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安全保障理事会での紛争と食料安全保障に関する事務総長発言 (ニューヨーク、2022年5月19日)

プレスリリース 22-050-J 2022年08月25日

議長、各国代表の皆様、

戦争が起こると、人々は飢餓に陥ります。

世界で栄養不良の状態にある人々の約60%は、紛争の影響を受ける地域で暮らしています。

どの国も無縁ではありません。4月に、世界食糧計画(国連WFP)とパートナーたちは、300万人以上のウクライナの人々に食料と現金を届けました。3月までは、ウクライナが世界に大量の食料を供給していました。

私は、安全保障理事会(安保理)の議長国としてこの重要な課題に焦点を当ててくれている米国政府に感謝します。

昨年、世界中で深刻な飢餓に苦しむ1億4,000万人の大多数が、わずか10カ国に住んでいました。アフガニスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、ハイチ、ナイジェリア、パキスタン、南スーダン、スーダン、シリア、イエメンです。

そのうち8カ国が、この安保理の議題に上っています。

安保理が紛争について議論するということは、間違いなく飢餓について議論することになります。

平和維持や政治ミッションに関して行う決断は、飢餓に関する決断です。

そして皆さんが合意に至らなければ、飢餓に陥っている人々が高い代償を払うのです。

議長、

最も基本的なレベルにおいて、武力紛争では、戦闘によって農場や工場が破壊され、人々から穀物を奪い、穀物の不足が生じ、物価が上昇し、飢餓が発生します。

今日、気候危機や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで高まった経済不安により、紛争の影響は増幅されています。

その結果、数十年をかけて得た飢餓に関する前進が後戻りしつつあります。

これは私自身が2週間前に、サヘル地域を訪問した際に目の当たりにしたことです。

例えばニジェールでは、過激派武装集団やマリとナイジェリアからの国境を越えた侵入に直面しています。

COVID-19のワクチン接種が完了しているのは人口のわずか6%です。ニジェールは、人間開発指数があらゆる国の中で最も低い一方、気候危機に脆弱な上位10カ国に入っています。

ニジェールでは深刻な食料不足に陥っている人々の数が、過去2年間で倍増しました。すぐに行動を起こさない限り、年内に400万人まで増加する可能性があります。

ニジェールとその近隣諸国は、平和、人道支援、気候変動の影響への適応、そして持続可能な開発との間の連携を強化する、大規模かつ協調的な国際的動員を緊急に必要としています。

各国代表の皆様、

この高まる危機への対応を支援するため、私は本日、国連が中央緊急対応基金(CERF)から3,000万ドルを拠出し、ニジェール、マリ、チャド、ブルキナファソにおける緊急の食料安全保障と栄養のニーズに応える用意があることを発表します。

しかし、これは大海の一滴にすぎません。

今回の措置により、CERFを通じてサヘル地域に供給される資金は、年初来でおよそ9,500万ドルに達します。

議長、

私は、過去40年間で最長の干ばつに見舞われている「アフリカの角」地域の食料安全保障の状況についても深く憂慮しています。

1,800万以上の人々が影響を受けており、国連WFPは、今後数カ月以内にソマリアで数百万人が飢饉に直面すると警鐘を鳴らしています。エチオピアとソマリアにおける食料安全保障の危機的状況は、継続する紛争と深刻な不安によって悪化しているのです。

議長、

世界では、43カ国の4,900万人がIPC4と呼ばれる緊急レベルの飢餓状態にあり、飢饉の一歩手前にいます。

言い換えれば、こうした人々は飢えに瀕しており、あらゆる手を尽くして生き延びようとしているのです。いつもながら、女性と女児が最も深刻な影響を受けており、これは人身売買や強制結婚、その他の虐待の割合が増えていることに表れています。

エチオピア、南スーダン、イエメン、マダガスカルの50万人以上がすでに、壊滅的あるいは飢饉状況を意味する、いわゆるIPCレベル5にあります。

ウクライナでの戦争が今、この世界的な飢餓の状況に恐るべき新たな局面を加えています。

ロシアによる近隣国への侵攻によって、ウクライナからの食料輸出は事実上停止しました。

主食の価格が最大30%上昇し、カメルーン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンなど、アフリカと中東にまたがる国々に暮らす人々を脅かしています。

