2024年の優先課題に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長の総会発言(ニューヨーク、2024年2月7日)
プレスリリース 23-015-J 2024年03月22日
総会議長、各国代表の方々、皆様、
はじめに、2024年が皆様にとって良い年となりますように。
皆様とご家族が健康で幸せで、そして世界が平和であるよう祈ります。
国連は、平和を希求するために設立されました。
平和こそ、私たちの存在意義です。
しかし、今日の世界の様相を見渡して、最も著しく欠けているもの、それが平和です。
それは、あらゆる側面における平和です。
紛争が激化し、地政学的分断が深まる中で、私たちの世界の平和が脅かされています。
分極化が進み、人権が踏みにじられ、コミュニティー内の平和が損なわれています。
不平等が爆発的に広がり、「正義ある平和」が打ち砕かれています。
化石燃料に依存し続けている私たちは、「自然との和解」という概念を見せかけだけのものにしています。
地球上の至る所で、そしてさまざまな問題にまたがり、平和という(パズルの)ピースが欠けているのです。
人々は、平和と安全を求めています。
平和と尊厳を求めています。
そしてありのままに言えば、平和と平穏を望んでいるのです。
今日の私たちの世界には、あまりに多くの怒りや憎しみ、ノイズが存在しています。
毎日、至る所で、それはまさに戦争です。
記録的な数の民間人を殺害し、重傷を負わせている、恐ろしい紛争。
言葉の戦争。領土をめぐる紛争。文化をめぐる戦争。
人々を分断することで支持者を増やすという、歪んだ計算がはびこっています。
これは、人類の半数が投票に行く年においては、特に問題です。
一方で、ますます多くの家族が取り残されています。
ますます多くの国々が、債務に苦しんでいます。
ますます多くの人々が、制度や政治プロセスへの信頼を失っています。
平和とは、これらの相互につながり合った危機から脱するための道です。
平和とは、崇高なビジョンを超えたものです。
平和とは、鬨(とき)の声であり、行動を求める声です。
私たちの義務は、あらゆる側面で平和のために、ともに行動することです。
皆様、
この激動の時代にあっても、希望を持てる理由があります。
SDGサミットでは、世界の指導者たちが「SDG刺激策」と、国際金融アーキテクチャの大規模な改革を支持しました。
各国はまた、汚染と乱獲から貴重な海洋生物多様性を保護するための公海条約でも、昨年合意に達しています。
私たちは、気候正義についても幾分前進しています。「損失と損害基金」は、十分な財源が確保されれば、脆弱な立場に置かれた国々が異常気象の影響から復興する助けとなるでしょう。
安全保障理事会は、私たちが長年要請してきた、アフリカ連合(AU)をはじめとする地域パートナーが主導する平和執行とテロ対策活動を、安全保障理事会のマンデートと分担金の拠出をもって支援することに合意しました。
新設された「人工知能(AI)に関するハイレベル諮問機関」は、生活のあらゆる分野に広がるこのテクノロジーが私たち皆にとって有益となるにはどうすれば良いかを話し合う、グローバルな対話を開始しました。
今後に目を向けると、9月に開催される「未来サミット」では、これからのマルチラテラリズム(多国間主義)を形成する機会があります。
そして世界は、次のことを切実に必要としています。
安全保障理事会(安保理)の改革。
国際金融システムの変革。
意思決定における、若者の有意義な参加。
新たなテクノロジーの恩恵を最大化させ、リスクを最小化させるためのグローバル・デジタル・コンパクト。
複雑に絡み合う世界的ショックへの国際的な対応を向上させる、緊急プラットフォーム。
私は、21世紀という時代とますます多極化する世界にふさわしい、より効果的で包摂的な刷新されたマルチラテラリズムを構築するための、真に力強い取り組みを目にしています。
そして皆さんは、この重要な取り組みの中核にいるのです。
そして平和が、私たちのすべての行動の中心にあるのです。
皆様、
世界各地の紛争に巻き込まれている何百万もの人々にとって、日々の生活は、恐ろしくも毎日続く、空腹を伴う地獄です。
記録的な数の人々が、安全を求め、住処を後にしています。
人々は、平和を求めて大声で叫んでいます。
私たちはその声を聞き、そして行動しなければなりません。
短期的には、世界中で平和を推し進め続けねばなりません。
ガザの状況は私たち皆の良心が負った膿んだ傷であり、地域全体を脅かします。
昨年10月7日にハマスがイスラエルに対して行った恐ろしい攻撃は、何をもっても正当化できるものではありません。
