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「未来のための協定」の実施に関する非公式対話におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、3月26日)

プレスリリース 25-023-J 2025年04月09日

総会議長、各国代表の方々、皆様、

この重要な対話を開催してくださった総会議長に感謝いたします。これは、今後数カ月にわたって行われる3回の対話の初回となります。

「未来のための協定」が採択されたその日から、議長は同協定の積極的な擁護者となってこられました。

そのご尽力とリーダーシップに深く感謝します。

各国代表の方々、

協定の採択はあくまでプロセスの始まりであり、終わりではありません。

本日私は、この6カ月間に私たちが成し遂げたこと、そして今後成し遂げるべきことに焦点を当てたいと思います。

私たちは、数多くの課題に直面しています。 

紛争や気候関連災害が深刻化しています。 

持続可能な開発目標(SDGs)は軌道から大きく外れており、それらの達成に必要な資金も大幅に不足しています。

地政学的分断と不信が効果的な行動を妨げ、一部には国際協力や多国間システムそのものの価値に積極的に疑問を投げかける動きも見られます。

しかし、はっきり申し上げます。そうした分断や不信があるからこそ、「未来のための協定」と2つの付属文書がこれまで以上に重要なのです。そして、障害が大きければ大きいほど、未来サミットで加盟国が表明した決意に沿って物事を前進させる私の決意も、また大きくなるのです。

一方で、切実に必要としている人々に向けた重要な資金援助が大幅に削減され、今後さらに縮小される見込みです。

資源はあらゆる分野で減少しており、その状況が長く続いています。

私が事務総長に就任したその日から、国連は組織全体にわたって効率性と費用対効果を高めるという野心的なアジェンダに着手しました。

今年3月、私はこの取り組みを継続し、さらに強化するための「UN80イニシアチブ」を発表しました。

私たちは、効率性と現在の体制の改善、加盟国から付託されたマンデートの実施、そして構造改革とプログラムの再編成について見直しを行っています。

これらはすべて、「未来のための協定」のより効果的な実施に寄与するでしょう。

各国代表の方々、

私たちは、直ちにこの協定の実施段階に移行しています。

運営面では、私自身が議長を務める代表者レベルでの運営委員会を設置し、主要分野における行動と改革に焦点を当てた、以下の6つの作業部会を監督しています。

SDGsの加速、平和と安全、国際金融アーキテクチャ、デジタル技術、国連のガバナンス、そして若者たちです。

私たちは、将来世代と、国内総生産(GDP)を補完する指標群を進歩の指標や政策立案の指針とする必要性に焦点を当てた、2つのタスクチームを立ち上げています。

そして、協定の実施における国連による進捗を監視する内部追跡システムを構築しています。

本日私は、協定の採択以降の国連の取り組みを報告するとともに、4つの分野における今後の取り組みの概要をご説明したいと思います。

1つ目は、平和と安全です。

国連の平和活動は、世界で最も絶望的な状況に置かれているいくつかの地域の人々やコミュニティーを守る支援をしています。

この協定は、紛争を予防して対処するための手段を強化し、国連の平和への取り組みが新たな脅威や台頭しつつある脅威に確実に対応するためのコミットメントを示しています。

私は昨年11月に、「平和構築委員会」と「平和構築基金」を強化するための具体的な提案を含む、平和構築に関する報告書を発表しました。

現在は、平和プロセスへの若者たちの積極的な貢献に関する、第2回目の独立した進捗調査に積極的に取り組んでいます。

また、協定で求められているように、あらゆる形態の平和活動の見直しも進めています。

ハイチに関して安全保障理事会へ向けた私たちの最近の提案は、複雑な安全保障上の課題に対して新しいアプローチを策定できる好例です。

この見直しは、平和活動が今日の現実に適応するよう支援し、そしてその平和活動が実行可能な出口戦略と移行計画を備え、現実的かつ達成可能な、明確かつ順序立ったマンデートによって導かれるようにする機会となります。

それはまた、平和を維持する余地がほとんど、またはまったくない地域における国連の活動の限界を認識することにもなります。

私たちはまた、核兵器、生物兵器、化学兵器、自律型致死兵器、そして拡大する宇宙空間の武器化をめぐる軍縮のコミットメントなど、協定の平和に関する優先課題も引き続き推進していきます。

さらに、安全保障理事会を今日の世界をよりよく代表し、世界の平和をより効果的に推し進められるものにするというこの協定の呼びかけを、政府間交渉プロセスなどを通じたものも含めて引き続き提唱していきます。

2つ目は、開発のための資金です。

協定の採択以来、私たちはいくつかの分野で行動を起こしています。

例えば、国連の常駐調整官たちと国別チームは現在、各国政府と緊密に協力しながら、国レベルでの前進を加速させる方法を模索しています。

軍事支出がSDGsの達成や国連自体の活動に与える影響の分析を開始しており、9月までに最終報告書を発表する予定です。

国内総生産を補完する進歩の指標群を開発するよう協定で要請されていた専門家グループはまもなく発表され、2026年に政府間プロセスが引き継ぐまでの1年を通じて活動することになります。

