記者会見におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2023年7月27日)
プレスリリース 23-074-J 2023年07月27日
おはようございます。人類は猛暑による窮地に立たされています。本日、世界気象機関(WMO)と欧州委員会のコペルニクス気候変動サービスは、7月が人類の歴史において観測史上最も暑い月となることを裏付ける、公式なデータを発表する予定です。これは今月末を待たずとも明らかです。今後数日間にミニ氷河期でも来ない限り、7月はこれまでの観測記録を全面的に塗り替えるでしょう。
本日発表されるデータによれば、7月はすでに、観測史上最も暑い3週間、観測史上最も暑い3日間、そしてこの時期の過去最高の海水温を記録しています。その影響は明らかであり、悲劇的です。子どもたちはモンスーンの雨に流され、家族は火災から逃げ惑い、労働者たちは焼け付くような暑さの中で倒れています。
北米、アジア、アフリカ、ヨーロッパの大部分にとって、この天候は狂った夏です。地球全体にとっては、災害です。そして科学者にとっては、明白です。つまり、その責任は人類にあるのです。これらはいずれも、これまでの予測や度重なる警告と完全に一致しています。唯一の驚きは、その変化の速さです。気候変動とは、今ここにあり、まさに恐怖です。そしてこれは、始まりにすぎません。
地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです。呼吸ができないほどの空気。耐え難い高温。化石燃料から得る利益と気候変動に対する不作為のレベルを受け入れることは、到底できません。指導者たちは先導しなければなりません。もはや躊躇は要りません。言い訳も不要です。誰かが先に動くのを待つのは、もうやめましょう。そんな時間は、もうありません。
世界全体の気温上昇を1.5℃に抑え、気候変動の最悪の事態を回避することは、まだ可能です。しかしそれは、劇的かつ即時の気候行動を講じてこそです。いくつかの前進は見られます。再生可能エネルギーの力強い展開、海運などの部門での前向きな一歩。しかしいずれも、進展が不十分で、スピードが不足しています。加速度的に上昇する気温に対しては、行動を加速させることが必要です。
この先、非常に重要な機会がいくつかあります。アフリカ気候サミット、G20サミット、国連気候野心サミット、そして国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)です。しかし、指導者たち、とりわけ世界の排出量の80%に責任を負うG20諸国は、気候行動と気候正義を強化しなければなりません。それは、具体的にはどのようなことでしょうか。
第一に、「排出量」です。G20諸国は、野心的な排出削減目標を国ごとに新たに設定する必要があります。そしてすべての国が、私が提唱した「気候連帯協定」と「アクセラレーション・アジェンダ」に従って行動を起こすことが必要です。先進国は2040年にできるだけ近い時期に、新興経済国は先進国から支援を受けながら2050年にできるだけ近い時期に、排出量正味ゼロを達成することを約束できるよう、行動を早送りさせるのです。
そして、すべての当事者が団結して、化石燃料から再生可能エネルギーに向けた公正で公平な移行を加速させなければなりません。石油・ガスの拡大や、新たな石炭・石油・ガスへの資金拠出・許認可をやめるのです。また、経済協力開発機構(OECD)加盟国は2030年までに、その他の国は2040年までに石炭から撤退するための、信頼できる計画を提示することも必要です。再生可能エネルギーにおける野心的な目標は、1.5℃の上限に整合したものでなければなりません。そして、地球上のあらゆる人々に手ごろな価格の電力を供給すべく取り組む中、排出量正味ゼロの電力を先進国は2035年までに、その他の国々は2040年までに実現しなければなりません。
政府以外の指導者たちによる行動も必要です。私は企業、都市、地域、金融機関に対し、「ハイレベル専門家グループ」が提示した国連の排出量正味ゼロ基準に完全に整合する、信頼できる移行計画を携えて気候野心サミットに参加するよう要請します。
金融機関は、化石燃料への融資、引受、投資をやめ、代わりに再生可能エネルギーへと移行しなければなりません。そして化石燃料企業は、バリューチェーン全体の詳細な移行計画を含めた、クリーン・エネルギーへの移行に向けた計画を立てねばなりません。グリーンウォッシング(見せかけだけの環境配慮)はもう要りません。ごまかしも要りません。排出量正味ゼロに向けた提携を妨害するために独占禁止法を曲解して乱用するのも、もうやめましょう。
第二に、「適応」です。異常気象は、ニューノーマル(新常態)になりつつあります。すべての国がそれに伴う、焼け付くような暑さ、命を脅かす洪水、暴風雨、干ばつ、猛火に対応し、国民を守らねばなりません。最前線にいる国々、つまりこの危機に最も寄与していないにもかかわらず、危機に対処する資源が最も少ない国々が、対応と国民の保護に必要な支援を受けられるようにしなければなりません。
今こそ、何百万もの人命を気候(変動による殺りく)から救うべく、適応に向けた投資を世界的に急拡大させる時です。そのためには、脆弱な立場に置かれた開発途上国の優先課題や計画をめぐり、前例のない協調が求められます。気候変動対策資金の少なくとも半分を適応に充てるための第一歩として、先進国は、2025年までに適応資金を倍増させる、明確かつ信頼できるロードマップを示さなければなりません。私たちが昨年立ち上げた行動計画を実施することで、地球上のすべての人々が2027年までに早期警報システムによってカバーされなければなりません。そして各国が、適応に関する国際的な行動と支援を動員するための、一連の世界的な目標を検討すべきです。
それが行動の加速に向けた第三の分野、「資金提供」へとつながります。国際的な気候変動対策資金に関してなされた約束は、守られなければなりません。先進国は、気候変動対策支援のために年間1,000億ドルを開発途上国に提供し、「緑の気候基金」を十分に補充する約束を守らねばなりません。私は、目下のところG7諸国のうちカナダとドイツの2カ国しか資金補充の誓約を履行してないことを懸念しています。各国はまた、今年のCOP28で「損失と損害基金」も稼働させなければなりません。もはや遅らせることはできず、言い訳も要りません。
さらに広く見渡せば、多くの銀行、投資家、その他の金融関係者が、汚染者たちに報酬を与え、地球を破壊させ続けています。気候行動の加速を後押しするために、グローバル金融システムを軌道修正する必要があります。これには、カーボンプライシングや、国際金融機関に対してその事業モデルやリスクに対するアプローチを全面的に見直すよう促していくことが含まれます。
国際金融機関は、その基金を活用し、より多くの民間資金を開発途上国向けに適正な利率で動員して、再生可能エネルギー、適応、損失と損害に対する資金提供を拡大させる必要があります。これらすべての分野において、政府、市民社会、企業などが、連携して職務を果たすことが必要です。私は、9月に開催される気候野心サミットのために、「アクセラレーション・アジェンダ」の「ファースト・ムーバーおよびドゥーワー」(先行者および実行者)たちをニューヨークに迎えるのを楽しみにしています。また、指導者たちが、私たちの眼前の事実にどう対処するのかを聞くことも楽しみにしています。それが(このサミットの)参加費です。
エビデンスは至る所にあります。人類は破壊を解き放ったのです。しかし、これにより絶望を駆り立ててはなりません。行動を駆り立てるのです。最悪の事態を食い止めることは、まだできます。しかしそのためには、「燃えるような暑さの一年」を「燃えるような野心の一年」に変えていかねばなりません。そして、気候行動を今すぐ加速させなければならないのです。
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