報告書『科学の下で団結を2022』発表に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長ビデオ・メッセージ(2022年9月13日)
プレスリリース 22-055-J 2022年09月22日
地球の気候は、急速に温暖化が進んでいます。
洪水、干ばつ、熱波、極端な暴風雨、山火事が一層深刻化し、これまでにない恐るべき頻度で記録を塗り替えています。
ヨーロッパでの熱波。
パキスタンでの大規模な洪水。
中国、「アフリカの角」地域、米国で長期化する深刻な干ばつ。
こうした災害がこれまでにない規模で起きているのは、自然なことではありません。
人類が化石燃料に中毒的に依存してきた代償なのです。
気象、気候および水関連の災害の発生件数は、過去50年間で5倍に増えました。
1日あたりの損害額は、2億ドル以上に上ります。
今年の『科学の下で団結を(United in Science)』報告書から、気候変動による被害が破壊における未知の領域に向かっていることが明らかになりました。
しかし、症状が急速に悪化しているにもかかわらず、私たちは化石燃料への依存を年々強めています。
治療法を知っているにもかかわらずです。
指導者たちは、世界全体の気温上昇を1.5℃に抑え、気候変動に対するレジリエンス(強靱性)を構築することを、パリ協定で約束しました。
今年の『科学の下での団結を』報告書は、私たちが依然として軌道から大きく外れていることを浮き彫りにしています。
気候行動は鍵となる分野において停滞し、最も貧しい国々や人々が最も大きな影響を受けています。
しかし、影響を受けない国はありません。
報告書は、気候変動への重要な対応の一方であるレジリエンスの構築が無視されているという、恥ずべき事実を思い起こさせます。
先進国が適応について真摯に受け止めず、開発途上国を支援するという自らのコミットメントを軽視しているのは、恥ずべきことです。
グラスゴーでの決定により、先進国は新たな適応資金として、毎年全体で400億ドルを拠出することが求められています。
出発点として、これを完全に履行しなければなりません。
しかし、それだけでは明らかに不十分です。
適応資金のニーズは、2030年までに少なくとも年間3,000億ドルに増加する見込みです。
私はパキスタンから戻ったばかりですが、同国で莫大なニーズがあることを目の当たりにしました。
少なくとも、気候変動対策資金全体の50%を適応対策に割り当てなければなりません。
これは道義的な責務ですが、常識の問題でもあります。
適応への投資は、ドナー国にも脆弱な立場に置かれた国々や人々にも、コミュニティーにも、多大な利益をもたらします。
しかし、大半の多国間開発銀行の取り組みは十分ではありません。
G20諸国は、これらの銀行への出資国です。
必要な変革を推し進める責任は、これらの国々にあります。
早期警報が人命を救うことも明らかです。
地球上のあらゆる人々が5年以内に早期警報を利用できるよう国連が取り組むと私が申し上げた理由は、ここにあります。
世界気象機関(WMO)が主導的な役割を担います。
多くの開発途上国は、この不可欠なサービスを依然利用できていません。
私たちは、再生可能エネルギー革命を起こし、炭素排出量を劇的に削減する必要もあります。
軌道に乗るまでは、すべての国々が毎年、自国の気候野心を高めなければなりません。
世界の排出量の80%を占めるG20が先導しなければなりません。
石炭火力発電所の新設があってはなりません。経済協力開発機構(OECD)諸国は2030年までに、その他すべての国々は2040年までに、石炭の利用を段階的に廃止しなければなりません。
化石燃料が野放しにされている現状に、今こそ終止符を打たなければなりません。
このままでは、気候混乱と惨禍が永遠に続くことになります。
きょう私は指導者たちに、この憂慮すべき報告書に掲載された事実に、注意を払うよう求めます。
私たちは、科学の下に団結しなければなりません。
私たちは、約束を行動に変えなければなりません。
今すぐにです。
* *** *
原文(English)はこちらをご覧ください。