「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」閣僚級会合兼経済社会理事会ハイレベル会合でのアントニオ・グテーレス国連事務総長による開会挨拶(ニューヨーク、2020年7月14日)
プレスリリース 20-049-J 2020年07月22日
昨年9月、国連総会は持続可能な開発のための「行動の10年」を宣言しました。
「行動の10年」は、2030年までに世界が持続可能な開発目標(SDGs)を達成できる目途が立っていないという、深く憂慮すべき現実を受けて設けられたものでした。
ハイレベル政治フォーラムが「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の進捗状況を審査する会合を開いている今この時、世界は混乱状態にあります。
私たちはすでに、受け入れがたいほど深刻な貧困、気候緊急事態の急激な悪化、根強く残るジェンダーの不平等、大幅な資金不足など、多くの課題を抱えていました。
そして今、私たちは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という、新しい大きな地球規模の課題に直面しています。
危機の重大さは、誰の目にも明らかなはずです。
1,300万人近くが新型コロナウイルスに感染し、死者は56万人を超えています。
2020年第2四半期には、4億人の仕事に相当する労働時間が失われました。
私たちは1870年以来、最も急激な1人当たり所得の低下を目の当たりにしています。
7,000万人から1億人が、極度の貧困に追いやられるおそれがあります。
年末までに深刻な食料不安に直面しかねない人々は、およそ2億6,500万人と、この危機以前の数の2倍に上ります。
しかも、COVID-19の世界的大流行(パンデミック)の影響は社会的に最も脆弱な立場に置かれた人々に不当に大きくのしかかっています。
私たちが大きな前進を是が非でも必要としているまさにこの時、COVID-19は私たちを数年、さらには数十年も後戻りさせ、財政面、成長面で各国に大きな課題を突きつけるおそれがあります。
COVID-19危機は、私たちをSDGsの達成から、さらに大きく引き離しているのです。
皆様、
私はきょうここで、皆様にすべてがうまく行くと言うつもりはありません。
私たちは自分自身に正直でなければなりません。
COVID-19危機が壊滅的な影響を及ぼしている原因は、私たちの過去と現在の失敗にあります。
私たちは、SDGsをまだ真剣に考えていませんでした。
国家間と国内の不平等により、数十億人が一度の危機で貧困や金銭的破滅に陥るような状況に甘んじていました。
私たちはユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)や質の高い教育、社会的保護、安全な水と衛生など、レジリエンスに十分な投資もしてきていません。
危機が起きた時にいつも女性や女児がその矢面に立たされるような力の不均衡も、正せていません。
私たちが自然環境に及ぼしているダメージに関する警告も無視してきました。
気候変動の衝撃的なリスクも放置しています。
そして、効果的な国際協力や連帯の価値も軽んじてきたのです。
しかし私たちは、この状況を一変させることができます。
私たちには、2030アジェンダとSDGsという、永続的で求心力のあるビジョンがあります。それは、パンデミックへの対応とより良い復興を図る中で、私たちの決断の指針となる枠組みでもあります。
私はまた、危機の発生以来、政府や国際的パートナー、国連の常駐調整官、国連開発システム全体のほか、医療制度を支えるヒーローや、全世界のコミュニティーからも素晴らしい反応が得られたことに、心を強くしています。
さらに、若者の声や市民社会の積極的な行動、イノベーションの力と企業の敏捷性のおかげで、善を求めるグローバルな運動の萌芽も見られています。
今回の危機が与えてくれた気づきにより、私たちには、包摂的でネットワーク化された効果的なマルチラテラリズムを作り上げるチャンスが訪れています。
私たちは、働き方から学び方、住む場所から消費するモノに至るまで、過去の有害な想定やアプローチを捨て去り、それによって大きな前進を遂げることもできます。
そして最後に、今後数カ月の間に下される資金に関する決定は、私たちが最近になって達成された前進を守り、社会的に最も脆弱な立場に置かれた人々を保護し、より包摂的で持続可能かつ強靭な社会に向けて歩を進めるための機会にもなるでしょう。
私は当初から、グローバル経済の10%以上に相当する額の総合救済策と、その不可欠な要素として、十分なレベルの債務救済を含め、開発途上地域が受益できる連帯のメカニズムを求めてきました。
私は9月に、加盟国の全面的な協力を得ながら、この取り組みをさらに前進させていきます。
皆様、
私は今年、困難な状況にもかかわらず、自発的国別レビュー(VNR)を提出している47カ国を賞賛します。
これら国々の報告は、COVID-19が世界の脆弱性をさらに高める中で、私たちの課題がますます大きく、緊急性を増していることを確認しています。
私たちは今こそ、時代の要請を満たすべく立ち上がらねばなりません。
世界が以前のいわゆる「常態」に戻ることができないことは、私たちの誰もが認識しています。
私たちに必要なのは、SDGsに着想を得た具体的で大胆かつ実行可能な解決策です。
このハイレベル政治フォーラムの場を活用して、あらゆる国が直面する危機の対応に全力を挙げ、すでに経済的資源が限られている国に特に注意を向けようではありませんか。
経験を共有することで、どのような施策がうまく行き、どのような施策を同じように適用または拡大できるのかを把握しようではありませんか。
そして、復興への取り組みをSDGs達成に整合させる多国間対応を確立するという、私たちの決意を新たにしようではありませんか。
きょうから数日にわたる皆様の討議は、世界的な形勢を一変させることに資する可能性があるのです。
ありがとうございました。
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