コフィー・アナン氏献花式におけるアントニオ・グテーレス事務総長挨拶 (ニューヨーク、2018年8月22日)
プレスリリース 18-052-J 2018年08月24日
親愛なる同僚と友人、来賓の方々、皆様、
私たちはコフィー・アナン氏の死を悼むため、ここに集まっています。アナン氏は、国連の価値を体現し、私たちが同僚であることを誇りに感じさせてくれる人でした。
私たちの多くにとって、アナン氏の死去は個人的損失です。ましてや、ご夫人やご家族の方々の悲しみは計り知れません。私たちの思いは、ご家族の皆様とともにあります。
私たちは、コフィーが世界にとって、どれだけの意味を持っていたかを知っています。
私からは、国連で働く私たち全員にとって、アナン氏がどのような意味を持っていたかについて、少しお話ししたいと思います。
コフィー・アナン氏の任期は、ワクワクするような時代でした。氏は新しいアイディアを出しました。国連ファミリーに新しい人々を呼び込みました。私たちの任務と役割について、情熱的に語りました。そして、国連は世界の人々のために何ができ、何になれるかについて、国連の内外に新たな可能性の予感を作り出しました。
さまざまな部署で長く、豊富な経験を積んできたコフィーはまるで、あらゆる人を個人的に知っているように見えることがありました。しかし、実際に会ったことがない職員でさえも、コフィーとの絆を感じていました。それは氏が本当に、私たちの一員だったからです。私が18日にも述べたとおり、コフィー・アナン氏は多くの意味で、国連そのものを体現していたのです。
アナン氏を決定づける最も大きな特徴は、その人間性と、困窮した人々との連帯にありました。氏は国連の活動の中心に人間を置き、国連システム全体で共感を行動へと変えることができる人でした。
私たちは今でも、ミレニアム・サミットの恩恵に浴しています。アナン氏はこの時、全世界を団結させ、貧困と幼児死亡率に関する初のグローバルな目標に合意させたのです。氏のHIV/エイズへの対応は、各国政府や非政府組織、ヘルスケア産業を結束させ、間違いなく多くの命を救いました。
コフィー・アナン氏は、ルワンダでのジェノサイドとスレブレニツァでの虐殺事件への対応という、1990年代に国連が犯した重大な間違いに対し、国連内部から光を当てることによって、真正面から取り組みました。氏が委託した調査報告書のねらいは、こうした恐ろしい過ちが二度と起きないようにすること、そして、国際社会が大規模な残虐行為に対処するための新たな方向性を定めることにありました。
アナン氏は、声なき人々の声を代弁すべく、最も困難な問題にも臆せず立ち向かいながら、意見の相違を埋め、最も脆弱な立場にある人々を保護するために創造性豊かな活動を展開しました。そして、他の人々を敵に回さずに、自分の立場を守り続けました。氏の控え目さ、機嫌のよさ、礼儀正しさ、そして魅力は、大きな知恵や力と表裏一体でした。
アナン氏は私が生きている限り、私の記憶の中にいつも鮮やかに残り続けることでしょう。それは本質的に、氏が並外れた政治家であり、優れた外交官であり、鼓舞する指導者であったという事実ではなく、その優しさ、温かさ、そして友情から来るものです。アナン氏はまさに善人であり、紳士であり、いつも私たちを支援し、安心させ、いかに困難な時であろうとも私たちと完全に連帯し、私たち一人ひとりを自分の同僚と考えていたのです。
おそらく、私たちが氏の遺産を称えることができる最善の方法は、ノーベル平和賞受賞の際にアナン氏自身が行った次の発言を心に留めることでしょう。「一人ひとりの生活に恒久的な真の改善を確実にもたらすことが、私たち国連が行っていることです」
政治的な分裂や解決困難な紛争が広がるこの時代に、私たちは以前にも増して、コフィー・アナン氏の平和創造の精神を必要としているのです。
ありがとうございました。
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