また私たちは、協定で示された国際金融システムの改善への取り組みをフォローアップすべく、世界銀行および国際通貨基金(IMF)と緊密に連携しています。

開発途上国は、まさに自らが依存している機関の統治において、公平に代表されなければなりません。

現状では、その環境は好ましいものでないことが分かっています。

しかし、決してあきらめてはなりません。

この協定の採択以降、私は債務に対処する具体的な措置を定めるための専門家グループも立ち上げました。

今後数週間のうちに、同グループは達成可能な成果のリストを提案し、スペインで行われる開発資金国際会議に先立つ6月に、詳細な報告書を発表する予定です。

もし私たちがその実施と「未来のための協定」を現実のものとしたいと考えるなら、債務救済が中心的課題となります。

同時に私たちは、国際開発金融機関の融資能力を拡大させ、より大きく、より大胆なものにすることを引き続き提唱していきます。

これには、借入比率の拡大と資本の増強の両方が含まれます。

さらに私たちは、譲許的融資を最も必要とされているところに確実に展開しなければなりません。

これらの行動の多くは、その他の多国間機関や加盟国の決定に依存するものですが、「未来のための協定」が取るべき道として明らかにしていることを私たちは引き続き弛まず提唱していきます。

3つ目は、若者たちと将来世代です。

私たちの取り組みは、若者たちと将来世代のためのものでなければなりません。

若者たちに対するこの協定の約束の中心にあるのは、彼らの懸念や意見に耳を傾けること、そして意思決定の場に彼らが参加するようにすることです。

2022年に国連ユース・オフィスが設立されてから、若者たちはこの協定の優先課題の策定において重要な役割を果たしました。

協定の採択を受け、現在私たちは、国の資金調達メカニズムと投資プラットフォームが若者たちのニーズに焦点を当てたものとなるよう、若者への投資プラットフォームの設立に向けて前進しています。

また、国連の組織構造内で若い世代の同僚たちの代表性を広げることも含め、国連の活動全体への若者の参画を強化するための基本原則を策定しています。

さらに、「将来世代に関する宣言」を通じて、これから生まれてくる世代にも目を向けています。

私たちは、「実践のための戦略的展望ネットワークおよびコミュニティー」を設立し、国連の政策、プログラム、そして現地活動が、長期的思考に基づくものとなるよう努めています。

そして私は、今年後半に、こうした取り組みを拡大するために、「将来世代の国連特使」を任命する予定です。

4つ目は、テクノロジーです。

私たちは、すべてのデジタル格差を解消し、あらゆる人々が安全で安心なデジタル空間から恩恵を受けられることを確保するというグローバル・デジタル・コンパクトの呼びかけを実施しています。

人工知能(AI)には、特に焦点を当てています。

私たちは今、私のハイレベル諮問委員会での提言を踏まえ、グローバル・サウスがより良い目的でAIを活用できるように、AIの能力構築のための革新的かつ自発的な資金調達のオプションに関する報告書を作成しています。

共同進行役を務めるスペインとコスタリカのご尽力のおかげで、独立した「AIに関する国際科学パネル」の設立と「AIガバナンスに関するグローバル対話」の招集を求める決議のゼロドラフトも先週配布されています。

私は総会に対し、このパネルを設立し、グローバル対話を支援しつつ、すべての国がAIに関する専門知識や知見を確実に利用できるようにすべく、迅速に行動することを要請します。

国連システムでは、この取り組みを支援する準備ができています。

各国代表の方々、

私たちはまた、こうした優先課題を推進する一方で、協定で求められているように、国連の活動の効率性と有効性も改善しています。

昨年の秋には、「国連2.0」イニシアチブで求められているように、国連の業務にまたがるイノベーション、データ分析、デジタル・トランスフォーメーション、先見性の潜在能力を活用するために、国連機関全体にわたって包括的評価を実施しました。

その成果はすでに現れており、アジア太平洋地域における災害評価が迅速化され、マラウイにおける社会保障プログラムが強化され、国連システム全体で情報テクノロジー機能が統合されています。

とりわけ、私たちが直面している資金調達の問題を踏まえると、この取り組みは継続していかねばなりません。

そうして前進していく中、私たちは皆様の支援に期待しています。

各国代表の方々、

今日の世界におけるさまざまな課題に対応する多国間システムを再構築していく中で、「未来のための協定」は、この絶え間ない更新プロセスの不可欠な部分となります。

私たちは、国連の取り組みを弱めるわけにはいきません。

私たちは、この協定が策定・採択された時と同じ精神と決意を持ち続ける必要があります。

私たちは、今後の実施について、皆様が情報を与え、鼓舞し、導いてくださることを期待しています。

皆様からのご意見とご尽力に、改めて感謝いたします。

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原文(English)はこちらをご覧ください。