国連テロリスト移動対策プログラム正式発足式での アントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(ニューヨーク、2019月5月7日)
プレスリリース 19-026-J 2019年05月15日
私が2017年にテロ対策事務所(OCT)を設置した背景には、いくつか根本的な理由があります。
まず、国際的なテロ対策協力を強化すること。
次に、テロリストを発見、特定し、その活動を阻むとともに、これを訴追するための情報を共有する多国間ネットワークを拡充すること。
そして、テロによって最も大きな影響を受けている加盟国が、この進化を遂げつつある脅威に対処できる能力を確保できるようにすることです。
ケニア、ニュージーランド、スリランカをはじめとする最近発生した卑劣な攻撃は、テロの惨劇の世界的な拡散を想起させる悲劇的事件でした。
こうした攻撃は、国連システム内外のパートナーと密接に連携する必要性を如実に示しています。
きょう私たちが発足させる「国連テロリスト移動対策プログラム」は、こうした目的をすべて達成するための支援を趣旨としています。
私は、この取り組みに寛大な貢献をいただいたオランダ政府に感謝いたします。
また、国連のテロ対策に対するインド、日本、サウジアラビア王国、カタール国の政府による継続的な支援に対して感謝の意を表します。
過去7年間、全世界の紛争地帯にはテロリストが多数出入りしてきました。
私たちはほんの2年前にも、110カ国以上から4万人を超える外国人テロ戦闘員が、シリア・アラブ共和国やイラクでテロ集団に合流した可能性があるという推計を出しました。
イラクとレバントのイスラム国(ISIL)が支配地域を失ったことを受け、多くのテロリストが帰国したり、安全な隠れ場や世界のその他紛争地域に移動したりしようとしています。
その中には、高度な訓練を受け、将来的にテロ攻撃を実行するおそれのある者が多くいます。
また、さらに過激化し、新たな信奉者を集めようとしている者もいます。
こうしたテロリストや、これに鼓舞された人間は、国境を越えて大きな脅威となります。
攻撃が実行に移される前に、こうしたテロリストや、その他リスクの高い犯罪者を発見し、その活動を阻むことは、国際社会にとって優先度の高い課題です。
総会および安全保障理事会決議2396は、各国の発見能力を高め、テロリストの移動を阻止するため、私たちの国際協力と情報共有を強化する必要性を再確認しました。
今回発足したプログラムは、加盟国がプライバシーやその他の基本的自由を全面的に尊重しつつ、渡航データを収集、処理し、これを他の権限ある国内、国際当局と共有することに役立つことでしょう。
私たちは、暴力的過激主義に対処するためには、人権を全面的に尊重する政策が欠かせないことを知っています。
この情報共有は、加盟国が関連の移動を含め、テロ犯罪を実効的に発見、予防、調査および訴追できる能力を高めることでしょう。
また、重要な点として、人身取引その他の深刻な組織犯罪の諸形態を発見、阻止し、その被害者をより速く特定することも可能になるでしょう。
国連ファミリーには、このプロジェクトが対象とするすべての被害者の権利を擁護、確保することに貢献する用意があります。
このプログラムは、私が昨年、システム全体でのテロ対策の調整と一貫性を強化するために「テロ対策調整グローバル・コンパクト」を定めた際に目指した協調的な政府間の制度的アプローチを体現するものです。
この関連で、国連テロ対策センターも、テロによる最も大きな影響を受けている国々からの期待と要望の高まりに対応するための取り組みを本格化させています。
私は、同センターの諮問委員会で議長を務めるサウジアラビア王国のアル=ムアッリミー大使に謝意を表します。
国際の平和と安全に対する深刻な脅威に取り組むため、現実的かつ革新的な協力を続けることを、全員で誓おうではありませんか。
ありがとうございました。
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