「教育とCOVID-19に関する政策概要」の発表に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長ビデオ・メッセージ(ニューヨーク、2020年8月4日)
プレスリリース 20-052-J 2020年08月07日
教育は、人の成長と社会の未来の鍵を握っています。
教育は、様々な機会を解き放ち、不平等を減らします。
教育は、情報が人々に行き渡った寛容な社会の基盤であり、持続可能な開発を推進する主な原動力でもあります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)によって、教育にはこれまでにない大規模な混乱が生じました。
7月中旬時点で、160カ国以上で学校が閉鎖され、10億人を超える生徒が影響を受けました。
就学前の大事な時期に教育を受けられない子どもも、世界で少なくとも4,000万人に達しています。
そして親たち、特に女性が、育児や看護など家庭内のケアに関わる大きな責任を担うことを強いられています。
ラジオやテレビ、オンラインで授業が実施され、教員も親も最善の努力を続けているものの、多くの生徒がまだその取り組みの恩恵を受けられていません。
障害があったり、少数者や困難な立場にあるコミュニティーの学習者たち、また避難民や難民の生徒、そして遠隔地で暮らす学習者たちは、取り残されるリスクが最も高くなっています。
さらに、遠隔学習が可能な生徒も、その成果は家事の公正な分担がなされているかなど、生活環境に左右されます。
私たちは、COVID-19パンデミックの前から学習の危機に直面していました。
学齢期の子どものうち、学校に通えない子どもの数は2億5,000万人を超えていました。
開発途上国では、中等教育を受けた子どものうち、基礎的なスキルを身につけて学校を卒業した者が4分の1にすぎませんでした。
そして今、私たちは、人間のもつ計り知れない可能性をとり逃し、数十年にわたる前進を台無しにし、社会に深く根を張る不平等をさらに深刻にさせる恐れがある、世代的な大惨事に直面しています。
子どもの栄養や児童婚、ジェンダーの平等などに対する波及的影響も、大いに懸念されます。
私がきょう発表する政策概要と、それに伴う教育パートナーや国連機関との新たな共同キャンペーン「私たちの未来を守ろう(Save Our Future)」には、このような背景があります。
私たちは、世界の子どもと若者のための決定的な瞬間を迎えています。
政府やパートナーがいまとる決断は今後数十年にわたり、何億人もの若者と、各国の発展の見通しに永続的な影響を及ぼすことでしょう。
この政策概要は、4つの重要分野で対策を求めています。
第1に、学校を再開すること。
COVID-19の感染が収束した地域では、生徒たちを学校や学習施設にできるだけ安全に戻すことを最優先課題としなければなりません。
私たちは、各国政府によるこの複雑な取り組みを支援するための指針を発表しました。
何よりも大切なことは、健康リスクと子どもの教育・保護に対するリスクのバランスをとるとともに、女性の就労に対する影響にも配慮することです。
親や養育者、教員、若者との協議がきわめて重要です。
第2に、財務に関する決定で教育を優先すること。
コロナ危機が起きる前から、低・中所得国では教育資金が年間1.5兆ドル不足していました。
この不足分は今、さらに大きくなっています。
教育予算を守り、増額することが必要です。
また、債務管理や経済対策から、グローバルな人道アピール、政府開発援助(ODA)に至るまで、国際的な連帯の取り組みの中心に教育を据えることが不可欠です。
第3に、最も支援の手が届きにくい人々に焦点を置くこと。
教育に対する取り組みでは、緊急事態や危機に直面している人々や、あらゆる種類の少数者、避難民や障害者など、取り残されるリスクが最も高い人々に手を差し伸べることを目指さなければなりません。
女児子と男児、そして女性と男性が抱える具体的な課題に配慮し、緊急にデジタル格差の解消を図るべきです。
第4に、教育の未来は今ここで決まるということ。
私たちには、教育について考え直す世代的な機会が訪れています。
私たちは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて飛躍を遂げるきっかけとして、すべての人々に質の高い教育を提供する未来を見据えたシステムへと、一気に歩を進めることができます。
これを達成するために、私たちはデジタル・リテラシーとインフラへの投資、学び方を学ぶという方向への進化、生涯学習の活性化、そして公式教育と非公式教育の連携強化を必要としています。
また、教員とコミュニティーに対する持続的な支援を確保する一方で、柔軟な実施手段、デジタル技術、現代化されたカリキュラムを拡大する必要があります。
世界が持続不可能なレベルの不平等に直面する中で、私たちはこれまでにも増して、平等をもたらす大きな力となる、教育を必要としています。
私たちは今こそ、未来にふさわしい、包摂的で、強靭かつ質の高い教育制度を築くため、大胆な対策を講じなければなりません。
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原文(English)はこちらをご覧ください。