アントニオ・グテーレス国連事務総長 軍縮アジェンダ発表に際するジュネーブ大学における演説 (ジュネーブ、2018年5月24日)
プレスリリース 18-039-J 2018年06月22日
学生の皆さん、
学長、ならびに教職員の方々、
スイス国家評議会議長、
来賓の方々、
皆様、
このような温かい歓迎を受け、優しいお言葉をいただき、心から感謝いたします。ここジュネーブに戻って来られたことは、私にとって特段の喜びです。
ここで皆様とともに、地球規模の重大な不安要因、すなわち、あらゆる種類の武器がもたらす脅威という問題について議論できることは光栄です。
私は平和と外交、そして人道援助活動の世界の中心地であり、多くの紛争を予防、解決してきた平和構築機関の本拠地が集まるここジュネーブで私の軍縮アジェンダを発表したいと考えていました。
私たちにその機会を提供していただいたジュネーブ大学の善意に感謝いたします。
ここ数週間、あるいは数カ月の間、イランとシリア、朝鮮半島との関連で、軍備管理の問題が毎日ニュースになっています。
こうした最近の動向について、少しお話ししたいと思います。
私は、シンガポールで予定されていた米国大統領と朝鮮民主主義人民共和国の指導者の会談が中止となったことを、深く憂慮しています。そして、この両者に対し、対話を続け、朝鮮半島の平和的かつ検証可能な非核化に向けた道を模索するための対話を続けるよう、強く訴えたいと思います。
私はまた、欧州連合(EU)をはじめ、イランと協力して包括的共同作業計画(JCPOA)の維持をはかるあらゆる動きを歓迎します。
国家間のこのような合意は、地球規模の平和と安全保障に不可欠です。
しかし、今日、私が発表する軍縮アジェンダは、核兵器や大量破壊兵器の範囲にとどまるものではありません。
軍縮はあらゆる国、また、手榴弾から水素爆弾に至るまで、すべての武器に関わる問題です。
これらの兵器は私たち皆を危険に晒しており、各国の指導者はこの危険性を最小限に抑える責任があります。
各国が他の国の安全保障を顧みず、自らの安全保障だけを追求すれば、すべての国を脅かす地球規模の安全保障上の不安を生み出してしまうという矛盾がうまれます。
軍縮は、軍備管理、不拡散、禁止、制限、信頼醸成、そして必要に応じて廃絶を含め、私たちの世界と未来を守るために欠かせない手段です。
皆様、学生の皆さん、
私たちは危険な時代を生きています。
冷戦時代のような緊張関係が復活しており、しかもそれを取り巻く世界は以前よりも複雑です。
ジュネーブの学生である皆さんの大半は、冷戦の時代にはまだ生まれていなかったでしょうが、冷戦時代は二つの超大国の勢力争いを全世界が固唾を飲んで見守っていました。ギリギリで回避された事態を含め、事故や誤った警報は数多くあったものの、私たちは幸いにも、核戦争を回避することができました。
今、世界は多極化に向けて進んでいます。国際関係はより複雑で、予測できなくなっています。交流と対話のメカニズムは、かつて緊張を緩和し、偶発的な事件が大規模な紛争に発展しないようにすることに寄与してきました。しかし今日、これらのメカニズムはうまく機能していないように見えます。
同時に、戦争の性格自体も変わりました。
今日の紛争はより頻繁で長期化し、一般市民への被害も大きくなっています。内戦は地域的、世界的な利害関係と結び付いています。紛争当事者は、場合によっては、暴力的過激派戦闘員やテロリスト、民兵組織、あるいは普通の犯罪者集団であることもあります。しかも、こうしたグループは銃だけでなく、ドローンや弾道ミサイルを含む大量の武器を所持し、常にその増強を図っています。
全世界、特に最も危険な地域で、軍事費が増大し、軍備競争が加速しています。
昨年の軍事支出は、兵器購入額を含めて1兆7,000億ドルを超え、ベルリンの壁崩壊後の最高となりました。この額は、全世界の人道援助に必要な金額の約80倍にも当たります。
