世界観光デー(9月27日)に寄せる アントニオ・グテーレス国事務総長メッセージ
プレスリリース 20-067-J 2020年09月28日
初の「世界観光デー」から40年が過ぎた今、状況は大きく変わっています。旅行に対する需要は急増しました。世界がその扉を開けたことで、これまでになく多くの人々が地球と、そこにあるさまざまな文化を探索できるようになりました。
現在、観光は国連「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中でも、豊かさを広げ、地球を守り、人々の間に平和と理解の基礎を整備するための原動力として、確固たる基盤となっています。
女性と若者をはじめ、全世界で数百万人が観光で生計を立てています。何もなければ取り残されていた可能性のある人々も、観光が持つ独自の潜在性のおかげで、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と、より良い暮らしを送るチャンスを手に入れています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)により、観光業は極めて大きな痛手を受けました。約1億2,000万人の雇用がリスクにさらされています。その影響で、世界全体のGDPの1.5%から2.8%が失われるおそれもあります。その被害は特に、小島嶼開発途上国や後発開発途上国、多くのアフリカ諸国など、観光が輸出の30%から80%を占めることもある最も脆弱な国々に及ぶことになります。
私たちがこの深刻な危機からの復興を目指す中で、観光の安全な再開は欠かせません。そこには、今年の「世界観光デー」のメインテーマである農村開発という重要な側面もあるからです。私たちには、観光業と人間、自然、気候、そして経済との関係を変革できる、今までにない機会が訪れています。私たちは、その恩恵の公正な分配を確保するとともに、カーボンニュートラルで強靭な観光経済への移行を進めなければなりません。
観光は人々に機会をもたらすだけでなく、私たちが共有する独特な文化と、私たちの命を支える生物多様性や生態系を守るうえでも、重要な役割を果たすことができます。
最も大きな課題に見舞われた今年こそ、農村部で暮らす人々にとって観光が持つ重要性をしっかりと見つめることで、持続可能な開発目標(SDGs)に掲げられた「誰一人取り残さない」という約束を果たせるようにしようではありませんか。
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