パレスチナの人々に対する集団的懲罰もまた、決して正当化できる理由はありません。
しかしイスラエルの軍事作戦は、私が事務総長に就任して以来、例を見ない規模と速度で、ガザに破壊と死をもたらしています。
私はとりわけ、数十万のパレスチナ人たちが必死に安全を求めて殺到しているラファに対してイスラエル軍が次の照準を定めようとしている報道について、危機感を募らせています。
そうした行動を取れば、すでに人道上の悪夢となっているものが、さらに急激に悪化させ、地域に計り知れない影響をもたらすでしょう。
即時の人道的停戦と、即時の人質全員の無条件解放を行うべき時です。
その後速やかに、国連決議、国際法、そして従来の合意に基づいて、2国家共存という解決に向けた不可逆的な行動へとつなげなければなりません。
ウクライナについて、私は、ウクライナとロシア、そして世界のために、国連憲章と国際法に沿った、公正かつ持続的な平和に向けた呼びかけを繰り返します。
サヘル一帯の国々ではテロが急増しており、市民は悲惨な代償を払っています。この困難な時期に、国連は、サヘル地域の人々への支援の手を緩めることはありません。
アフリカの角では、アル・シャバブとの闘いにおいて苦労して得られた前進を確固たるものとし、新たな危機を回避し、領土保全の基本原則を保つ上で、一致団結した行動が欠かせません。
スーダンでの戦闘では、それがさらに多くの人命を奪い、拡大してしまう前に、終結させねばなりません。
リビアでは停戦が続く中で、自由で公正な選挙を実施するという約束に始まる、持続的な平和と安定を、リビアの人々が享受してしかるべきです。
コンゴ民主共和国東部については、私はすべての武装グループに対し、武器を置くよう呼びかけるとともに、地域の指導者に対して対話を優先するよう要請します。
イエメンについては、すべての当事者に対して、平和への道筋に焦点を当てるとともに、航行の自由の原理に則り、紅海における緊張を緩和させるよう求めます。
ミャンマーについては、民主化への移行と民政復帰への道を早急に切り開く助けとなるよう、国際社会と地域社会が継続的に注意を払う必要があります。
ハイチでは無法状態が急拡大し、数百万人が深刻な食料不安に直面しています。多国籍治安支援ミッション(MSS)を遅滞なく展開する必要があり、私は、すべての障害が取り除かれるよう期待するとともに、加盟国に対しても必要な財政支援を行うよう要請します。
また西バルカン諸国では、依然として一部の指導者たちが、緊張とエスノナショナリズム的なレトリックをかき立てています。私はこの地域一帯に、和解、安定、経済的繁栄をもたらすような行動を求めます。
皆様、
もし各国が、国連憲章の定める義務を果たせば、あらゆる人々が有する、平和と尊厳のある生活を送る権利が保障されるでしょう。
しかし各国政府は、マルチラテラリズムの基本理念そのものを無視し、傷つけ、さらには説明責任を放棄しています。
世界平和に関わる問題のための主要なプラットフォームである安全保障理事会(安保理)が、地政学的分裂によって手詰まりとなっています。
安保理の分断は、これが初めてではありません。
しかし今回は、最悪です。
今日起きている機能不全は、より深刻で、より危険です。
冷戦時代は、確立されたメカニズムが、超大国同士の関係の管理に役立っていました。
今日の多極化した世界では、そうしたメカニズムが欠けています。
そして、世界が混沌の時代に突入しつつあります。
何をしても全く罰せられることのない、危険で予測不可能な乱闘という結果を私たちは目の当たりにしています。
数十年にわたる核軍縮を経て、各国は、核兵器を高速化させ、そのステルス性や精度を高めようと競い合っています。
新しい潜在的な紛争領域と戦争兵器が、防護柵もないままに新たに開発され、互いに殺し合い、人類自らを絶滅させる新たな方法を生み出しています。
紛争が増大するにつれ、人道上のニーズが世界的にこれまでになく高まっているものの、資金調達はそれに追いついていません。
人道支援に携わる人々は、世界中で命を救い、苦しみを和らげています。
彼らの英雄的な努力と、直近ではガザにおいて悲劇的な形で、究極の犠牲を払った人道支援従事者たちに対して、敬意を表します。
皆様、
私たちは、今日の多極化した世界の複雑さに対処すべく、グローバルな平和と安全の枠組みを強化し、更新する必要があります。
それが「新たな平和への課題」を国連が打ち出した根拠です。
何よりもまず、安全保障理事会(安保理)が決定を下し、それを実行しなければなりません。またその代表性を、より高めなければなりません。