化学兵器も再び使用されています。国際社会は分裂し、効果的な措置を講じることができていません。
戦場での使用を念頭に製造された強力な破壊力を持つ爆弾が、今では一般市民の居住区で使われています。
また、既存の法律や条約の枠組みを越えかねない、人工知能や自律型システムを用いた新型兵器も生まれてきています。
その一方で、貧困に終止符を打ち、健康と教育を促進し、気候変動に対処し、地球を保護するための取り組みに必要な支出がされていません。
私の軍縮アジェンダには、このような背景があります。
学生の皆さん、皆様、
私のアジェンダには優先課題が3つあります。それは人類を守るための軍縮、人命を救うための軍縮、そして未来世代のための軍縮です。
第1に、人類を守るための軍縮は、核兵器、化学兵器、生物兵器という大量破壊兵器の削減と廃絶をねらいとしています。
核兵器の完全な廃絶は、国連のDNAと言えます。事実、1946年に採択されたまさに最初の総会決議は、この問題を扱っています。
そして、今日においても、核兵器の完全な廃絶は私たちの優先課題であり、私もその実現に向けた決意を新たにしています。しかし、この目標の達成に向けた努力は、深刻な危機的状況に直面しています。
核兵器廃絶に関して、私たちの世界は後退しています。
冷戦中を通じて、またその直後においては、困難な交渉ではあったものの、軍備を削減し、核実験を違法化し、特定の範疇のミサイルをすべて廃棄する合意に達することが可能でした。
超大国間にコミュニケーションのチャンネルがあったことで透明性が高まり、信頼が醸成され、リスクは削減されていました。
ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの旧ソ連3カ国は、ソ連崩壊後保有していた核兵器を放棄しロシアに送還しました。南アフリカは核兵器を自ら一方的に廃棄しました。他の国も同様に前向きな措置を取りました。
当時の世界のリーダーは、軍備管理の用語と論理を巧みに操りました。それが安全保障と不可分であることを理解していました。
しかし今、その時代の軍備管理・軍縮の合意がかつてない脅威にさらされています。
現在、核兵器国間の戦略的対話は限られています。
ロシアと米国の間で、さらなる核兵器削減に向けた二国間交渉はまったく行われていません。
各国政府は、旧型の兵器システムの最新化をはかり、新たなシステムを開発し、量ではなく質に基づく「新たな軍拡競争」呼ばれる競争に突入しています。
世界には依然として、約1万5,000発の核爆弾が備蓄されています。そのうち数百発は数分のうちに発射できる体制にあります。私たちは、たったひとつの機械的、電子的、人為的エラーが、一つの都市全体を地上から跡形もなく消し去る大惨事を引き起こすリスクに直面しているのです。
核兵器不拡散条約(NPT)は国際の平和と安全保障の維持に中心的な役割を果たしていると広く考えられています。
50年近く前に成立したこの画期的な条約は、核兵器を保有する国の数を10カ国未満に抑えることに成功しました。その保証措置体制は、民生用原子力プログラムの平和的利用を保証しています。
しかし、それだけではなく、核兵器不拡散条約は、核軍縮を促す環境の維持に欠かせない存在です。
核不拡散と核軍縮は表裏一体の関係にあります。このふたつが相まって、核兵器国と非核兵器国の間の相互の法的取決めを構成しています。
どちらかが破棄されれば、もう一方の破棄につながるということから、現在、この条約の将来が懸念されています。
私は非締約国を含むすべての国に対し、NPTに基づく不拡散と核軍縮の義務と確約を遵守するよう訴えます。
核兵器国、非核兵器国のいかんにかかわらず、すべての国が協力して、両者を分断する亀裂を埋めなければなりません。
この違いを、人道上の配慮と、安全保障上の配慮の選択と捉える人もいます。しかし、これは誤った二分法です。
