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世界環境デー(6月5日)に寄せる潘基文国連事務総長メッセージ

プレスリリース 08-035-J 2008年06月04日

中毒は恐るべきものです。それは私たちをむしばみ、支配し、重大な事実から目を背けさせ、そして私たちの行動の結末も覆い隠してしまいます。世界は今まさに、危険な炭素中毒にかかっているかのようです。

石炭と石油は、先進諸国の工業化への道を開きました。そして今、急速な発展を遂げつつある国々は、同じ道をたどることで、先進国の生活水準に追いつこうとしています。その一方で、後発開発途上国の貧困層は木炭など、より持続不可能なエネルギー資源しか利用できない状況が続いています。

私たちが炭素ベースのエネルギーに依存を続けてきたことで、大気中には大量の温室効果ガスが蓄積されてしまいました。昨年、ノーベル平和賞を受けた気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化を疑問視する意見を葬り去りました。気候変動が現実に起きていることも、その原因が私たちの排出する二酸化炭素その他の温室効果ガスにあることも、もはや周知の事実なのです。

私たちが燃やす炭素は、化石燃料だけではありません。熱帯地方では木材や紙、さらには牧草地や耕地を作るために、貴重な森林が伐採されています。バイオ燃料の需要増を受け、プランテーションの造成を目的に樹木が伐採されることも増えてきました。こうした炭素中毒症状の悪化の影響は、大量の二酸化炭素排出にとどまりません。大気中の炭素の貴重な吸収源を破壊することで、気候変動をさらに助長しているからです。

地球温暖化は環境、経済、政治の各側面で多大な影響を及ぼします。山から海まで、そして北極、南極から熱帯地方に至るまで、生態系は急速な変化にさらされています。低地にある都市では洪水が生じ、肥沃な土地は砂漠化し、気候パターンはますます予想しにくくなっています。

そのツケはあらゆる人々に及びます。異常気象による災害や主食の価格高騰は、貧しい人々を直撃します。しかし、最も豊かな国々も、景気の後退や資源の減少をめぐって対立するであろう世界に直面せざるを得ません。気候変動を緩和し、貧困を根絶し、経済と政治の安定を図っていくための道はただ一つ ― 炭素中毒と決別することです。それはまさに、2008年「世界環境デー」のテーマでもあります。「悪癖を絶ち、低炭素経済の実現を(Kick the Habit: Towards a Low Carbon Economy)」というテーマは、私たちの炭素中毒にどれほど害があるかを認識し、今後進むべき道を示すものといえます。

危機が起きてはじめて現実に気づくというのは、よくあることです。気候変動の危機が迫る中で、企業も政府も、気候変動対策が地球の価値よりも高くつくどころか、実際に資金を節約し、経済を活性化できることに気づきはじめています。気候変動のコストは測り知れませんが、その対策にかかる費用は、誰もが考えていたよりも安く済む可能性があります。対策費用を全世界のGDPの1%足らずと見る向きさえあります。世界的な闘いを繰り広げるコストとしては、極めて低いといえましょう。

しかも幸いなことに、炭素ベースの燃料をよりクリーンかつ効率的に消費したり、太陽や風力、潮力といった再生可能エネルギーを活用したりするための技術は、すでに存在しているか、開発の段階にあります。特に民間企業は、これを大きなビジネス・チャンスととらえ、その実現に向けた競争を繰り広げています。

世界各地で、国や市町村、諸団体や企業が環境配慮型のオプションを再び視野に入れています。私もこれに倣い、ニューヨークの国連本部改修計画に厳しい環境ガイドラインを盛り込むよう指示しました。国連のあらゆる計画、基金および専門機関の最高責任者に対しては、カーボン・ニュートラルの実現に向け、早急に措置を講じるよう要請しています。

国連環境計画(UNEP)は今年に入り、こうした気運をさらに高めるため、気候ニュートラル・ネットワーク(CN Net)を発足させました。設立メンバーには国や市町村のほか、企業も含まれています。私は、これら先駆者による運動が今後数十年間にわたり、環境、経済、そして政治に関する議論や政策決定にますます大きな影響力を及ぼしていくものと信じています。

私たちすべてに問題解決の責任があるというのが、2008年「世界環境デー」のメッセージです。個人であれ、団体であれ、企業であれ、政府であれ、皆様はそれぞれ、いろいろなやり方で二酸化炭素の排出量を減らすことができます。私たち全員が、このメッセージを肝に銘じなければならないのです。