北海道洞爺湖サミットに関する国連事務総長の声明(北海道洞爺湖、2008年7月9日)
2008年07月09日
私は、主要8カ国(G8)首脳をはじめとする世界の指導者が、北海道洞爺湖において、気候変動、食糧安全保障、開発という3つの相互に関連したグローバルな危機に関し、重点的な話し合いを行ったことを感謝します。今後は、サミットでの議論をたたき台として、グローバルな取り組みを加速しなければなりません。
2050年までに排出量を少なくとも50%削減するという長期目標を含め、G8の気候変動と環境に関する声明を歓迎します。 1990年を基準年とするこの目標は、明らかな前進といえます。しかし、取り組みはさらに進めなければなりません。特に、来年のコペンハーゲン会合までに、先進国向けの野心的な中期排出量削減目標とともに、共通だが差異ある責任という原則に沿った開発途上国による有意義な取り組みについても、全体的な合意を成立させる必要があります。G8が開発途上国における適応と緩和に向け、資金供与の用意を表明したことは歓迎しますが、さらに多くの取り組みを、既存の開発のための金融を損なうことなしに進めることが必要です。私は今後17カ月の間、あらゆる国々の指導者と手を携え、2009年末までに国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の傘下で新たな気候変動に関する合意を成立させることができるよう、努力を続けていきます。
私は、国連が促進、調整を行ってきた「食糧のためのグローバル・パートナーシップ」において、G8が世界食糧危機に取り組む強い決意を表明したことをうれしく思うとともに、特に私の「ハイレベル・タスクフォース」とその「包括的行動枠組み」に対する支持表明を高く評価します。全世界で飢えに苦しむ数千万の人々の差し迫った食糧、栄養および農業投入財のニーズへの取り組みについて、G8が示した切迫感には、心強いものがあります。しかし、こうした人間としての共有責任の遂行を全加盟国に求めるG8の呼びかけは、同じ切迫感を持って危機の根底にある構造的原因にも取り組むという、強い意志を伴ったものとせねばなりません。私たちは現在の危機を、農業生産性や農業研究、農村インフラに対する官民の投資を年額250億米ドル以上へと大幅に引き上げる機会として活用しなければならないのです。この点で、農業向け政府開発援助(ODA)の大幅増額をはじめとするG8の政治的、財政的コミットメントの継続は欠かせません。また、低所得開発途上国の貿易と市場を強化するためには、間近に迫ったドーハ開発ラウンドにおける先進国の農業補助金の削減と、輸出規制や関税の撤廃をさらに進めなければなりません。私はG8のほか、あらゆる加盟国やパートナーとも協力していく所存です。
G8がグレンイーグルス・サミットとハイリゲンダム・サミットで行ったODA公約の履行約束と、2010年の期限までにこれら目標を実現するための迅速かつ具体的前進の呼びかけを新たにしたことは、心強い限りです。私は、洞爺湖サミットでミレニアム開発目標(MDGs)の達成が重点的に話し合われたことを歓迎するとともに、野放しになっている熱帯病を含む伝染病への対策、保健医療体制の整備、母子・幼児保健への取り組みをはじめ、保健問題への関心が高まっていることに満足の意を表します。G8は2010年までにマラリアによる死亡者をなくすべく、殺虫剤処理済みの蚊帳1億張を供与することを公約していますが、私はその迅速な実施を求めます。
これら分野でどれだけの対策が必要かは分かっています。議論を実行に移すことこそが、目下の課題なのです。