人間の安全保障、国家の安全保障、そして世界の安全保障は切り離すことができません。人々がその生命に不安を感じていれば、そのコミュニティーや社会、そして国家のリスクも高まります。人々が安全であれば、その国も世界も安全になります。
昨年採択され、2017年ノーベル平和賞授賞の主な理由にもなった核兵器禁止条約は、核兵器が提起する脅威に恒久的な終止符を打つことに、国際的な強い支持があることを実証しました。
それはまた、核軍縮交渉の行き詰まりを打開するための呼びかけでもありました。
学生の皆さん、皆様、
核兵器保有国には、第一義的な責任があります。これらの国は、核兵器の使用を防止し、核戦争の危険を低減し、不拡散と核軍縮に関する努力をリードしなければなりません。
そしてそれは、具体的な基準とタイムラインを定め、自国の義務を果たすことから始めなければなりません。こうした義務の中には、もう数十年も履行が遅れているものもあります。
私はロシア連邦と米国に対し、中距離核戦力全廃条約をめぐる争議を解決し、3年後に有効期限が満了する新START条約を延長するとともに、核兵器の保有量削減に向けて新たな措置を講じるよう訴えます。
両国は、他の核兵器保有国とともに、多くの重要な分野で具体的な行動を取ることにより、核兵器がもたらす危険の削減に向けた努力を至急、復活させるべきです。
ここで、本日発表された私の軍縮アジェンダの本文から引用させていただきます。
すなわち「これらの具体的な行動分野としては、あらゆる核兵器の総保有量の削減、核兵器の不使用の確保、軍事的な戦略および政策における核兵器の役割と重要性の減少、核兵器システムの即応能力の低下、高度な新型核兵器の開発の抑制、核兵器プログラムの透明性の向上、信用と相互信頼醸成措置が含まれます。」ということです。
私はこうした努力を全力で支援していきます。
過去72年間続いた核兵器を使用しないという慣行が、今後も恒久的に継続され不可侵の規範として普遍的に理解されるよう、すべての政府がその政策と行動を通じて努めるべきです。
同じことは、核実験禁止についても当てはまります。包括的核実験禁止条約(CTBT)は、新型兵器の開発を抑制することにより、軍拡競争に歯止めをかけるものです。
朝鮮民主主義人民共和国を除くすべての国の政府は、過去20年間にわたって核実験のモラトリアムを守っています。CTBTが署名に開かれた1996年以来、国際社会はこの規範のあらゆる違反に対応してきており、安全保障理事会も2016年、CTBTを支持する決議を採択しています。
私はCTBTに加入していない国々に対し、滞りなく加入するよう訴えます。
私たちは、核兵器に関する新たな理解と合意を形成していく一方、これまでに達成した貴重な成果を維持する必要があります。
成功への唯一の道は対話と交渉であり、これを私たちの努力の指針としなければなりません。
私は、リスク削減と信頼醸成を図る新たなアプローチや措置を模索するために、非公式な対話の場の設置を含め、加盟国に直接働きかけて、政府間の対話を促進する所存です。
私たちは専門家との技術的なレベルの作業をさらに推進し、核兵器のない世界に向けた道を切り開くための実際的な措置を講じていきます。
これらの措置の中には、非核兵器地帯の強化から、兵器用核物質の生産中止、戦略的核兵器運搬システムの制限、核軍縮を検証するためのアプローチへの合意に至るまで、部分的軍縮措置が含まれるべきです。
核兵器のない世界という普遍的な目標の達成に向けて、これを緊急な課題として捉えて、私たちみんなで力を合わせましょう。
学生の皆さん、皆様、
私たちは他の大量破壊兵器、特に化学兵器の使用を終結、防止するための対策を施していきます。
2014年以来、化学兵器禁止機関の事実調査団はシリアで化学兵器使用の疑いのある83件の事件を調査しました。この調査団は、これまで14件において化学兵器が使用されたか、その可能性が濃厚であると報告しています。化学兵器の使用はいずれも国際法上の犯罪です。また、化学兵器が広範に使用されれば、それは人道に対する罪となります。
