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潘基文(パン・ギムン)事務総長の歴訪に見る世界の今~2012年7・8月

2012年10月05日

この夏、潘基文(パン・ギムン)事務総長は精力的に世界各国をめぐり、平和と安定の実現に向けた各地の取り組みを見て回りました。7月には紛争から20年たった旧ユーゴスラビア諸国を歴訪。8月中旬には政治の安定と治安の改善により、国連平和維持活動(PKO)の段階的撤退が予定されている東ティモールを訪れました。8月下旬には、事務総長になってから初めてとなるイラン訪問を果たし、イランが議長国を務める非同盟諸国(NAM)首脳会議に出席。国連活動への一層の協力を求めるとともに、緊張が続くシリア情勢の改善に向けた努力を、周辺地域のリーダーたちに呼びかけました。

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事務総長の東欧歴訪はスロベニアから始まり、6日間でクロアチア、モンテネグロ、セルビア、コソボ、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナをめぐりました。セルビアでは、ニコリッチ大統領のほか、第67回国連総会議長に選ばれたイェレミッチ外相(当時)とも会談。2008年にコソボがセルビアからの独立を宣言して以降、いまだ両国間の緊張関係が続いている問題に触れ、「真の対話と妥協」を求めました。

続いて訪れたコソボでは、国連コソボ暫定行政ミッション(UNMIK)の本部を訪れて現在の活動状況を確認。古都プリズレンにも足を伸ばし、宗教指導者たちと意見を交換しました。また、ボスニア・ヘルツェゴビナでは、ボスニア紛争中の1995年に大虐殺が起きたスレブレニツァを訪れ、犠牲者たちを慰霊しました。訪問を終えた事務総長は記者会見で、「この地域の抱える課題、ならびにこの地域の持つ潜在的な力に対し、さらなる理解を深めることができた」と振り返りました。

8月中旬には、事務総長に就任した2007年以来5年ぶりに東ティモールを訪問しました。国連は当地で1999年以降、様々なミッションを展開してきましたが、政情の安定化と治安状況の改善に伴い、現在の国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)をもって、段階的に撤退する予定となっています。

事務総長は政府首脳との会談に加えて、地元の警察学校を訪れ、UNMITの警察官による東ティモール国家警察の訓練の現場を丁寧に見て回りました。また、国連教育科学文化機関(UNESCO)のイリーナ・ボコバ事務局長や、国連グローバル教育担当特使のゴードン・ブラウン元英首相らとともに小学校や大学も訪れ、自らの新たな教育イニシアティブである「Education First(教育第一)」について理解を求めました。

続いて中東に飛んだ事務総長は8月下旬、NAM首脳会議出席のため、イランのテヘランを訪れました。会議に先立ち、NAM議長国であるイランの指導者と相次いで会談。加盟国の約3分の2という、国連最大の参加国数を持つNAMを率いることは、イランにとって、国連や国際社会と協力しながら世界的な課題の解決に向けた「穏健で建設的な役割」を担う絶好の機会だと訴えました。その上で、イランの核開発や人権侵害に対して国際社会が抱えている懸念をアフマディネジャド大統領らに直接伝え、国際原子力機関(IAEA)や国連人権高等弁務官に全面的に協力することを通じて、国際的な信頼を高めていくよう呼びかけました。

3年ぶりに出席したNAM首脳会議では、シリア情勢についても触れ、「長期の内戦に発展する恐ろしい危険性がある」と警告。シリア政府や反体制派への武器提供などを通じて、戦火に油を注ぐことがないよう、各国を牽制しました。

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コソボ南部の古都を訪れ、宗教指導者らと語り合う事務総長(プリズレンで、2012年7月24日)©UN Photo/ Eskinder Debebe
ボスニア・ヘルツェゴビナでは、ボスニア紛争末期の1995年に、大虐殺の犠牲となって亡くなった人々を慰霊した(スレブレニツァで、2012年7月26日)©UN Photo/ Eskinder Debebe
国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)の警察官たちをねぎらう事務総長(ディリで、2012年8月15日)©UN Photo/Martine Perret
イラン外務省の教育機関で行われた講演では、教授や学生から質問が飛び交った(テヘランで、2012年8月30日)©UN Photo/Evan Schneider
第16回非同盟諸国(NAM)首脳会議では、持続可能な開発、平和と安全、人権問題へのさらなる協力を訴えた(テヘランで、2012年8月30日)©UN Photo/Evan Schneider 5