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持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム* におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言 (ニューヨーク、2023年9月18日)

プレスリリース 23-053-J 2023年09月22日

議長、各国代表の方々、皆様、

8年前、加盟国は持続可能な開発目標(SDGs)を採択するためにこの総会議場に集いました。

2階席で希望の青いランプを手にした193人の若者をはじめ世界が見守る中で、皆様は厳粛な約束をしました。

すべての人々にとって、健康、進歩、機会がある世界を築くという約束。

誰一人取り残さないという約束。

そして、そのための対価を払うという約束。

それは、この議場でくつろぎながら、外交官同士が交わした約束ではありません。

それは常に、人々に向けた約束でした。

貧困という砥石車の下で押しつぶされている人々。

豊かな世界にありながら、餓えに苦しんでいる人々。

教室の中に座ることが叶わない子どもたち。

より良い生活を求め、紛争を逃れる家族たち。

予防可能な疾病によって我が子が命を落とす様を、なすすべもなく見守る親たち。

仕事や、必要な時のセーフティーネットを見つけられずに、希望を失う人々。

気候変動によって、文字通り破滅の入り口に立たされているコミュニティー。

つまり、SDGsとは、単なる目標の一覧表ではありません。

あらゆる場所の人々に、希望や夢、権利や期待を届けるものなのです。

そして、今年で75年目を迎える世界人権宣言の下で、私たちが自らの義務を果たすための最も確かな道筋を与えるものです。

しかし今日、目標のわずか15%しか軌道に乗っておらず、多くは逆行しています。

“誰一人取り残さない” どころか、私たちはSDGsを置き去りにするリスクを冒しています。

各国代表の皆様、SDGsはグローバルな救済計画を必要としているのです。

私は、今日ここで議論されている詳細かつ多岐にわたる政治宣言の草稿に、大いに励まされています。とりわけ、開発途上国がSDGsの前進のために必要としている燃料、すなわち資金へのアクセスを改善することに対するコミットメントにです。

その中には、少なくとも年間5,000億ドルを拠出する「SDG刺激策」への明確な支持とともに、支払い猶予、融資期間の延長、利率の軽減を支える効果的な債務救済の仕組みが含まれています。

また、開発途上国に恩恵をもたらすために、国際金融機関が民間資金を利用可能な利率で大規模に活用できるよう、同機関への新たな資本の注入とビジネスモデルの変更の呼びかけが含まれています。

そして私が、時代遅れで、機能不全に陥っており、不公正なものだと考える国際金融アーキテクチャを改革する必要性に対する支持が含まれています。

これは、SDGsの前進を加速させる打開策となり得ます。

私は従前より、新たなブレトンウッズ体制の構築と、来年9月に開催される「未来サミット」までに実践的な解決策を策定することを呼びかけてきました。

しかし各国は、SDGsを再び軌道に乗せるべく、今すぐに行動することができます。

企業や金融機関、地方自治体、国連の開発システム、その他とともに、皆様はこれまで、早急な移行が必要とされる6つの目標分野を支援するために、影響力の大きいイニシアチブとともに方向性を示してきました。

第1に、私たちは飢餓に対して行動を起こさねばなりません。

この豊かな世界にあって、飢餓が残っていることは人類にとって衝撃的な汚点であり、甚大な人権侵害でもあります。

この時代に、何百万もの人々が餓えに苦しんでいることは、私たち一人ひとりに対する告発です。

7月に行われた「国連食料システムサミット」のストックテイクに基づき、私たちは、すべての人々が健康的で栄養価の高い食事にアクセスできるよう、各国の食料システムの変革を支援するために、資金、科学、データ、イノベーション、そして政策およびガバナンスへの支援を組織化しています。

第2に、再生可能エネルギーへの移行が、十分なスピードで行われていません。

私たちは、各国政府、企業、国際機関が力を合わせて脱炭素エネルギーシステムに投資し、化石燃料から再生可能エネルギーへの公正で公平な移行を実現する、新たな「エネルギー・コンパクト」を提案しています。

第3に、デジタル化がもたらす恩恵と機会が、十分に広く行き渡っていません。

この格差を埋めるため、私たちは100カ国でデジタル・トランスフォーメーションを促進するイニシアチブを立ち上げ、より強力なテクノロジー能力、より良いガバナンス、革新的な資金調達を支援しています。

国連が提案した「グローバル・デジタル・コンパクト」もまた、辺境のコミュニティーの学生たちを含めたすべての人々にインターネットへのアクセスを提供する、安全なデジタル・システムを各国が構築する一助となっています。

第4に、あまりに多くの子どもや若者たちが、質の低い教育、あるいは教育の完全な欠如の犠牲になっています。

私たちは、幼児期から成人期までの生涯学習も含め、質の高い教育に根差した真の「学びの社会」を構築することで、デジタル格差を埋めるとともに、その道筋のすべての段階において教師たちを支えねばなりません。

新たに“フロントランナー国”として誕生したグループは、世界中で投資を拡大させ、教育システムを変革する上で先頭に立っています。

第5に、人々はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会的保護を必要としています。

各国政府ならびに民間セクターとの協力の下、国連の「公正な移行のための雇用および社会的保護のグローバル・アクセラレーター」は、特にグリーン、ケア、デジタルの各経済分野で新たに4億人分のディーセント・ワークを創出し、社会的保護の対象を40億人超に拡大することを目指しています。社会的保護に対する投資は、大幅に増額されなければなりません。

そして第6に、自然との戦争を終わらせなければなりません。

私たちは、気候変動、汚染、生物多様性の喪失という、地球の三重の危機を終わらせなければなりません。

私たちは、経済政策を変革する方法を探し、すべての意思決定の中心に自然と生物多様性を据えるために、“チャンピオン国”のグループをつくっています。

これらのすべての移行に共通して必要なのは、完全なジェンダー平等の実現です。

差別を終わらせ、あらゆる場に女性と女児たちの席を確保し、ジェンダーに根差した暴力という惨害に終止符を打つべき時は、とうの昔に迎えています。

各国代表の皆様、

SDGsの達成期限へ向かう中間地点にある中、世界の目は、再び皆様に向けられています。

この週末には、若者や市民社会団体が、迅速な行動を求めて国連まで来たり、世界各地のコミュニティーでデモ行進をしたりしています。

今こそ、皆様がその声を受け取っていると証明する時です。

私たちは、勝つことができるのです。

今すぐに行動を起こすなら。

ともに行動するのなら。

約束を交わした何十億もの人々の希望、夢、未来を、その手に委ねられた皆様が、約束を守るのなら。

今こそ、その時なのです。

* *** *

* 今フォーラムの通称は「SDGサミット」です。

原文(English)はこちらをご覧ください。