安全保障理事会は、こうした攻撃の責任を確実に追及する責任を果たしていません。
私は、化学兵器の完全な禁止という決意を再確認し、尊重できるよう、安全保障理事会の理事国と協力し、新たなリーダーシップと結束を築き上げるよう努力しています。
化学兵器の使用者を特定する新たな中立的メカニズムの創設が必要です。シリア、もしくは他の国で、化学兵器が処罰を受けずに引き続き使用されることを許すことはできません。私はまた、化学兵器禁止条約とその制度を強化し、確実にこの画期的な条約を全面的に履行するため努力する所存です。化学兵器の保有も使用も決して許してはなりません。
私たちは、生物兵器の禁止を堅く守り、そのための能力をさらに向上させねばなりません。
科学技術の発展が生物兵器の開発と使用を容易にする中で、これらの兵器に関する懸念も高まり続けています。しかし現在のところ、生物兵器禁止条約を支える組織も査察機関も存在しません。
よって私は、加盟国と協力し、私に与えられた権限に基づき、すべての生物兵器使用の申し立てを調査するための中核となる常設メカニズムの設立に努めたいと思います。
私はまた、生物兵器禁止条約の制度的能力の強化を含め、長期的な解決策も模索する意向です。
化学・生物兵器を禁止する規範と条約の強化は、人類全体の利益となります。これらの兵器は禁止されており、決して使用されるべきではありません。
学生の皆さん、皆様、
私の第2の優先課題は、通常兵器の被害を削減、軽減することにより、人命を救う軍縮です。
即製爆破装置から弾道ミサイル、ロケット弾、大砲、さらには不法な拳銃に至るまで、通常兵器が幅広く入手できることが、武器を用いた暴力を助長し、世界の多くの地で混沌を生んでいます。
軍事産業は、ますます多くの武器を生産し、武器取引の市場は拡大しています。
各国、特に紛争が多い地域の国は、大量の通常兵器を蓄積しています。
私たちはこのような不安定化をもたらす動向に対処せねばなりません。 すでにこれまでいくつかの通常兵器を禁止・制限する条約が人命を救い、生き残った人々の生活を改善しています。
対人地雷やクラスター弾は、何年も前から禁止されています。人道的理由により武器の売却を規制する武器貿易条約は、2014年に発効しました。
しかし、こうした成果にもかかわらず、一般市民は依然として、武力紛争の矢面に立たされています。
驚くべき数の一般市民が死傷しているだけでなく、紛争は記録的な数の難民を生み出し、食料や医療、教育の機会、そして生計手段を奪っています。2016年末時点で、6,500万人以上が戦争や暴力、迫害によって家や土地を失っています。
武力紛争の主戦場が市街地へ波及することで、爆薬を使った兵器は特に一般市民の間で多くの死者を出しています。
爆弾が市街地で用いられた場合、死傷者の約90%は一般市民となります。こうした兵器は、病院や学校、水道、電力供給にも壊滅的な被害を及ぼします。
これが、私が市街地での爆弾の使用に関する適切な制限や共通の基準、政策を設定しようとする各加盟国の努力を支援する理由です。
私はまた、一般市民の死傷者のデータ収集も重要と考えます。政策や軍事作戦の手順と行動を変え、一般市民の保護のための世界的な基準を作るためには、さらに証拠となる統計が必要だからです。
学生の皆さん、皆様、
国連は、非合法な小型武器と弾薬が氾濫する状況に対し、平和と安全保障、男女の平等、持続可能な開発、国境を越えた犯罪、テロ対策、人道支援など、多くの角度から取り組んできました。国連のPKO要員はいろいろな国で武装解除プログラムに取り組んでいます。PKO要員は、持続的な平和に関する私たちの活動に不可欠な一部となっています。
しかし、これらの活動は20もの異なる機関にまたがり、断片的かつ限定的です。
