道は為して争わず」
この不朽の知恵を今の私たちの活動に生かしていこうではありませんか。そして、様々な意見が出る中で、行動の統一性を見出していきましょう。
私は皆様の信頼に敬意を表し、神聖なる国連憲章の基本原則を堅持するため、全身全霊を傾けていくことを誓います。
国連という崇高な組織が、全世界の「われら人民」によりよく奉仕できるよう、ともに全力を尽くしていこうではありませんか。
一緒なら、どんな課題でも克服できるはずです。力を合わせれば「不可能」などないのです。
ありがとうございました。
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