アフリカ大陸が、地域を代表して常任理事国入りすることを待ち続けている現状は、まったく受け入れがたいものです。
また、たとえ理事国間に大きな分断が存在しても前進できるよう、安保理の運営方法も更新されなければなりません。
「新たな平和への課題」は、核兵器の廃絶と、紛争予防の取り組みの強化に向けた決意を新たにすることで、戦略的リスクに対処するものです。
それは、地政学的な競争が人々に与える影響を緩和し、グローバルな貿易ルール、サプライチェーン、通貨、インターネットの断片化を阻止するための方策を提案しています。
さらに、あらゆる形態とあらゆるレベルの暴力に対処する、予防の観点を提供しています。
また、持続可能な開発、気候行動、そして平和の間のつながりを認識しており、性差に基づく権力の力学の変革、すべての平和プロセスへの女性と若者の意義ある包摂、そして市民権や、政治的、経済的、社会的、文化的権利といったあらゆる人権の尊重を求めています。
また、現実的なマンデートと明確な移行・出口戦略を備えた、平和維持ミッションの必要性を強調しています。
さらに、軍事分野における、人工知能(AI)を含めた新たなテクノロジーの使用を規制するための、規範と枠組みの策定を要請しています。
皆様、
私たちはまた、コミュニティー内の平和も必要としています。
世界中で、ヘイトスピーチ、差別、過激主義、人権侵害の高まりによって、コミュニティーが分断される様を目の当たりにしています。
反ユダヤ主義、反イスラムの偏狭性、少数派キリスト教徒コミュニティーの迫害、白人至上主義的なイデオロギーが高まっています。
権威主義が拡大し、市民空間が縮小し、メディアが攻撃にさらされています。
女性と女児に対する差別とジェンダーに基づく暴力は、私たちの世界で最も広範に見られる人権侵害です。
私は、これらすべての背後に、2つの根本的な理由があると考えます。
1つ目は、デジタル時代にあって、偽情報や憎悪が広まる速度と範囲が飛躍的に増したことです。利益の追求は、過激主義者たちが分断の種をまく助けとなっています。
2つ目は、現実の、またはそう認識されている不平等、経済的困窮、急速な社会的・経済的変化が、人々の恐怖を煽っているということです。
世界的な生活水準はかつてないほど向上しているかもしれませんが、世界の人々の7人中6人が、将来に不安や恐怖を感じていると報告されています。
国連では、社会的結束に向けた投資を最大化させ、あらゆる人々の安全を最優先する取り組みを支援しています。
私たちが、信頼、正義、包摂に基づき、人権に根差した社会契約の更新を求める理由は、ここにあります。
国連は、私の「人権のための行動呼びかけ(Call to Action for Human Rights)」を前進させています。
また、社会のあらゆる部門における女性の完全かつ平等な参加とリーダーシップを、緊急課題として促進しています。
さらに、テクノロジー企業に対して、有害な偽情報や他の有害コンテンツの拡散を増幅させ、そこから利益を得る行為を止める責任を果たすよう、強く求めています。
このたび、「未来サミット」に先立って発表される予定の「情報の誠実性に対する国連の行動規範」は、意思決定者たちが表現の自由の権利を擁護しつつ、デジタル空間を包摂的ですべての人にとって安全なものとする上での指針となるでしょう。
あらゆる分野の指導者たちは、人々が包摂され、代表されていると感じ、多様性が強みとして十分に認識され、あらゆるコミュニティーがそれ自体を価値あるものとして感じられ、社会全体の中で完全な居場所を見いだせるようにする、責任を負っているのです。
皆様、
世界とコミュニティー内の緊張を超えて、私たちには、正義ある平和が必要です。
不平等と不公平は、世界が自らと戦争するようにと煽ります。
そして、紛争が更なる不平等と不公平を駆り立てます。
2つの運河の物語を例に取りましょう。
スエズ運河経由の貿易は、3カ月以上前にフーシ派が紅海を通る船舶に対して攻撃を始めて以降、42%減少しています。
パナマ運河経由の貿易は、気候危機の副産物である水位の低下により、先月は36%減少しています。
原因が紛争であれ気候変動であれ、結果は同じです。世界のサプライチェーンが寸断され、すべての人々にコスト増をもたらすのです。
開発途上国の経済は、このような混乱に対して特に脆弱です。
持続可能で包摂的な開発は、平和にかかっているのです。
そして持続可能な開発目標(SDGs)の達成は、平和と繁栄を築くための最も効果的な方法です。