それゆえに私は、小型武器の不法な流通と取引に対処する新たなイニシアティブを発表します。それは武器の回収と破壊を含め、不法な小型武器に取り組む政府の対策及び法的・政策的枠組みを支えるための資金を平和構築基金から充当するというものです。
国連のPKO要員は全世界で、武装解除プログラムに取り組んでいます。
私のイニシアティブは、平和と繁栄を達成するための地球規模の取り組みである「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を基盤としています。
兵器への過度の支出は、持続可能な開発の資源を枯渇させます。また、安定した包摂的な社会、強力な行政・司法制度、効果的なガバナンスと民主主義、そして人権尊重の文化の創出とも相容れません。
また、この問題にはジェンダーとも強い関連があります。たいていの場合、銃は男性的な特性を象徴しています。小型武器の所有者と使用者の圧倒的多数は男性です。女性は銃による暴力の実行犯になるよりも、犠牲者になる確率のほうが何倍も高いのです。
小型武器が過剰に氾濫する状況は、性的暴力を助長し、伝統的な男女の性別に基づく役割分担と力関係を固定化させるものです。私たちはこの悪循環を断ち切り、暴力と流血の文化を防がなければなりません。
学生の皆さん、皆様、
私の第3の優先課題は、未来世代のための軍縮です。
科学技術の進歩は、私たちの生活を多くの側面で変え、より良いものにしています。
技術の進歩は、貿易と繁栄を増大するとともに、世界の多くの場所で生活を改善してきました。
ビッグデータと解析、人工知能、自動化を含む技術は、私たちが気候変動の影響に対処し、これを緩和し、環境を保護し、あらゆる人の利益となる成長と開発の条件を作り出すことに役立つはずです。
しかし、こうした進歩の多くは、危険かつ忌まわしい新兵器技術にも応用可能です。
これらの技術は新たな戦争の領域を切り開き、さらなる軍拡競争の発端になりかねません。
既存の法的、人道的、倫理的規範を侵すおそれのある進展も見られます。自律型兵器が誕生する可能性はすでに、相当の社会不安を生んでいます。人間はいつでも、武力の使用を統制できる立場にいなければなりません。
中には武装無人偵察機のように、長年の国際法解釈に抵触しかねないものもあります。私たちには説明責任、透明性、監視を推進する共通の基準が必要です。
また、遺伝子編集や合成生物学の進歩のように、新しいタイプの生物戦を可能にし、これらの禁止兵器の使用を容易にしかねないものもあります。これもまた、生物兵器禁止条約とその体制を強化すべき理由のひとつです。
極超音速弾道ミサイルや宇宙兵器の開発が続けば、安全保障に対する新たな脅威が生まれ、核軍縮問題がさらに複雑化するおそれがあります。
その一方で、悪質なサイバー空間の使用が増え、その影響はますます広がりつつあります。
誰もが望まないでしょうが、もし世界で大規模な武力衝突が勃発するとすれば、私は大規模なサイバー攻撃がきっかけとなるに違いないと思っています。
国連憲章を含め、国際法がサイバー空間にも適用されるというコンセンサスはすでに存在しています。
しかし、実際に国際法がどのように適用されるのか、また、国家が法律の枠内で悪意ある、または敵対的な行為にいかに対応できるのかについては、コンセンサスはありません。
重要インフラへのサイバー攻撃は、国際関係や平和と安全保障に深刻な影響を及ぼしかねません。大量破壊サイバー兵器の出現に直面する可能性さえあります。
新兵器技術のリスクが重なれば、私たちの将来の安全保障の仕組みを一変させるような衝撃を与えるおそれさえあります。
この分野での私たちの軍縮への取り組みも、これまでの流れを変えるような、紛争防止を念頭においたインパクトのあるものでなければなりません。
私たちがともにできることはたくさんあります。
