「情報の誠実性のための国連グローバル原則」発表記者会見におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2024年6月24日)
プレスリリース 24-042-J 2024年06月28日
メディア関係者の皆様、こんにちは。
オンライン上での憎悪と嘘の蔓延は、私たちの世界に深刻な危害をもたらしています。
誤情報、偽情報、ヘイトスピーチが偏見や暴力を煽り、分断や紛争を深刻化させ、少数者を悪者扱いし、選挙への信頼性を損なっています。
本日、その解決策を探る出発点として「情報の誠実性のための国連グローバル原則」を発表できることを嬉しく思います。
その5つの原則、「(社会的)信頼とレジリエンス(強靭性)」「独立した自由で多元的なメディア」「健全なインセンティブ」「透明性と研究」、そして「人々のエンパワーメント」は、より人間的な(情報)エコシステムという最優先のビジョンに基づいています。
これらは、人権と持続可能な未来を擁護する情報環境を求めています。
また、持続可能かつ包摂的な開発、気候行動、民主主義、そして平和のための強固な基盤を提供します。
メディア関係者の皆様、
情報の誠実性に対する脅威は目新しいものではありませんが、現在それらは、人工知能(AI)テクノロジーによってさらに勢いを増し、デジタルプラットフォーム上でかつてない速度で拡散され、拡大しています。
科学、事実、人権、公衆衛生、気候行動が、攻撃を受けているのです。
そして、情報の誠実性が標的にされる時、民主主義もまた標的にされています。それは民主主義が、事実に基づく現実認識を共有することに依拠しているからです。
偽りの物語や歪曲、嘘は、あざけりや不信、無関心を増長します。それらは社会の結束を弱め、持続可能な開発目標(SDGs)の達成をさらに手の届かないものにさせてしまいます。
不透明なアルゴリズムは人々を情報のバブルに閉じ込め、人種差別や女性蔑視など、あらゆる種類の差別を含む偏見を増幅させます。
女性、難民、移民、そして少数者は、大抵その標的にされています。
活動家、唱道者、研究者、科学者、そして指導者たちは、執拗な攻撃を受け、辱められています。
その被害はデジタル領域をはるかに超え、インターネットにつながっていない何十億もの人々にも影響を及ぼしています。
ワクチンやその他の医療問題について嘘が拡散されれば、人命が危険にさらされます。
国連自身の活動とミッションも損なわれており、国連の職員たちは、津波のように襲ってくる偽りや不条理な陰謀論に対処しています。
メディア関係者の皆様、友人の皆様、
「情報の誠実性のための国連グローバル原則」は、加盟国、若者のリーダー、学術界、市民社会、そしてテクノロジー企業や皆様のようなメディアを含む民間セクターとの幅広い協議の結果です。
これらの協議からは、世界の大部分の人々が私たちの深い懸念を共有しており、解決策を求めていることがわかりました。
このグローバル原則は、表現及び意見の自由に対する権利など、人権に強く根差した、今後進むべき確かな道を示すものです。
私は、各国政府とテクノロジー業界、その他のステークホルダーに対して、自らの国民や自社の顧客の声に耳を傾け、それに応えるよう要請します。
一部のステークホルダーは、とてつもなく大きな責任を負っています。そうした人々に向けて、私から明確なメッセージがあります。私たちは行動を求めています。
1つ目は、主要なテクノロジー企業に向けたメッセージです。責任を負ってください。自社の商品が人々やコミュニティーに与えている悪影響を認めてください。
皆様には、世界中の人々や社会に向けられた危害を、軽減する力があります。
偽情報や憎悪から利益を得るビジネスモデルを、変える力があります。
2つ目は、広告主、および広報(PR)業界に向けたメッセージです。
有害コンテンツを収益化するのを止めてください。
情報の誠実性を強化し、自社ブランドを守り、利益を上げてください。
気候危機はとりわけ大きな懸念を呼んでいます。組織的な偽情報キャンペーンが、気候行動を損なおうとしています。
クリエイターの皆様、自身の才能をグリーンウォッシング(見せかけだけの環境配慮)に使わないでください。
広報(PR)代理店の皆様、人々を誤った方向に導いて私たちの地球を破壊することのない顧客を探してください。
3つ目は、メディアの皆様に向けた私のメッセージです。
編集基準を高めて、それを強化してください。
事実と現実に基づいた質の高いジャーナリズムを提供することで、私たちの未来を守るべく自らの役割を果たしてください。
問題ではなく、解決策の一翼を担う広告主を見つけてください。
そして最後に、各国政府にお伝えします。
自由で存続可能、かつ独立した、複数のメディアがいる環境を創出し、維持することを約束してください。
ジャーナリストに対し、強力な保護を保証してください。
規制は確実に人権を擁護するものにしてください。
全面的なインターネット遮断を含め、極端な施策は控えてください。
意見及び表現の自由に対する権利を尊重してください。
明確に申し上げます。
すべての人々が、攻撃を受ける恐れなく、自らの考えを自由に表明できるべきです。
すべての人々が、幅広い意見や情報源にアクセスできるべきです。
誰一人、自らがコントロールできないアルゴリズムのなすがままにされるべきではありません。そうしたアルゴリズムは、人々の利益を保護するようには設計されておらず、人々の行動を追跡することで、個人データを収集し、継続的に強い関心を引こうとしているのです。
メディア関係者の皆様、
これらの原則は、人々に自らの権利を要求する力を与えることを目指しています。
また、子どもたちを案じる親たちを支援します。
自身の未来が情報の誠実性にかかっている若者たちも。
変化を求めている市民社会と学術界も。
そして、信頼のおける正確な情報を伝えようと懸命に努力している公益メディアも。
国連は、助言と支援を求める皆様の声に耳を傾けています。
力を落とすことなく、声を上げてください。
説明責任を求め、選択肢を求め、規制を求めてください。
皆様は、多数派なのです。そしてこれは、私たちが力を合わせれば、勝利できる闘いなのです。
ありがとうございました。
* *** *
原文(English)はこちらをご覧ください。