しかし私たちは、開発における緊急事態に直面しています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる激震に続き、ロシアがウクライナに侵攻したことで、世界的な緊張と世界的な物価が急激に高まりました。
開発途上国の経済は動揺し、その多くが現在も動揺しています。
今日の世界経済の見通しは、明白ながらも誰も口に出したがらない問題をほぼ無視しています。すなわち、開発途上国が1990年代初頭以来、最悪の5年間を経験しているという事実です。
その多くが支払い不能な債務返済コストに苦しんでおり、その額は今や記録的な水準に達しています。
世界の最貧国は今年、その国の医療、教育、インフラを合わせた公共支出を上回る債務返済額を抱えることになります。
その一方で、各国政府は、投資と不可欠なサービスへの支出を切り詰めることを余儀なくされています。
これらの問題はすべて、5月の第4回小島嶼開発途上国(SIDS)国際会議と6月の第3回内陸開発途上国(LLDC)〔国際〕会議で議題になるでしょう。
皆様、
SDGsの約束を守るために、私たちは2つの極めて重要な分野で前進する必要があります。
1つ目は、融資です。国連は、開発途上国が無理なく利用できる長期融資の形での、毎年5,000億米ドル相当の「SDG刺激策」の実現を目指しています。
「SDG刺激策」は、不可能な返済スケジュールにあえぐ国々が一息つけるような方策を含めた、債務に関する緊急の行動を求めています。
私は、この刺激策を現実にすべく、数名の国家元首たちに協力を要請しました。
皆様の支援があれば、国際金融機関の資本と能力を大幅かつ即時に増加させ、開発途上国の経済が立ち直るのを助けることができるのです。金融機関のリーダーたちによって前向きな動きが取られていますが、道のりはまだ長い状況です。
2つ目に私たちは、すべての国のニーズに応えられる国際金融アーキテクチャを備えた、新たなブレトンウッズ体制を迎える取り組みを続けなければなりません。
今日のアーキテクチャは、時代遅れで、機能不全に陥っており、不公正なものです。
80年近く前にそれを設計した富裕国に、有利になっているのです。
私たちの共通の目標を達成する上で必要な、各国が無理なく利用できる資金を提供することができていません。
そして、すべての開発途上国に対して財政上のセーフティネットを提供するという、基本的な機能を果たしていません。
「未来サミット」では、金融制度とその枠組みを真に普遍的で包摂的なものとする根本的な改革の必要性を検討します。
皆様、
私たちは、SDGsを前進させるために、テクノロジーの力も活用しなければなりません。
医療から教育に至るまで、そして気候行動から食料システムに至るまで、生成AIは、包摂的で環境に配慮した、持続可能な経済と社会を築くための最も重要な、可能性を持つツールです。
しかしAIは、すでに偽情報、プライバシー、偏見をめぐるリスクを生んでいます。
非常に限られた企業と、さらに限られた国に集中しています。
テクノロジーは、不平等を軽減するものでなければならず、不平等を再生産したり、人々を互いに戦わせたりするものであってはなりません。
AIは人類すべてに影響を及ぼすため、対処には普遍的なアプローチが必要なのです。
「人工知能(AI)に関する諮問機関」は、国連が担う中心的な招集の役割、すなわち各国政府、民間企業、学術界、市民社会を結集する役割を反映しています。
諮問機関の勧告は、「未来サミット」での採択が提案されている「グローバル・デジタル・コンパクト」に取り入れられる見込みです。
私たちは、適切な防護柵と倫理基準を確保し、透明性を促進し、開発途上国の能力を高めるべく、迅速に行動し、創造性を発揮し、協力し合わなければなりません。
AIは、「人の介在」に取って代わるべきものではありません。
それは、人間によって創り出されたものであり、常に人間の管理下に置かねばならないのです。
皆様、
私たちはまた、地球と和解しなければなりません。
人類は、自分たちが負け戦を仕掛けたのです。自然を相手に。
それは、正気の沙汰ではありません。
私たちは、自らを支えているシステムを破壊しているのです。
気候を内破させる排出ガスをまき散らし、陸地、海洋、大気を汚染し、生物多様性を大きく損ない、生態系を崩壊へと追いやることで。
今年10月に開催予定の国連生物多様性条約締約国会議、11月の気候変動枠組条約第29回締約国会議、12月の国連砂漠化対処条約締約国会議など、これから多くの重要な節目が控えています。
皆様、
気候危機は、私たちの時代の決定的な課題であり続けています。
今後数年で、私たちが世界の気温の上昇を1.5℃に抑えられるかどうかの大勢が決まるでしょう。
