COP26世界リーダーズ・サミットにおけるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(グラスゴー、2021年11月1日)
プレスリリース 21-064-J 2021年11月09日
ジョンソン首相、そしてアロック・シャルマ議長。国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP26)の開催に向けたお二人のホスピタリティ、リーダーシップ、そしてたゆまぬ努力に感謝いたします。
英国王室の方々、来賓の方々、ご列席の皆様、
パリ協定以降の6年間は、観測史上最も暑い6年でした。
私たちの化石燃料への中毒症状は、人類を破滅の瀬戸際まで追い込んでいます。
私たちは厳しい選択を迫られています。私たちが化石燃料への依存を止めるか、あるいは化石燃料への依存が私たちを止めるかです。
今こそはっきりと言う時です、もうたくさんだと。
生物多様性を残酷に破壊するのは、もうたくさんです。
炭素で自分たちの首を絞めるのは、もうたくさんです。
自然界をトイレのように扱うのは、もうたくさんです。
自分たちのために資源を燃やし、掘削し、さらに深く採掘するのは、もうたくさんです。
私たちは、自らの墓穴を掘っているのです。
地球は、私たちの目の前で変化しています。深い海の底から山の頂に至るまで、溶けゆく氷河から苛酷な異常気象事象に至るまで。
海面上昇は、30年前と比べて2倍の速さで進んでいます。
海水温はかつてないほど高く、その上昇率はさらに早まっています。
アマゾンの熱帯雨林の一部は、今では吸収する以上の炭素を排出しています。
最近発表されたいくつかの気候変動対策は、私たちが状況を好転させる軌道に乗っているという印象を与えるかもしれません。
それは幻想です。
先日発表された「国が決定する貢献(NDC)」に関する報告書では、世界の平均気温上昇が2.7℃になるという悲惨な見通しが示されました。
最近の公約が明確で信頼できるものであったとしても―しかもその中にはいくつかの深刻な疑念がありますが―私たちは依然として気候変動による惨禍に向かって突き進んでいます。
最善のシナリオであったとしても、気温上昇は優に2℃を超えるでしょう。
この待ち望まれた気候会議の開催中にも、私たちは依然として気候の大惨事へと向かっているのです。
若者は、それを理解しています。
すべての国々が、それを認識しています。
小島嶼開発途上国とその他の脆弱な国々は、その渦中にあるのです。
そうした国々に、失敗という選択肢はありません。
失敗は、死刑宣告です。
来賓の皆様、
私たちは正念場を迎えています。
私たちは、地球温暖化のフィードバックループが増大する臨界点へと急速に近づいています。
しかし、気候変動に対してレジリエント(強靭)な、排出量正味ゼロの経済に投資することで、持続可能な成長や雇用、機会の好循環という、その経済独自のフィードバックループが生み出されます。
私たちには積み重ねるべき進歩があります。
多くの国々が、今世紀半ばまでに排出量正味ゼロを達成するという信頼できるコミットメントを掲げています。
多くの国々が、国際的な石炭関連融資から撤退しました。
700を超える都市が、カーボンニュートラルの実現を先導しています。
民間セクターは、目覚めつつあります。
信頼できるコミットメントと透明性の高い目標の優れた判断基準である「Net-ZeroAssetOwnersAlliance(AoA)」は10兆米ドルの資産を運用し、様々な業界に変化を引き起こしています。
若い世代が先導する気候変動対策を支持する大勢の人々は、誰にも止めることができません。
その数はさらに増え、その声はますます大きくなっています。
そして、私は断言します。彼らがいなくなることはありません。
私は彼らを支持します。
来賓の皆様、
科学は明快です。私たちは何をすべきかを知っています。
第一に、私たちは1.5°C目標を維持しなければなりません。
そのためには、より野心的な緩和策を打ち出し、具体的な行動を直ちに起こして2030年までに世界の排出量を45%削減する必要があります。
排出量の約80%を占めるG20諸国は特別な責務を担っています。
先進国は、国ごとの事情によって異なるとはいえ共通の責任の原則に従って、その取り組みを主導しなければなりません。
しかし、排出量を効果的に削減するには新興経済国の貢献が不可欠であるため、こうした国々にも一層の努力が求められます。
COP26を成功に導くには、あらゆる国々があらゆる領域で最大限の野心を持つ必要があるのです。
私は、先進国と新興経済国が協力体制を築き、経済の脱炭素化と石炭利用の廃止を加速させるための財政的・技術的状況をつくり出すよう要請します。こうした協力体制は、グレーからグリーンへの移行においてより多くの困難に直面する主要排出国が排出量を削減できるよう支援することを意図したものです。
幻想を抱くのは止めましょう。COP26が閉会するまでに各国のコミットメントが不十分であれば、各国は自国の気候計画と政策を見直さなければなりません。
5年ごとではありません。毎年です。あらゆる瞬間にです。
1.5°C目標を維持することが確実になるまで。
化石燃料への補助金が廃止されるまで。
炭素に価格がつくまで。
石炭が利用されなくなるまで。
しかし、私たちは透明性をさらに高める必要もあります。
排出量の削減や正味ゼロ目標には様々な意味や基準があるため、信頼性に欠け、余計な混乱が生じています。
そのため私は、パリ協定ですでに確立されたメカニズムに加えて、非国家主体の正味ゼロ・コミットメントを測定・分析するための明確な基準を提案する専門家グループを設置することを本日発表します。
第二に、気候変動がもたらす、今ここにある明確な危機から脆弱なコミュニティーを守るために、私たちはさらに取り組まなければなりません。
この10年間で、約40億の人々が気候関連の災害に見舞われました。
こうした惨害は拡大する一方です。
しかし、それに適応することはできます。
早期警報システムは人命を救います。気候スマート農業やインフラは雇用を守ります。
あらゆるドナーは自分たちの気候変動対策資金の半分を適応策に充てなければなりません。
公的および多国間開発銀行は、できるだけ早く始動すべきです。
第三に、このCOP26を連帯の瞬間にしなければなりません。
開発途上国を支援するために年間1,000億米ドルの気候変動対策資金を投じるというコミットメントは、1,000億ドルの気候変動対策資金として実現しなければなりません。
これは、信頼と信用を回復させる上で不可欠です。
私は、カナダとドイツが主導する取り組みによってそれが実現されることを歓迎します。
これは重要な第一歩ですが、そのために最大の支援が何年も実現されず、明確な保証も与えられません。
しかし、開発途上国は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いやレジリエンスの構築、持続可能な開発の追求に1000億ドルをはるかに超える資源を必要としています。
最も苦しんでいる国々、すなわち後発開発途上国と小島嶼開発途上国は資金援助を緊急に必要としています。
さらなる公的な気候変動対策資金、さらなる海外開発援助、さらなる助成金が必要です。資金調達のしやすさが求められます。
そして、多国間開発銀行は、ブレンドファイナンスやプライベートファイナンスによる投資の拡大に一層真剣に取り組まなければなりません。
来賓の皆様、
サイレンが鳴っています。
地球は私たちに語りかけ、何かを訴えています。
世界中の人々もそうです。
気候変動対策は、国や年齢、性別を問わず人々の最大の懸念事項です。
私たちは耳を傾け、行動し、賢明な選択をしなければなりません。
私は、今の世代と未来の世代を代表して皆様に要請します。
野心を選択してください。
連帯を選択してください。
私たちの未来を守り、人類を救うために選択してください。ありがとうございました。
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