潘基文(パン・ギムン)事務総長の歴訪に見る世界の今~2012年11・12月
2012年12月26日
2012年秋から冬にかけて、潘基文(パン・ギムン)事務総長が二度にわたり訪れた地域、それは中東です。11月中旬、パレスチナ自治区のガザ地区とイスラエル間の暴力の激化を受け、両当事者に即時停戦の呼びかけを行うと同時に、事態の沈静化に向けて周辺国のリーダーに積極的な働きかけを重ねました。12月初旬には気候変動に関する国際交渉の場となったカタールを皮切りに中東を歴訪。内戦の長期化するシリアから隣国へ逃れた避難民らと会い、改めて問題解決に向けた国際社会の結束を求めました。
* * * * *
パレスチナ自治区であるガザ地区とイスラエルの暴力が激化した11月中旬、事務総長は中東を訪れ、エジプト、イスラエル、パレスチナ自治区、そしてヨルダンの各国政府と協議を重ねました。エジプトではカンディール首相、アラブ連盟のアラビ事務局長と会談を行い、パレスチナ、イスラエル双方に暴力を停止するよう訴えました。この後エルサレムを訪れ、イスラエルのネタニヤフ首相と会談。直後の共同記者会見において、イスラエルに対するガザからのロケット弾攻撃を非難、同時にイスラエルに対しても軍事行動を最大限に自制するよう求めました。このほか、事態の沈静化に向けて同じくエルサレムを訪れ外交努力を行っているクリントン米国務長官とも会議を行いました。
西岸地区のラマッラへ向かった事務総長はファイヤード首相、アッバース大統領と会談。紛争下に置かれている市民の安全確保を最優先課題とし、「いかなる状況においても人道法を遵守する」よう、すべての当事者に訴えました。再びカイロに戻り、モルシ大統領と会談した事務総長は、パレスチナ・イスラエル間の紛争の平和的解決に向け仲介を続ける大統領の努力に謝意を表明しました。この後、記者団に対し、「民間人の死傷者数が増加の一途をたどり、市街地の破壊が続くことに強い懸念」を示し、「即時停戦」を訴えました。状況がこのまま悪化すれば、人道支援活動が困難になるとの懸念が広まりつつありました。
様々な外交努力の末、11月21日夜、ガザとイスラエルで停戦が成立。ヨルダン政府との会談を終えた事務総長は、発表されたばかりの合意を歓迎しました。深夜にイスラエルのテルアビブに戻った事務総長は、停戦合意を受けて開かれた国連安全保障理事会(安保理)緊急会合にビデオ・リンクを通じて参加し、報告を行いました。この中で、両当事者が合意を遵守する必要性を強調し、2009年に採択された安保理決議1860の履行を求めると同時に、国際社会に対して、暴力の再発を防ぐよう一丸となって取り組むことを呼びかけました。
* * * * *
12月に行われた事務総長の中東歴訪はカタールから始まり、クウェート、イラク、ヨルダン、トルコを訪れました。
カタールでは、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第18回締約国会議(COP18)に出席。ハイレベル・セグメントの冒頭挨拶の中で、「気候変動が私たちにとって脅威であるのは、もはや疑いのない事実」であり、「世界中の全ての人が当事者意識を持って、この脅威に立ち向かう」よう呼びかけました。その上で京都議定書の第二約束期間の設定や、途上国への支援資金の引き上げを盛り込んだ決議案の採択に向け、各国の理解を求めました。その後フィゲレスUNFCCC事務局長と共に記者会見を開き、各国政府はすでに「産業化以降の地球の気温上昇を2度以内に抑える」合意をしていることについて、「これは技術的にも経済的にも可能」であるとし、目標の達成に向け政治的意思を示すよう呼びかけました。
続いて事務総長はクウェートとイラクを訪問。それぞれの国のリーダーに対し、1990年のイラクによるクウェート侵攻以来悪化している二国間関係に触れ、「過去を乗り越え、新しい協調の時代を切りひらく」努力を呼びかけました。またイラクには、滞っている賠償義務を果たすよう求めました。
ヨルダンとトルコでは、それぞれザータリ難民キャンプとイスラーヒエ難民キャンプを訪れ、厳しい生活を強いられているシリアからの避難民らの現状を聞いて回りました。訪問を終えた事務総長は記者会見で、「シリアの家に帰りたいと話す子どもたちの話に強い衝撃を受けた」と語り、「これ以上難民を増やさないためにも、シリアでの暴力を絶対に止めなければならない」と訴えました。また問題解決に向けて国際社会、とりわけ安保理に対し、一致団結して危機を終わらせるよう協力を促しました。
* * * * *
事務総長2期目の最初の一年も、これまで同様に世界を駆け回った潘事務総長。2013年も193の加盟国と共に、よりエネルギッシュに、よりパワフルに、世界の抱える様々な課題に取り組んでいきます。