国際人種差別撤廃デー(3月21日)記念行事におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(ニューヨーク、2018年3月20日)
プレスリリース 18-018-J 2018年03月28日
「国際人種差別撤廃デー」は、シャープビルの虐殺を記念するために設けられました。南アフリカでアパルトヘイトに反対する平和的な抗議行動に参加していた69人が殺害されるという、恐ろしい事件です。
アパルトヘイト体制は、制度化された人種差別を基盤としていました。
それは最終的に、そしてありがたいことに、ネルソン・マンデラ氏の釈放と大統領就任によって、過去の出来事となりました。今年は氏の生誕100周年に当たります。
シャープビルの記憶は、この毎年恒例の国連行事の中で生き続けています。私たちはこの日、あらゆる形態の人種主義、排外主義、不寛容をはっきりと拒絶することを再確認します。
しかし悲しいことに、こうした傾向は世界中の国やコミュニティーに今でも残っています。
ミャンマーのイスラム教徒ロヒンギャに対する言語道断の扱いは、その明白かつ悲劇的な事例です。
今こそ、すべての国とすべての人々が、あらゆる人間が生まれ持った尊厳と平等な不可侵の権利を認識する「世界人権宣言」の文言を守るべき時です。
今年は、この画期的な文書の採択70周年にも当たります。
世界人権宣言の採択以来、私たちは大きな前進を遂げてきました。
全世界の人々は、より大きな自由と平等を手にしています。
深刻な経済的困窮と搾取の状態は改善されています。
女性の権利は、子どもの権利や人種・宗教差別の被害者、先住民、障害者の権利とともに前進しています。
そして、恐ろしい人権侵害の実行犯は、国際刑事法廷によって訴追されています。
しかし、世界人権宣言の文言が、現実にそのまま守られていないことも明らかです。
実際のところ、世界中の人々が依然として、その人権を制限されたり、さらには全面的に否定されたりしています。
ジェンダーの不平等は今でも喫緊の課題であり、女性や女児は日々語られることなく、不安や暴力、権利の侵害に直面しています。
私たちは反ユダヤ主義とイスラム教徒に対する憎悪を含め、排外主義や人種主義、不寛容の気がかりな高揚を目にしています。
極右政党とネオナチ的視点の復活が見られます。
難民と移民は、受入国に利益をもたらすことが証明されているにもかかわらず、その権利を否定され、自分たちが加わろうとしている社会に対する脅威として、不当かつ誤った非難を受けています。
私たちの世界を破滅へと導く差別的な意識や行動、慣行に終止符を打つためには、まだ長い道のりが残っています。
だからこそ、今年の国際デーを機に、すべての国とすべてのコミュニティーで、寛容や包摂、多様性の尊重をどうすればもっと促進できるのか、全員で考えてみようではありませんか。
憎悪のメッセージ、すなわち「仲間」と「敵」を分ける考え方や、単なる容姿や信仰の場所、愛情の対象を理由に、一部の人を受け入れ、他の人々を拒絶、排除できるのだという間違った意識をなくすことに取り組もうではありませんか。
そして、人種主義的な思考は差別、奴隷制、ジェノサイドという、恐ろしい結末をもたらすのだということを心に留めようではありませんか。
私たちは、人種的優越性という有毒なビジョンをまき散らすリーダーに常に立ち向かわねばなりません。オブラートに包まれた言い方で移民や外国人を巧妙に中傷する時は尚更そうです。
私たちは、こうした不寛容と対立を煽る勢力から若者を守らなければなりません。
過激派のイデオロギーが私たちの社会で常態化、正当化されることを許すわけにはいかないのです。
その答えは、寛容と包摂、多様性の尊重を説き、実践することにあります。
これを達成するためには、議論を活発化させて寛大さを広げ、異なる意見や経験、観点を交換することが必要です。
また、リーダーシップ、すなわちネルソン・マンデラが示した称賛に値するリーダーシップも必要です。
それは、あらゆる形態の不寛容、人種主義、差別に対処できるだけの勇気と信念を兼ね備えたリーダーシップに他なりません。
それこそが、この国連という組織の体現する理想なのです。
ありがとうございました。
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