ユースに関するハイレベル会合、事務総長演説
プレスリリース 11-049-J 2011年07月29日
ユース(青少年)に関する国連総会ハイレベル会合での
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長演説
(ニューヨーク国連本部、2011年7月25日)
国連総会議長、各国首脳の方々、閣僚の方々、アレック・ウェックさん、ロムロ・ダンタスさん、
各国大使の方々、各国代表の方々、皆様、
まず、7月22日にノルウェーで起きたテロ事件で私が受けたショックについて、お伝えしたいと思います。
私はこの暴力行為を最も強い言葉で非難します。
私は特に、犯人が国の将来を担おうとする若者たちをねらい撃ちしたことに悲しみを覚えています。
この残虐行為はまさに、本ハイレベル会合のテーマである「対話と相互理解」と対極にあるといえます。
私は23日、ストルテンベルグ首相に電話をし、首相が国民に対して寛容、尊重、そして国際協力への注力というノルウェーの価値観を強調しながら、信念ある励ましのメッセージを発したことに感銘を受けた旨お伝えしました。
私は遺族の方々とノルウェー政府に対し、哀悼の意を表します。
各国代表の方々、皆様、
きょうのイベントに話を移しましょう。
私はきょう、皆様とともに「国際ユース年」を締めくくれることを嬉しく思います。
出席されている多くの各国首脳の皆様にも感謝いたします。
そして特に、きょうこの場に駆けつけた大勢の若者の皆さんを心から歓迎します。
皆さんの活力は常に私を奮い立たせてくれます。また、皆様のスタイルのセンスにも学ぶところが大きいです。
ウェックさん、あなたはそのスタイルを象徴する存在です。
しかしそれ以上に、また一つ生まれるかもしれなかった悲劇が食い止められたという希望を象徴する存在でもあります。
私は今月、ウェックさんの生まれ故郷であり、国連の最も新しい加盟国でもある南スーダンの独立記念式典に出席するという、大きな喜びに恵まれました。
この193番目の国連加盟国が、その望みどおりに平和と繁栄を実現できるよう、それぞれのやり方で、ともに努力していきましょう。
南スーダンには、国際社会からの全面的な支援が必要です。そして、この国の若者には、中心的な役割を担う能力と義務があります。
ダンタスさん、
私は過去2年間、2度にわたってダンタスさんの故国ブラジルを訪問しました。しかし残念ながら、生まれ故郷のサンパウロを訪問することはできませんでした。
私はリオデジャネイロのバビロニア・スラムに暮らす若者に会い、他のスラム出身の若者も交えて話をしました。
ダンタスさんのように暴力と薬物を逃れて教育を受け、仕事を見つけられた若者たちばかりではありませんでした。
私は彼らに会い、今日の世界に生きる10億人以上の若者たちに想いを馳せました。
その大多数は開発途上国に暮らしています。
その中には、よい教育を受け、人間らしい仕事や実りある人生を期待できる若者もいます。
しかし、教育も自由も、当然の機会も認められていない若者があまりにも多くいます。
若者の失業率は成人の3~6倍に上り、しかも非正規で低賃金、不安定な雇用が常態化しています。
特に女性、障害者、そして先住民の若者に顕著です。
年長者や政府に対して「自分たちが欲しいのはこんな世界ではない」と明言する若者たちも徐々に増えています。
このような確信を持つに至ったことは、この一年間が若者にとって極めて重大な年となったことの一つの成果といえるでしょう。
「国際ユース年」の総会決議の提案国でもあったチュニジアでは、若者たちが中心となって変革を求める動きを推し進め、これが北アフリカや中東全体に波及しました。
昨年12月に焼身自殺したチュニジア人の露天商人、モハメッド・ブアジジさんについては、皆さんもご存知でしょう。
彼は27歳の若さで、尊厳のないぎりぎりの生活に疲れ果て、不満を募らせていたのです。
彼は自分自身にも、そして同胞にも、将来などないことを悟り、自らを犠牲にしました。
ブアジジさんは悲惨な死を遂げましたが、彼が灯した炎は、まずチュニジア、そしてエジプトという2つの国々で、支配者を政権から退けました。
それ以降、この炎ははるか遠くまで運ばれています。
フェイスブック世代は、私たちの世界を変えるという決意の広がりだけでなく、これを実際に引き起こせる能力も示しています。
こうした若者は、その活力と勇気を持ち寄り、私たちが直面する最も困難な課題のいくつかを克服しようとしているのです。
若者たちは性別や人種、性的志向による差別に苦しむ人々の権利を守るために立ち上がっています。
また、同じ若者に語りかけ、HIVやエイズのまん延を食い止めようとするなど、タブー視されてきた問題に立ち向かう若者もいます。
さらに、環境に優しい開発モデルの採用を迫る運動を先頭に立って進める姿も見られます。
共通の目標を達成するために、宗教的、文化的な違いを乗り越えられること、また、そうしなければならないことを、年長者よりもよく理解している若者が多くいます。
