国連行動計画「すべての人に早期警報システムを」の発表にあたって アントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(シャルム・エル・シェイク、2022年11月7日)
プレスリリース 22-067-J 2022年11月11日
各国代表の方々、友人の皆様、
過去8年間の気温は観測史上、最高を記録しました。
気候崩壊はすでに、自然災害の規模を劇的に増大させています。
現行の気候政策では、今世紀末までに世界の気温が2.8°C上昇するという、悲惨な事態を招くことになります。
私たちの共通の目標は、気温上昇を1.5°Cに抑えることです。
しかし、温室効果ガスの排出量は今なお増え続けています。
気候はすでに劇的に変化しています。
人類の半数が危険地域にいます。
気候変動のホットスポットにある脆弱なコミュニティーは、事前に警報を受けるすべもなく、連鎖的な気候関連災害に無防備なところを襲われています。
アフリカ、南アジア、中南米の人々や小島嶼国の住民は、気候関連災害で亡くなる可能性が15倍高くなっています。
これらの災害は、戦争によって生まれる避難民の3倍以上の人々を、住まいから追いやっています。
そして、状況はさらに悪化しています。
気候危機に最も寄与していない人々が、最も危険にさらされ、最も保護されていないのです。
今年3月に私が、5年以内に地球上のすべての人が早期警報システムによって保護されるようにするという目標を発表した理由は、ここにあります。
誰もが早期警報システムにより保護されることで、人命を救い、大きな経済的利益をもたらすことができます。
迫り来る危険事象を24時間前に通知するだけで、損害を30パーセント軽減することが可能です。
しかし、世界各地の脆弱なコミュニティーは、危険な気象現象が近づいていることを知るすべがありません。
人命を救い、生計を守るために行動する手段もありません。
世界の半分の地域には、マルチハザードに対応した早期警報システムがありません。
気候変動へのレジリエンス(強靱性)対策や地域の防災計画がある地域は、さらに少ないのです。
早期警報システムの普及が限定的な国では、普及率の高い国に比べ、災害による死亡率が8倍高くなります。
本日発表された「行動計画」は、この誤りを正し、生命と暮らしを守るための道筋を示すものです。
国連システム、各国政府、パートナーは、政策、科学技術、そして資金面の行動を通じて、5年以内に目標を達成するために協力していきます。
約31億ドルの初期投資によって、早期警報システムの4つの重要な柱にあるギャップに対処することが可能になります。
その4つとは、災害リスクの把握、
観測と予測、
迅速な伝達、
そして、備えと対応能力です。
この計画を効果的に実施するため、私は世界気象機関(WMO)と国連防災機関(UNDRR)に対して、共同で諮問委員会を率いるよう要請しました。
同委員会は、すでに早期警報システムを持つ国々に戦略的なガイダンスを提供するとともに、脆弱な国々にシステムを構築して損失と損害を軽減する手助けをします。
進捗状況は、年に1度報告する予定です。
この「行動計画」に密接に協力した多くの国連機関やパートナー、そしてこの計画の実施に不可欠となるすべての方々に感謝します。
私は、すべての政府、金融機関、市民社会に対し、持続可能な開発目標(SDGs)とパリ協定の達成を加速させるため、この取り組みを支援するよう求めます。
ありがとうございました。
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