南極視察に関する記者ブリーフィングにおけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2023年11月27日)
プレスリリース 23-068-J 2023年12月01日
私は、「眠れる巨人」、南極大陸から戻ったばかりです。
気候カオス(大混乱)によって目覚めつつある巨人です。
南極大陸とグリーンランドは、1990年代初頭に比べ、優に3倍を超える速さで融解しています。
南極の氷の上に立ち、いかに急速にその氷が消えつつあるのかを科学者たちからじかに聞くと、深い衝撃を受けます。
最新のデータによると、今年9月の南極の海氷は、この時期の平均値と比べて150万平方キロメートル縮小しており、それはおよそポルトガル、スペイン、フランス、ドイツを足した面積に相当します。
そして今年、南極の海氷は過去最少を記録しています。
これは、私たち全員に関わることです。
南極で起きていることは、南極だけにとどまる問題ではありません。
私たちは、相互につながり合った世界に生きているのです。
海氷の融解は、海面上昇を意味します。そしてそれは、世界中の海岸沿いにあるコミュニティーの、生命と生活を直接的に危険にさらすのです。
洪水や塩水侵入が作物や飲料水を脅かし、食料と水の安全保障に対する脅威となります。
家屋には、もはや保険をかけることができません。
沿岸都市や小島嶼国全体が、海に沈む危機にあります。
そして、必要不可欠な自然システムが、崩壊する危機にさらされています。
南極大陸周辺の海水の流れに乗って、熱、養分、炭素を世界中に運び、気候や地域の天候パターンを調整するのに役立っています。
しかし、南極海が温暖化し、その海水密度が低下するにつれて、その(海流の循環)システムが減速しているのです。更なる減速、あるいは完全な崩壊は、大惨事をもたらすでしょう。
こうしたすべての破壊の原因は、明らかです。
化石燃料による汚染が、地球を覆い、温暖化を招いているのです。
これを軌道修正しなければ、私たちは、今世紀末までの世界の気温上昇が3℃となる破滅的な状況へと向かってしまいます。
海面温度は、すでに記録的な高さになっています。
そうならないことを強く願いますが、もし私たちが今のまま変わらなければ、グリーンランド氷床と西南極氷床は、壊滅的な臨界点を超えてしまうでしょう。
それだけでも、最終的に約10メートルの海面上昇をもたらすことになります。
私たちは、破滅のサイクルに陥っています。
氷は太陽光を反射します。氷が消滅すれば、より多くの熱が大気中に吸収されるのです。
それは温暖化がさらに進むことを意味し、世界中により多くの嵐、洪水、火災、干ばつをもたらすのです。そしてさらなる海氷の融解ももたらします。氷が減少すれば、温暖化はより加速するのです。
今週後半(11月30日)に始まる気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)において、指導者たちはこのサイクルを打破しなければなりません。
解決策は、よく知られていることです。
指導者たちは、世界の気温上昇を1.5℃に抑え、気候カオスから人々を守り、化石燃料の時代を終わらせるべく行動しなければなりません。
私たちは、2030年までに再生可能エネルギーを3倍に増やし、エネルギー効率を2倍に上げ、すべての人々にクリーンエネルギーをもたらす、グローバルなコミットメントを必要としています。
気温上昇を1.5℃に抑えるという目標に沿った時間軸で化石燃料の使用を段階的に廃止するための、明確かつ信頼のおける約束が必要なのです。
そして、極度の気候変動から人々を守るために、適応および損失と損害に向けた投資を世界中で飛躍的に増やすという、気候正義が必要です。
行動を起こせ、南極は、そう叫んでいます。
私は、南極大陸で起きている変化について私たちの理解を拡げてくれる南極、および世界中の数千人の科学者たちに敬意を表します。
科学者たちは、人間の知恵の証しであり、国際協力がもたらす計り知れない恩恵の証しなのです。
指導者たちは、世界中の人々が持っている持続可能な地球に向けた希望を、融解させてはなりません。
COP28を意義あるものにしなければならないのです。
ありがとうございました。
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