⾧崎平和祈念式典に寄せる アントニオ・グテーレス国連事務総⾧メッセージ (⾧崎、2022 年 8 月 9 日)
プレスリリース 22-042-J 2022年08月09日
中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表が代読
⾧崎の皆様に、このメッセージをお送りすることができ、大変光栄に思います。
4 年前の今日、私はこの神聖な地を訪問する機会に恵まれました。
たった一発の大量破壊兵器によって引き起こされた完全な破壊に、慄然としました。そしてこの惨劇は決して繰り返してはならないとあらためて痛感いたしました。
また、想像を絶する喪失にもかかわらず、勇敢に核兵器の廃絶運動を続ける被爆者の皆様の姿に心を打たれました。
被爆者の皆様の平和と核軍縮へのメッセージは、現在の世界にとって、かつてないほどに力強く、重要なものです。私は、被爆者の皆様のメッセージがあらゆる場所に確実に届けられるよう全力を尽くすことを、ここに改めて誓います。
広島、⾧崎における核兵器の使用は、歴史上類を見ない人道上の大惨事を引き起こしました。
それは、人類が自らを絶滅に導きかねない新たな時代の幕開けを告げるものでした。
以来、77 年間、核による破滅の脅威は人類を悩ませてきました。
そして今、核戦争勃発の可能性が再び否定できなくなってしまいました。
ロシアによるウクライナ侵攻は、私たちが、今、常に、人類滅亡まであと一歩のところにいるということを思い出させます。
一方で、危険なレトリックと核の脅威は、それらが瀬戸際外交や威嚇による強制といった武器であることを示しています。
そしてまたしても、核兵器が安全を提供してくれるという誤った主張を耳にします。
真の安全保障は、核兵器によって達成されることは決してありません。対話や交渉、相互の尊重、国際法の遵守によって達成されるものです。
真の安全保障とは、核兵器のない世界を通じて、核の脅威を終わらせることを意味します。
多くの国が、核兵器禁止条約の署名や批准によって核軍縮への支持を表明しました。
しかし、国際社会全体が一丸となって、核兵器の使用の禁止を強固なものにしていく必要があります。全世界の核兵器の数を減らし、核による破壊のリスクを減らすための緊急措置を取る必要があります。
核兵器不拡散条約は核軍縮体制の基盤を成すものです。
私は、現在ニューヨークで開かれているこの条約の運用検討会議に参加している締約国に対し、世界を正気な道に戻すために、この機会を捉えるよう要請します。
緊張が高まり信頼が低下している今、私たちは⾧崎の教訓を生かさなくてはなりません。
軍縮、和解、そして平和の追求によってのみ、前に進むことができます。
私たち皆のために。
2022 年 (令和4年) 8 月 9 日
国際連合事務総⾧ アントニオ・グテーレス
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