長崎平和祈念式典に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(長崎、2023 年8月9日)
プレスリリース 23-043-J 2023年08月09日
この式典は、78年前の長崎への原爆投下という、人類にとって比類なき恐怖の瞬間を思い起こす大切な場です。
80年近くが経った今日でも、決して色褪せることのない記憶と共に、犠牲になられた方々をお悼み申し上げます。
私たちは、この街と広島にもたらされた恐ろしい惨劇を覚えています。
長崎の人々の復興に向けた揺るぎない強さと忍耐力に心から敬意を表します。
そして、勇敢な被爆者の皆様を称えます。彼らの悲惨な出来事を物語る証言は、非人道的な兵器のない世界を実現しなければならないということを、永遠に思い起こさせるものです。
私は国連事務総長として、被爆者の皆様の名において、そして1945年にこの地で起こったことを心に刻み、核兵器廃絶を国連における軍縮の最重要課題であると宣言しました。
この地で起こったような荒廃を二度と起こしてはなりません。
しかしながら、1945年に起きた恐ろしい惨劇の教訓を以ってしても、人類は今、新たな軍拡競争に直面しています。核兵器が威嚇と強制の道具として使用されています。
死の兵器である核兵器が国家安全保障戦略の中核に据えられ、より速く、より正確で、そしてより探知されにくいものに改良されつつあります。
対立と不信が国々や地域を引き裂き、世界の分断が進んでいる中で、このような危険な事態が起こっているのです。
恐ろしい核兵器が使用される危険性が、冷戦以来かつてないほどまでに高まっています。
このような脅威に直面している今、国際社会は一つにならなければなりません。
核兵器のいかなる使用も、断固として、容認することはできません。
私たちは、核保有国同士が、より危険な兵器を作り出そうと繰り広げている軍拡競争を、黙って見ているつもりはありません。
この軍拡競争に歯止めをかけるべく、私は今年7月に「新たな平和への課題」という政策ブリーフを発表し、軍縮をその中心に据えました。
この「新たな平和への課題」は、加盟国に対し、核兵器のない世界を追求し、核兵器の使用と拡散に反対する世界的な規範を強化するよう、緊急に要請するものです。
核兵器が完全に廃絶されるまで、核保有国は決して核を使用しないことを約束しなくてはなりません。
そして、核のリスクを排除する唯一の方法は、核兵器を廃絶することです。
国連は、核兵器不拡散条約や核兵器禁止条約を通じて、国際的な核軍縮・核不拡散体制の強化に向け、世界の指導者たちと引き続き協力していきます。
私は、被爆者の方々の声と証言がこれからも世界に届けられるよう、全力を尽くすことを、ここに改めて誓います。
私は、未来の指導者、意思決定者となる若い世代の皆様に呼びかけます。被爆者の方々の想いを引き継いで前進させてください。
世界は、この地、長崎で起こったことを決して忘れてはなりません。
核兵器による破滅の脅威を、この世から消し去らなくてはなりません。
もう二度と、長崎の惨禍を繰り返さないでください。
もう二度と、広島の悲劇を引き起こさないでください。
国連は、この重要な取り組みにおいて、長崎、そして日本の皆様と協力できることを期待しています。
2023年(令和5年)8月9日
国際連合事務総長 アントニオ・グテーレス
* *** *