私は前回の訪問時、セネガル、ニジェール、ナイジェリアのリーダーたちと、この極めて困難な状況について話し合いました。そして、私たちが人々や経済を壊滅させる恐れのある「究極の嵐」の瀬戸際にあることを確認しました。

国連の人道活動では、確かな成功の実績に裏打ちされた支援の準備を進めています。

人道機関とそのパートナーたちは昨年、南スーダンの6つの郡を飢饉の瀬戸際から引き戻すことに貢献しました。また、イエメンでは、過去6年以上に及ぶ紛争の最悪の結果を回避し、2021年には毎月1,000万人以上に食料支援を届けました。

しかし人道要員も、上昇する食料価格の影響に悩まされています。東アフリカでは、食料支援コストが過去1年間で平均65%増加しました。国連WFPはすでに、イエメンで飢餓に苦しむ800万人への支援の縮小を余儀なくされています。

議長、

私は、紛争と飢餓の致命的な関係を断ち切るために各国が直ちに取ることのできる4つの行動があると確信します。

第一に、紛争を終結させ、新たな紛争を回避し、持続的な平和を構築するための政治的解決策に投資することです。何よりも重要なこととして、ウクライナでの戦争を終わらせる必要があります。

私は、ウクライナやあらゆる場所での戦闘行為を停止し、平和を促進するために最善を尽くすことをすべての理事国に呼びかけます。

第二に、安保理決議2417に反映されている国際人道法は、食料、作物、家畜を含む、文民の生存に欠かせない物資を守らなければならないと規定しています。また、人道要員は、困窮している文民への妨害のないアクセスを確保しなければならないことも定めています。

安保理は、国際人道法の順守を要求し、違反がある場合は説明責任を追及する重要な役割を担っています。

私は、皆さんがその役割を果たすために最大限の行動を取るよう要請します。

第三に、食料不安、エネルギー、資金調達のリスクは相互に関連しており、はるかに大きな調整とリーダーシップを必要とします。

世界にはすべての人に十分な量の食料があります。問題は分配であり、これはウクライナでの戦争と深く関連しています。

私は3月に、データや分析を提供して解決策を提案する「食料、エネルギー、資金に関するグローバル危機対応グループ(GCRG)」を設置しました。

このグループは、すべての食料輸出規制を撤廃し、戦略備蓄を放出し、困窮している国々に余剰分を配分するよう、直ちに提言しました。

昨日の「行動呼びかけ」の閣僚会議で申し上げたように、いかなる世界の食料不安に対する意味のある解決策にも、ウクライナの農業生産、ロシアおよびベラルーシの食料・肥料生産を、戦争にかかわらず世界市場に再統合することが求められます。

国連は、ウクライナが列車だけでなく黒海経由で食料を輸出できるようにし、ロシアの食料・肥料生産を制限なく世界市場に届けられるようにする包括案の模索に取り組んでいます。

これには、すべての関係国の善意が必要です。

第四に、ドナー国は人道アピールに最大限の資金を拠出しなければなりません。

2022年もほぼ半ばにさしかかりましたが、国連のグローバル人道対応計画に拠出された資金は8%に留まっています。

世界的に見れば、これは極めてわずかな額です。私は、ウクライナ関連で見せているのと同じ寛容さを示すことを、すべての国に要請します。

政府開発援助の必要性は、かつてないほど高まっています。世界が大規模な飢餓の瀬戸際にある中、援助を他の優先事項に転用するという選択肢はありません。

実際、紛争と飢餓には深いつながりがあり、それは寛容さが単なる利他的行為に留まらないことを意味しています。

飢餓に陥っている人々に食料を届けることは、世界の平和と安全に投資することなのです。

議長、

この豊かな世界において、私は、子どもや女性、そして男性が、一人たりとも飢餓で亡くなることを決して容認できません。

理事国もまた、そうあるべきです。

ありがとうございました。

* *** *

原文(English)はこちらをご覧ください。