政府は監視や透明性、説明責任を改善できます。
すべての国家は、開発中の新兵器が国際法上、適法なのかそれとも禁止されるのかどうかを見極める義務があります。
そして私は、サイバー空間でなされた行為に起因する紛争を予防するための仲介を行う用意があります。
私はまた、人間が常に確実に武力の行使を統制することができるよう、法的拘束力のある取極めを含め、新たな措置を創案するために加盟国を支援する所存です。
私は、平和目的のための科学技術の発展に努める科学者と技術者を呼び集める意向です。私たちは彼らの見識を至急必要としています。
また、私は民間セクターによる責任あるイノベーションを促す機会も模索します。
各国政府に対しては、多国間の予防・統制措置を引き続き模索するよう訴えます。
学生の皆さん、皆様、
みんなが団結して行動しなければ、より安全な世界を創ることはできません。政府や専門家、市民社会、個人を含め、私たちが力を合わせて行動した時に、軍縮は最もうまく行くのです。
私たちの軍縮に対する見方が変わる中で、こうしたパートナーシップも変化しなければなりません。では、私たちの主要な多国間フォーラムである軍縮会議と国連軍縮委員会はどうでしょうか。ともに設立40周年を間近に控えていますが、最近の20年間は、いずれもほとんど成果を上げることができていません。
これらを再活性化すべき時はすでに来ています。
そのためには、両者間の調整を進め、重複を排除し、専門知識をよりよく活用すべきことはもちろんですが、何よりも必要なのは、これまでの政治的な立場を変える勇気です。私は加盟国と協力しながら、これを達成できる方法を探ってゆくつもりです。
今後の一つの道筋として、新しい声を取り入れ、二つの機関をできるだけ包摂的かつ多様化させることが挙げられます。
世界的の平和と安全のためのあらゆる活動において、女性が果たすべき指導的役割があります。画期的な軍縮条約を達成したり、国際世論を結集させる役割を担ったことで、何人もの女性がノーベル平和賞を受賞しています。女性はすべての軍縮プロセスに、意思決定者として参加しなければなりません。私はそのためにあらゆる支援を行う硬い決意があります。
この会場におられる学生の皆さんのような若者は、世界に変革をもたらす最も重要な力です。
皆さんがご自分にとって大切な大義のために時間と労力を費やしたり、ご自分が正しいと思うことを訴えるため立ち上がったり、声を上げて力を発揮されることを私は希望します。
また、皆さんには地元で行動し、ボランティア活動を行ったり、市民団体を通じて活動したりする機会もあります。
ソーシャルメディアは人々をつなぐ手段としてかつてない役割を果たし、社会運動や非政府組織、インターネット・コミュニティを通じて、国境を越えて世界中の人々と手を携えることを可能にしています。
国連は皆さんと力を合わせ、皆さんがさらに大きな声をあげ、時代に必要な変化をリードできるような知識と技能を身に着ける手助けをします。
私は、皆さんが自分の力とつながりを利用し、核兵器のない世界、兵器が管理、規制され、資源がすべての人に機会と繁栄をもたらすように使われる世界を求めることを希望しています。
国連は、外交政策の手段としての戦争を廃止するという目標を掲げ、創設されました。
しかし、それから70年を経た今、私たちの世界はかつてないほど危険になっています。
軍縮は暴力を防ぎ、これに終止符を打ちます。
軍縮は持続可能な開発を支えます。
そして軍縮は、私たちの価値と原則に沿うものす。
それこそが私が今日、ここで軍縮のためのアジェンダを提示した理由です。
私はすべての人が力強く立ち上がってくださることを願います。
ご清聴ありがとうございました。後ほどの議論を楽しみにしています。
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原文(English)はこちらをご覧ください。