政策概要「COVID-19と仕事の世界」の発表に寄せる アントニオ・グテーレス国連事務総長ビデオ・メッセージ
プレスリリース 20-043-J 2020年06月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)は、仕事の世界を根底から覆しました。
全世界のあらゆる労働者、あらゆる企業、あらゆる職場で影響が出ています。
数億人の雇用が失われました。
しばしば労働における権利も社会的保護もなく、インフォーマル経済で懸命に働いている人々は、COVID-19危機の最初の1カ月だけでも、所得が60%減少したものと見られています。
女性は特に大きな打撃を受けており、最も影響が深刻な部門の多くで働きつつ、無償のケア労働が増大したことで、最も大きな負担を強いられています。
若者や障害のある人々など、その他多くの人々が極めて大きな困難に直面しています。
グローバル経済の原動力である多くの中小企業は、生き残れないおそれがあります。
仕事の世界で生じたこの危機は、すでに高まっている不満や不安の火に油を注いでいます。
COVID-19による大量の失業と所得の喪失は、社会的一体性を蝕むとともに、各国や各地域を社会的、政治的、経済的に不安定化させています。
確かに、革新的なやり方で状況の変化に対応している企業や労働者も多く存在します。例えば、数百万人が一夜にしてオンライン勤務へと移行し、驚くほどの成果を上げているケースは多くあります。
しかし、最も脆弱な立場に置かれた人々の脆弱性はさらに高まるおそれがあるほか、貧しい国やコミュニティーがさらに取り残されるリスクもあります。
私たちには、3つの点で対策が必要です。
第1に、リスクにさらされた労働者や企業、雇用、所得を直ちに支援し、事業の閉鎖や雇用の喪失、所得の減少を防がなければなりません。
第2に、ロックダウン緩和後の健康と経済活動をさらに重視し、安全な職場のほか、女性やリスクにさらされた人々の権利を確保しなければなりません。
第3に、最新テクノロジーの潜在的可能性を活かし、すべての人に人間らしく働きがいのある仕事を創出しつつ、企業や労働者による創造的かつ積極的な現状への対応方法を取り入れた、人間中心の、環境に優しく、持続可能な復興に向けて、今すぐ結束する必要があります。
COVID-19危機を受けて「ニューノーマル(新常態)」の必要性を唱える議論は多く見られます。
しかし、COVID-19以前の世界も、ノーマルには程遠い状態だったことを忘れてはなりません。
不平等の拡大、体系的なジェンダーの差別、若者にとっての機会の欠如、賃金の停滞、野放しの気候変動のどれを取っても「ノーマル」とは言い難いからです。
今回のパンデミックで、とてつもなく大きな欠点や弱点、分断が明らかになりました。
COVID-19危機の後も、仕事の世界が以前と同じ様相を呈することはあり得ず、また、そうなるべきでもありません。
世界的、地域的、国内的な取り組みにより、環境に優しく、包摂的かつ強靭な復興の基盤として、すべての人にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を創出すべき時が来ています。例えば、課税対象を所得から炭素へとシフトさせれば、この方向へと歩を進める大きなきっかけになるかもしれません。
あらゆるレベルでスマートな時宜に適った行動と、持続可能な開発のための2030アジェンダを指針とすれば、私たちはこの危機からさらに強くなって立ち直り、すべての人がより良い仕事と、より明るく平等でグリーンな未来を手にすることができるのです。
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