世界環境デー(6月5日)に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ
プレスリリース 22-025-J 2022年06月07日
今年の「世界環境デー」のテーマである「かけがえのない地球(Only One Earth)」は、事実を端的に表しています。この地球は私たちにとって唯一の住処です。私たちにとって、大気の健康、地球上の生命の豊かさと多様性、生態系と限りある資源を守ることは極めて重要です。しかし、私たちにはそれができていません。持続可能でない生活様式を維持するために、地球にあまりにも多くを求めすぎています。地球本来のシステムが、私たちの需要に追い付けないのです。
地球だけでなく、私たちも傷ついています。健康な環境は、すべての人々にとって、そして持続可能な開発目標(SDGs)の17すべての目標にとって不可欠です。健康な環境によって、食料、きれいな水、医薬品、気候調節、異常気象からの保護がもたらされます。私たちにとって、自然を賢く管理し、自然がもたらす恩恵への公平なアクセスを、特に最も脆弱な立場に置かれた人々とコミュニティーに確保することは不可欠です。
30億を超える人々が、生態系の劣化による影響を受けています。汚染により、毎年約900万人が早死にしています。100万種を超える動植物種が絶滅の危機に瀕しており、その多くが数十年以内に絶滅するおそれがあります。
人類の半数近くがすでに、猛暑や洪水、干ばつなど気候変動による被害により亡くなる可能性が15倍にのぼる、気候危険地域にいます。今後5年以内に50%の確率で、世界の年平均気温がパリ協定で定められた1.5°Cの上限を突破する可能性があります。2050年までに、毎年2億人を超える人々が気候崩壊によって故郷を追われる可能性があります。
50年前、世界の指導者たちが国連人間環境会議に集い、地球を守ることを決意しました。しかし、私たちは成功からは程遠い状況にあります。もはや、日増しに大きくなる警鐘を無視することはできません。
先日開催されたストックホルム+50国際会議において、SDGsの17すべての目標の達成は、健康な地球にかかっていることが改めて強調されました。私たち全員に、気候変動、汚染、生物多様性の喪失という三重の危機がもたらしつつある惨禍を回避するための、責任があります。
各国政府は、持続可能な進歩を推進する政策決定を通じて、気候行動と環境保護を優先させることが緊急に必要です。そのため私は、再生可能エネルギーの導入をあらゆる場所において劇的に加速させる5つの具体的な提言をしました。再生可能技術とその資源をすべての人々が入手できるようにすること、官僚主義をなくすこと、補助金を振り替えること、投資を3倍に増やすことが含まれます。
企業は、人類のために、そして自社の利益のために、持続可能性を意思決定の中核に据える必要があります。健康な地球は、地球上のほぼすべての産業にとっての屋台骨なのです。
そして有権者であり消費者である私たちは、支持する政策から口にする食べ物、移動手段の選択、支持する企業に至るまで、責任ある行動をとらなければなりません。私たちは皆、環境に配慮した選択を行うことで、結果として、必要な変化を生むことができるからです。
女性と女児は、とりわけ変化をもたらす力強い主体となる可能性があります。あらゆるレベルにおいて、女性と女児がエンパワーメントされ、意思決定に含まれなければなりません。同様に、私たちの壊れやすい生態系の保護を支援するために、それぞれの土地に根差した伝統的な知識も尊重し、活用しなければなりません。
私たちが協力して地球を第一に考えた時に何を実現できるのかは、歴史が示しています。1980年代に、オゾン層に生命を脅かす大陸大の穴が開いているという警告を科学者たちが発した時、各国はオゾン層を破壊する化学物質を段階的に削減するモントリオール議定書を採択しました。
1990年代には、バーゼル条約によって開発途上国において有害廃棄物を投棄する
とが禁止されました。そして昨年、多国間の取り組みによって、有鉛ガソリンの生産に終止符が打たれました。これにより健康が増進され、毎年120万を超える人々の早死にが防止される前進です。
今年と来年は、相互につながり合った環境危機に対応するために国際社会がマルチラテラリズム(多国間主義)の力を発揮する、より多くの機会があります。2030年までに自然の喪失を反転させるための生物多様性に関する新たな世界的枠組みを巡る交渉や、プラスチック汚染に対処する条約の制定などがあります。
国連は、こうした世界的な協力の取り組みを主導することに尽力しています。それは、前に進む唯一の道は、自然と共に歩むことであり、対立することではないからです。力を合わせれば、私たちは地球の存続のみならず、繁栄を確実にすることができるのです。私たちにとっての、かげがえのない地球(Only One Earth)なのですから。
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