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国連経済社会理事会(ECOSOC)ユースフォーラム2024におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2024年4月16日)

プレスリリース 24-023-J 2024年04月26日

友人の皆様、

国連経済社会理事会(ECOSOC)ユースフォーラムへ、ようこそ。皆様のご出席とご参画に感謝します。

若者の活力や信念には、拡散力があり、これまでになく必要となっています。

私たちの世界には課題や悲劇、不公正があふれており、その多くが結びついています。

持続可能な開発目標(SDGs)は、軌道からは大きく外れています。それは、子どもたちが飢え、家族が貧困に陥り、若者たちが学校に通えないことを意味します。

気候危機は悪循環に陥っており、排出量は増加し続け、化石燃料産業は、その巨大な強欲さから事あるごとに変化を阻もうとしています。

国内および国家間に生じた大きな亀裂は、不信に拍車をかけ、連帯を蝕んでいます。

不平等と貧困がはびこっています。分極化と憎悪が拡大しており、それをインターネット上の偽情報と分断が煽っています。

人権が攻撃を受けています。

そして、世界中で紛争が激化しています。

10月7日のハマスによる破壊的なテロ攻撃を受け、イスラエルによるガザ地区での軍事作戦は、若者たちをはじめ民間人に恐ろしい影響を及ぼしています。

何千人もの子どもたちが命を落とし、さらに何千人もの子どもたちが片親あるいは両親ともを亡くしています。

そして、ガザ地区の若者の100%、つまり子どもたちは一人残らず、学校に通えていません。

今こそ、即時の人道的停戦、人質全員の無条件解放、民間人の保護、人道支援の無制限の提供が必要です。

友人の皆様、

こうした危機に直面し、人々の信頼が急激に失われています。疎外感が広がっています。そして国際システムがきしみつつあります。

マルチラテラリズム(多国間主義)の将来が、危機に瀕しています。

だからこそ、私たちには行動が必要であり、正義が必要なのです。

私は、立ち上がり、声を上げ、真の変革を起こすために取り組んでいる世界中の若者たちに敬意を表します。

私たちには、皆さんが必要です。

そして私は、若者たちを政治の意思決定に参加させるべく全力を傾けています。単にあなた方の意見を聞くだけでなく、皆さんの意見に基づいて行動しています。

国連は、若者のために、そして若者とともにアドボカシー、調整、参加、説明責任を推進するために、「国連ユース・オフィス」を新設しました。

私たちは「国連ユース戦略」を刷新し、この取り組みを次の次元へと進めます。

また私は、9月の「未来サミット」に向けて準備を進める中で、若者が大きな役割を果たせるよう尽力しています。

それには、本フォーラムでの議論や、若者と将来世代に関する章を盛り込む予定の「未来のための協定(Pact for the Future)」に関するオンライン協議、そして各コミュニティーで動員される皆さんの取り組みが含まれます。

私たちはまた、サミットの開幕に合わせて若者主導の行動デーを開催し、最初から皆さんの声に耳を傾けるようにします。

友人の皆様、

「未来サミット」は、SDGsを一気に加速させ、マルチラテラリズムを再活性化させる、極めて重要な機会です。

私たちはすでに、若者たちの参画強化について加盟国が検討すべき、多くの具体的なアイデアを提示しています。

その中には、各国によるユース協議機関の設立、意思決定への若者の有意義な参画に関する世界基準の策定、そして国連ユース・タウンホールの創設が含まれます。

私たちはまた、若者のための教育と雇用を含め、デジタル技術が持続可能な開発を支えるような世界を築くための、「グローバル・デジタル・コンパクト」の推進にも取り組んでいます。

それは、子どもや若者たちがインターネット上で保護され、デジタル技術の恩恵を受けられ、デジタル生活の形成に関する意思決定において発言権を持てる世界です。

私たちは、人工知能(AI)の国際的なガバナンスに関して提言を行うため、「人工知能(AI)に関するハイレベル諮問機関」を創設しました。この専門家グループでは、ジェンダー・バランスを配慮するとともに、若者のリーダーたちやグローバル・サウスの人々も含まれます。また、グローバル・デジタル・コンパクトへの情報提供も行っています。

私たちはまた、「新たな平和への課題」も提案し、多国間安全保障の枠組みを刷新・強化するとともに、平和と安全に関する機関に若者の参加を定着させ、十分な資金提供を受けられるようにすることを目指しています。

国連安全保障理事会の改革と、国際金融アーキテクチャの抜本的な見直しを推進するにあたり、私たちは、若者の参画とリーダーシップに期待しています。

今日の開発途上国の多くは、これらの機関が設立された80年前には、発言権がありませんでした。

これらのシステムは豊かな国々が設計したものであり、今も豊かな国々が支配しています。そして、その最も基本的な機能のいくつかは機能していません。

私たちは過去の遺物を払拭し、今日の世界を反映した機関を創らなければなりません。そして、ニーズに応えるのです。

これは、正義の問題なのです。

友人の皆様、

私は、すべての加盟国に対し、私たちの提案を支持するよう求めます。

また、若者たちに対し、市民社会における支持者やパートナーたちと力を合わせ、各国政府に向けて未来サミットを有意義なものとするよう要求することを求めます。

まずは、本日立ち上げる未来サミットのデジタルキャンペーンを支持することから始めることができます。

「Act Now」に参加し、ネットワーク上で共有してください。どれほど多くの人たちが、すべての人々にとって持続可能な未来を求めているのかを指導者たちに示すのです。

そして、国連ユース・オフィスが本日発表した、世界の指導者たちに宛てたマルチラテラリズムの再興についての公開書簡に署名するのです。

私は、未来サミットを超えて、大胆な気候行動の最前線に立っている若者たちに敬意を表します。

私たちの気候は、崩壊しつつあります。そして最も貧しい人々が、その代償を払っています。

これは、驚くべき不公正です。

そして、皆さんの世代に対する、恐るべき裏切り行為なのです。

各国政府は、化石燃料の世界的な段階的廃止とクリーンエネルギーへの公正な移行を加速させる、強力な政策を採用する必要があります。

各国政府はまた、1.5℃の上限に沿った新たな国別気候計画を2025年までに策定する必要があります。

さらに、こうした取り組みに、若者を意義ある形で参加させる必要があるのです。

再生可能エネルギーへの移行は、公正かつ持続可能でなければなりません。

その移行から開発途上国が十分な恩恵を得られるよう支援するため、私たちは間もなく「エネルギー移行のための重要鉱物に関するパネル(Panel on Critical Energy Transition Minerals)」を立ち上げます。

私が設立した気候変動に関する国連事務総長ユース諮問グループは、このパネルの一員となり、若者たちがパネルの活動に参画できるようにする予定です。

先進国はまた、気候変動対策資金に関する約束を守らねばなりません。また、気候正義に向けた一歩として、各国政府は新たな「損失と損害基金」に惜しみなく資金拠出しなければなりません。

そして私たち全員が、持続可能な開発へのより広範な資金流入を促すことで、SDGsを一気に加速させなければなりません。

それには各国が、「SDG刺激策」に向けた私たちの計画を支持・実施するとともに、国際金融機関の抜本的な改革を支持することも含まれます。

友人の皆様、

すべての世代が、この世界の「番人」としての役割を担っています。

正直なことを申し上げれば、私の世代はそうした責任には無頓着でした。

しかし、皆さんの世代は、私に希望を与えてくれます。

国連は、皆さんとともにあります。

共に、正義を実現しましょう。解決策を実行しましょう。そして、すべての人にとって平和で繁栄した世界をつくろうではありませんか。

* *** *

原文(English)はこちらをご覧ください。