宗教的施設を保護するための国連行動計画発足にあたってのアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(ニューヨーク、2019年9月12日)
プレスリリース 19-079-J 2019年09月12日
全世界で憎悪と暴力に立ち向かうための新たな重要な取り組みを発表するこの場にご参加いただき、ありがとうございます。
私たち全員が痛感しているとおり、世界は反ユダヤ主義、イスラム教徒に対する憎悪、キリスト教徒に対する攻撃、その他の宗教団体を標的とする不寛容の台頭に直面しています。
最近の数カ月だけでも、ユダヤ教徒がシナゴーグで暗殺され、イスラム教徒がモスクで銃撃を受け、礼拝中のキリスト教徒が殺害されています。
私は可能な限り強い言葉で、こうした攻撃を非難します。
3月、クライストチャーチのモスクで起きた虐殺事件の直後、私はニューヨークのイスラミックセンターを訪れました。この連帯を示す訪問には、皆様の多くも加わりました。
私はその際、あらゆる礼拝所の神聖さと、あらゆる礼拝者の安全を改めて確認することを世界に呼びかけました。
そしてミゲル・モラティノス国連文明の同盟担当上級代表に対し、国連が宗教的施設の保護をの支援するための行動計画を策定するよう要請しました。
それ以来、上級代表とそのチームは政府、宗教指導者、信仰団体、市民社会、若い女性と男性、地域社会、従来のメディアとソーシャルメディア、民間セクターなど、多種多様な主体に働きかけを行ってきました。
そしてきょう、私たちはこの活動の成果として「宗教的施設を保護するための国連行動計画」を立ち上げることになりました。
行動計画は、宗教的施設を安全な場所にし、礼拝者が平穏に儀式を執り行えるようにし、全世界で思いやりと寛容という価値観が育つようにするための加盟国による取り組みを支援するため、具体的な提言を行っています。
行動計画は、世界人権宣言を基盤とし、次の7つの指針に根差すものとなっています。
すべての民族に対する尊重
相互の理解と協力という架け橋を作り上げる責任
他者との差異を受け入れ、尊重するための多様性
相互の意思疎通と関係性を改善するためのツールとしての対話
悲しみや困難に見舞われた時にこそ、お互いを支え合うという連帯
私たちを分断させようという企てに力を合わせて対応するための団結
宗教的施設に対する攻撃への団結した対応を持続させ、強化していくための一体感
この行動計画を補完するのが、6月に立ち上げた「ヘイトスピーチに関する国連戦略・行動計画」です。
そのねらいは、ヘイトスピーチの根本的原因に取り組み、私たちの対応の効果をさらに高めるべく、国連システム全体の努力を調整することにあります。
2つの計画は全体として、不寛容と闘い、平和的共存を促進するための重要かつ相互補完的な新しいツールを提供しています。
宗教的施設は、私たちの団結した意識を力強く象徴するものです。
宗教や信条を理由に人々が攻撃を受ければ、社会全体が衰退します。
全世界の礼拝所は、内省と平和のための安全の場所でなければならず、これを流血やテロの場としてはなりません。
あらゆる場所の人々が、平穏にその信仰を守り、実践できなければなりません。
武力紛争下でも、宗教目的にのみ使われる建物は、国際人道法によって特定的に守られています。
こうした建物に対する意図的攻撃は戦争犯罪であり、国際刑事裁判所(ICC)も事実、このような犯罪で1人に有罪判決を下しています。
宗教と信仰の許しがたい歪曲に基づく暴力の脅威を克服する最善の方法は、善のために私たちの声を一つにし、平和のメッセージをもって憎悪のメッセージに対抗し、脅威ではなく豊かさとして多様性を受け入れ、社会的一体性に投資し、人権を擁護することです。
私たちが協力すれば、宗教的施設に対する攻撃の予防に寄与するとともに、信徒たちが平穏に礼拝するための安全を保障する役割を果たせるのです。
行動計画により、国連はこの重要な目標の実現を図り、私たちの時代で最大の世界的課題の一つに取り組むため、大きな一歩を踏み出しています。
この行動計画は、国連文明の同盟が主導、監視することになります。私はこれに対する皆様のご支援を頼りにしています。
この混沌とした時代に、人類という一つの家族として私たちを結びつける価値を守るため、引き続き力を合わせていこうではありませんか。
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