この上限内にとどまるためには、2030年までに温室効果ガスの排出量を2010年の水準と比べて45%削減しなければなりません。また、2025年までに排出量を減少に転じさせる必要もあります。
良い知らせは、私たちがこれまでになく、気候崩壊を防ぐための備えができているということです。再生可能エネルギーの利点は、年々明らかになっています。
「自国が決定する貢献(NDC)」、化石燃料の段階的廃止、資金という3つの分野で行動を起こすことで、この機運を捉えなければなりません。
2025年までに、すべての国が1.5℃の上限に沿った新たな国別気候計画をコミットしなければなりません。
私は、各国の取り組みを支援すべく、国連システムを総動員しています。
新たな国別計画では、すべての排出と部門を対象とすべきです。
クリーンエネルギーへの公正な移行の道筋を描くべきです。
そして、効果的な炭素価格の設定から化石燃料への補助金を打ち切ることに至るまで、強固な政策と規制によって、裏付けされなければなりません。
開発途上国にとって、これは、国の移行計画と国の投資計画を兼ね備えた国別気候計画を策定するチャンスです。
資本と投資を呼び込み、排出量正味ゼロの未来への公正な移行を計画し、将来世代のための持続可能な開発を下支えするために。
G20諸国にとって、これは、公正・公平な化石燃料の段階的廃止を加速させることでグローバルな舞台で真のリーダーシップを発揮する機会です。
皆様、
化石燃料の時代は、終わりを迎えようとしています。
再生可能エネルギー革命を止めることはできません。
しかし、私たちは今年、この移行が人と地球にとって公正なものであること、そしてそれが本格的な気候変動による惨禍を防ぐ十分なスピードで行われることを、確実にするために行動しなければなりません。
そのためには、COP28で合意されたように、2030年までに世界の再生可能エネルギー容量を3倍に、エネルギー効率を2倍に引き上げる必要があります。
それは、エネルギー移行において極めて重要な鉱物の生産および取引が公正かつ持続可能であるようにし、そもそも原材料を供給する国々に最大限の付加価値をもたらすようにする、ということです。開発途上国は、原材料の生産国としてあるだけでなく、自国の転換能力のレベルも、はるかに高めなければならないのです。
「エネルギー移行に重要な鉱物に関するパネル」では、今年末までに自主的な原則を定める予定です。
皆様、
公正な移行は、すべての人にクリーンエネルギーをもたらすとともに、開発途上国が化石燃料への依存から一気に脱却する上で必要な資金を使用可能にするための、迅速な行動を意味します。
国連の「気候連帯協定」は、主要排出国に対して排出量の削減に向けた更なる努力を求めるとともに、より富裕な国々に対して新興経済国のそうした取り組みを支援することを求めています。
私は各国に対し、これを実施するよう要請します。
また、ブラジルがG20議長国として示した、気候と資金を合わせて議論するというコミットメントを歓迎します。
先進国は最低でも、1,000億ドルの拠出について明確にし、2025年までに少なくとも年間400億ドルまで適応資金を倍増する方法を説明しなければなりません。
COP29では、すべての国が、気候変動対策資金に関する野心的な新しい目標に合意しなければなりません。
私たちは、革新的な気候変動対策資金源を模索すべきです。
そして、多額の拠出金を基に、「損失と損害基金」をできるだけ迅速に稼働させなければなりません。
気候カオス(大混乱)の最前線にいる国々は、さらに大きな支援を受ける資格があります。
皆様、
課題はこれですべてです。
ですが、どのような形であれ、あらゆる要素が、すべての人間のなす努力の中で最も重要なものと結びついています。それは、平和の希求です。
平和は、戦争では決して与えられない驚きを与えてくれます。
戦争は、破壊し、
平和は、築きます。
しかし、問題を抱えた今日の世界で、平和を築くことは、意識的で、大胆な行為であるばかりか、さらには革新的でさえあります。
これは、人類最大の責務です。
その責務は、個人としても、集団としても、私たち全員にかかるものです。
困難で、分断されたこの時に、今の世代と将来世代のために、その責務を果たそうではありませんか。
ここから、そして今から始めることで。
私自身は、平和を希求することを、決してあきらめることはないと約束できます。
ありがとうございました。
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