食料システムサミットに関するアントニオ・グテーレス国連事務総長声明 (2021年7月12日、ニューヨーク)
プレスリリース 21-039-J 2021年07月26日
現在、私たちは、2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための軌道を大きく外れているという認識を新たにしています。新たに発表された悲劇的なデータによれば、2020年に世界で飢餓に直面した人は7億2,000万から8億1,100万人に上り、2019年比で1億6,100万人増となっています。
コスト高に加え、高い水準にとどまる貧困、収入の不平等が重なり、世界中のあらゆる地域に住むおよそ30億人が、いまだに健康的な食生活を送ることができていません。
実際、飢餓はここ数年増加傾向にあり、2021年現在、私たちは世界中の人々の基本的な権利であるはずのものを提供できていない状況にあります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は事態を悪化させ、不平等、貧困、食料と疾病との間の関係を明らかにしました。1960年代半ば以降、世界の食料生産は300パーセント増加したにもかかわらず、栄養不良が平均寿命の低下を招く主な要因となっています。
気候変動は、飢餓を悪化させる要因であり、その結果でもあります。私たち人間と自然との戦争には、すべての温室効果ガス排出量の3分の1を生み出す食料システムも含まれます。それはまた、生物多様性喪失の原因の最大80%を占めています。
そして、飢餓は紛争も引き起こします。
つまり、その他のグローバルな課題と切り離して飢餓と栄養不良に対処することは不可能なのです。2030アジェンダを通じて認識しているように、それらは互いに連関しているのです。
今こそ、約束を守るときです。この豊かな世界で何十億もの人々が健康的な食生活を送ることができていないことに弁解の余地はありません。これは許されることではないのです。
また、世界全体の気温上昇を抑えるために必要な緊急の変革を行う時間はなくなりつつあります。
これこそが、私が9月に地球規模の「食料システムサミット」を招集する理由です。私たちは団結して緊急に変化を起こさなければなりません。今月末にローマで開催予定のプレサミットは、私たちが野心的な目標の範囲を定め、食料システムを変革することで、飢餓、気候緊急事態、信じがたいほどの不平等、そして紛争に対処する方法を検討することに役立つでしょう。
“ピープルズ・サミット(人々のサミット)”と位置付けられるプレサミットのプロセスを通して、私たちは世界中から何千もの意見に耳を傾け、食料システムの未来を担う女性や先住民族、若者たちのアイデアに耳を傾けてきました。プレサミットは同時に、“ソリューションズ・サミット(解決をもたらすサミット)”としても位置付けられ、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進や、テクノロジーへのアクセスの改善、私たちと地球の関係のリセットに必要な、環境に配慮した移行を支援するアイデアを提案することにすべての人が貢献しています。
私たちと食料との関わりは、地球上の生命のあらゆる側面の基本的な部分です。食料システムが持つ社会的、環境的、経済的側面は深遠です。私たちがどこに居ようとも、食料は私たちを家族やコミュニティーとして一つにまとめると同時に、何十億もの仕事を支えしてくれているのです。
食料システムに変革をもたらさなければなりません。変革によってパンデミックによる影響が抑制され、より安全でより公正、かつより持続可能な世界への転換が始まります。
2030アジェンダこそが、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックからの復興に向けた青写真です。食料システムの変革に投資することが、私たちの世界の転換を支えてくれます。それは私たちが行える、最も賢明、かつ最も必要な投資の一つなのです。
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