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『2021年 地球気候の現状に関するWMO報告書』の発表にあたってのアントニオ・グテーレス国連事務総長ビデオ・メッセージ(2022年5月18日)

プレスリリース pr22-046-J 2022年08月17日

本日発表された『2021年 地球気候の現状に関するWMO報告書』は、人類による気候崩壊への取り組みにおけるみじめな失敗を列挙しています。

海面上昇、海水温度の上昇、温室効果ガス濃度、海洋酸性化は、2021年に驚くべき過去最高値を記録しました。

世界の平均海水面は従来の2倍を超えるペースで上昇しており、これは主に、氷塊の失われる速度が上がったためです。

海洋の温暖化もまた、特に過去20年間で大きく進み、深層にまで拡大しています。

海洋の多くが、2021年のいずれかの時点で少なくとも1回の強い海洋熱波に見舞われました。

ペッテリ・ターラス教授と世界気象機関(WMO)の同僚たちが、その科学を解明するでしょう。

しかし私は、結論をお伝えします。

世界のエネルギー・システムは崩壊しており、私たちは気候変動による惨禍にますます近づいています。

化石燃料は、環境的にも経済的にも袋小路に入っています。

ウクライナでの戦争とそのエネルギー価格への直接的な影響は、新たな警鐘です。

持続可能な未来とは、再生可能な未来のただ一つです。

私たちの唯一の住み家を焼き尽くす前に、化石燃料による汚染を終わらせ、再生可能エネルギーへの移行を加速しなければなりません。

残り時間はありません。

1.5℃の目標を維持し、気候危機の最悪の影響を防ぐため、世界は2030年までに行動しなければなりません。

良いニュースは、命綱が私たちの目の前にあることです。

エネルギー・システムの転換は、すぐに着手可能な対策です。

風力や太陽光などの再生可能エネルギー技術はすぐに活用でき、ほとんどの場合、石炭や他の化石燃料よりも安価です。

風力エネルギーの費用は、この10年間で半分未満に下がりました。

太陽エネルギーと蓄電池の費用は、85%急減しました。

そして再生可能エネルギーへの投資により、化石燃料の3倍の雇用が創出されます。

一刻の猶予もありません。

本日、再生可能エネルギーへの移行を活性化させる5つの重要な行動を私が提案する理由はここにあります。

第一に、電池貯蔵などの再生可能エネルギー技術は、無償利用できる必須のグローバル公共財として扱わなければなりません。

迅速かつ公正な再生可能エネルギーへの移行のためには、知的財産に関する制約を含め、知識共有と技術移転に対する障壁を取り除くことが極めて重要です。

再生可能電気の貯蔵は、しばしばクリーン・エネルギーへの移行に対する最大の障壁として挙げられます。

したがって私は、迅速な革新と展開を目指す電池貯蔵における世界連合、つまり政府が主導して推進し、テクノロジー企業、製造業者、融資者をまとめる連合を呼びかけています。

第二に、再生可能エネルギー技術の重要部品・原材料の供給を確保し、規模を拡大し、多様化しなければなりません。

今日の再生可能エネルギー技術や原材料のサプライチェーンは、一握りの国に集中しています。

この大きな隔たりを埋めるまで、再生可能エネルギー時代の繁栄を迎えることはできません。

それには、協調した国際的な調整が必要です。

各国政府は、技能訓練、研究と革新、サプライチェーン構築へのインセンティブに投資しなければなりません。

第三に、各国政府は、再生可能エネルギーにおける公平な競争環境をつくるための枠組みを構築し、官僚機構を改革しなければなりません。

多くの国々のシステムは、未だに命取りの化石燃料に有利に働いています。

ギガワット級の再生可能エネルギー・プロジェクトが、官僚の形式主義、許可証、送電網接続によって停滞するという、障壁を解消しなければなりません。

私は各国政府に対し、投資家、開発者、消費者、生産者に確実性をもたらすように、太陽光発電と風力発電のプロジェクト承認を迅速化、合理化し、送電網を近代化し、1.5℃に合わせた野心的な再生可能エネルギー目標を設定するよう呼びかけます。

再生可能エネルギー政策は、市場リスクを軽減し、同セクターに投資を呼び込むための礎です。

第四に、各国政府は、貧しく、最も脆弱な立場に置かれた人々やコミュニティーを守るために、化石燃料への補助金を廃止しなければなりません。

石炭、石油、ガスは、日々毎分、約1,100万ドルの補助金を受けています。

毎年、各国政府は、化石燃料の価格を意図的に下げるために、再生可能エネルギーが受ける額の3倍を超える、約5,000億ドルをつぎ込んでいます。

人々が高いガソリン代に苦しむ一方で、石油産業やガス産業は、歪められた市場から数十億ドルをかき集めています。

こうした恥ずべきことは、止めなければなりません。

第五に、再生可能エネルギーへの官民投資を3倍に増やし、少なくとも年間4兆ドルとしなければなりません。

太陽光発電と風力発電の場合、生涯コストの80%を初期費用が占めます。これは今日行う大きな投資が、この先何年にもわたって大きな見返りをもたらすことを意味します。

しかし一部の開発途上国は、先進国の7倍の資金調達コストを支払っています。

私たちは、現在の資金不足を解消し、民間セクターが保有する数兆ドルを動員するために必要な仕組みを提供する、ブレンドファイナンスを必要としています。これは、調整されたリスク枠組みや、再生可能エネルギーへの融資を拡大するためのさらなる柔軟性の向上を意味します。

国際開発金融機関と開発金融機関の経営層と株主は、責任を負い、説明責任を果たさなければなりません。

私は、民間部門を含めた各機関が、遅くとも2024年までに融資ポートフォリオをパリ協定に完全に準拠させ、排出量が多く汚染度が高いすべての事業への融資を止めるよう呼びかけます。

これは、各機関の資産を創造的に使用し、再生可能エネルギーへの移行を加速することを含みます。

そして、技術的および政策的支援によるものも含めて、再生可能エネルギー・インフラへの十分な融資目標を設定することを意味します。

商業銀行と、国際金融システムのすべての組織が、化石燃料への投資を段階的に廃止しつつ、再生可能エネルギーへの投資を劇的に増加させる必要があります。

再生可能エネルギーは、真のエネルギー安全保障、安定した電力価格、持続可能な雇用機会へと続く唯一の道です。

私たちがともに行動すれば、再生可能エネルギーへの転換が、21世紀の一大平和プロジェクトとなる可能性があります。

あらゆる国、都市、市民、金融機関、会社、市民社会団体が、果たすべき役割を持っています。

しかし何よりも、今こそ官民のリーダーは、再生可能エネルギーを遠い未来のプロジェクトとして語るのを止める時です。

なぜなら、再生可能エネルギーなしでは、未来はないからです。

本日の報告書で明らかなように、今こそが、手遅れになる前に再生可能エネルギーへの移行を活性化させる時なのです。

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原文(English)はこちらをご覧ください。