国連総会に集う各国代表の皆様、私たちの仕事は、若者が自分たちの望む世界-すなわち、国連憲章に謳われた対話と相互理解に基づく世界-を受け継げるよう、若者たちのために、そして若者たちとともに努力することです。
国際社会は、若い男女が得られる機会の幅を広げ、尊厳とディーセント・ワークという当然の要求を満たすよう努めなければなりません。
グローバル経済の危機と、多くの国々で導入されている緊縮措置の結果、こうした機会は縮小しています。
機会を失った若者は、犯罪や薬物、危険な性行為に走りやすくなり、社会の最底辺への道を転げ落ちていくことになります。
若者たちへの投資を怠ることは、何の節約にもなりません。
逆に、若者に投資すれば、すべての人々に多大な配当が支払われることになるでしょう。
国連は若者への投資に大きく貢献しています。
現代の若者に影響する問題に関する知識や実践も蓄積しています。
また、私たちの交渉や意思決定のプロセスに若者を関与させようとする取り組みも進めています。
それでも、十分なことができているとは到底思えません。
総会メンバーの皆様、頭越しに若者の代表に語りかける非礼をお許しください。
皆さんのために、私たちは十分なことをしているでしょうか。
どうぞ答えてください。
私たちは十分なことをしているでしょうか。
もっとできることはあるでしょうか。
皆様、
私たちは若者のために、もっと多くのことができ、また、そうしなければならないと思います。彼らは明日のリーダーです。皆様も、そして私も、今日のリーダーであるかもしれません。しかし将来、ここに立ち、世界をリードしていくのは彼らなのです。
国連は来年6月、国連史上でも最も重要な会議の一つをリオデジャネイロで開催します。
この「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」は、私たち全体の未来を決定づける一つのきっかけとなるものです。
私にとって、その優先度が高い理由もそこにあります。
そして私は、この会議が全ての加盟国の首脳にとっても、最優先事項となるものと期待しています。
私は気候変動を現代の決定的な課題と位置づけました。まさしく、私たちはさらに歩を進めなければなりません。
すべての人々にとっての持続可能な開発を、現代の決定的な課題と位置づけねばならないのです。なぜなら、こうした幅広い枠組みがなければ、気候変動や一般市民のニーズに取り組むことなどできないからです。
若者たちには、リオ+20のプロセスに生き生きとした新しい考えや斬新な視点、活力を吹き込むうえで、中心的な役割を担う能力と義務があります。
私たち全員が、若者たちを関与させ、その発言権を確保するよう努めるべきです。
国連のユース代表プログラム(Youth Delegates Programme)を活用するのも一案でしょう。
私は、きょう出席されているプログラム代表の方々を歓迎いたします。
各国政府が国連の会合に派遣する代表団に若者を含めれば、若者が交渉の機微に関する理解を深めるのに役立つだけでなく、自らが若者のニーズや意見に関する知見を手に入れることもできます。
リーダーの役割と責任は、若者を含む国民全体の正当な要請に耳を傾け、これに応じていくことにあります。
ユース代表プログラムは若者にとって、国際舞台で自分たちの主張を有意義な形で展開できる重要な機会です。
よって、私は国連の全ての加盟国に対し、この重要なプログラムへの参加を再検討するよう働きかけるとともに、若者、国連諸機関、政府をはじめとする全ての当事者に、それぞれの若者関連プログラムをこれとどのように連携できるか検証するようお願いしたいと思います。
各国代表の方々、
皆様、
「国際ユース年」は幕を閉じつつありますが、私たちの若者に対する義務が消えることはありません。
それはすなわち、対話と相互理解の文化を促進するという義務に他なりません。
それはまた、気候変動や核軍縮、女性と子どもの健康、民主主義の強化、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成、地球を守りつつ、すべての人々に恩恵をもたらす持続可能な開発の確保など、現代の最も差し迫った課題に取り組むことも意味します。
さらに、グローバルな連帯を強めるという意味もあります。
ソマリアの一部で生じている飢餓は、私たちの連帯を試す最近の一例にすぎません。
私たちは、絶えず変化する不安定な世界に暮らしています。
共通の目的を目指して協力しない限り、私たちの課題を克服することはできません。
私たちはそのためにも、若者を味方につけ、最前線に据える必要があります。
若者には、自分たちの未来と、私たちが大切にしている共通の理想を切り開いていく意志と能力が備わっています。
この活力、創造力、そして理想主義をすべての人々、特に若者自身の利益となるよう、受け入れていこうではありませんか。
* *** *