アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)サポートオフィス(UNSOA)
ロジスティック・オフィサー 野竹 亜紀さん
野竹 亜紀(のたけ あき)
アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)サポートオフィス(UNSOA)
ロジスティック・オフィサー
大阪市出身、2001年オクラホマ中央大学のコミュニケーション学科卒業。デトロイトの民間運送会社で3年間勤務した後、2008年アッパーアイオワ大学でMBA取得。2004年に国連リベリア・ミッション(UNMIL)に運輸管理要員として派遣される。2007~2009年に国連ネパール・ミッション(UNMIN)、2009~2011年に国連スーダン・ミッション(UNMIS)の運輸管理部門で働き、アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)サポートオフィス(UNSOA)のオペレーション・プランニング部署に6カ月間派遣された後、正式にUNSOAへ異動し、現在に至る。
選挙から紛争まで 緊急輸送手段としての役割果たす
リベリアとスーダンのミッションで私が所属していたMovement Control(運輸管理部門。通称:MovCon)という部署は、PKOミッション内での国連機やヘリコプター、トラック、船を管理し、平和維持部隊の派遣、食料配送、武器の運搬、国連職員をはじめホスト・カントリ-の大統領、大臣、官僚のほか、大使館、EU、AUなどの国際機関の職員が国内で移動する際に支援する部署です。これまで勤務してきた国々では、選挙の時には治安が悪く、道が不便なためにヘリコプターでしか行けない場所が数多くあり、MovConは投票用紙を運ぶ唯一の手段としても活躍しました。また、紛争で負傷した兵士を運ぶ緊急の輸送手段を手配したり、突発的な紛争を抑えるために平和維持部隊を派遣したり、災害時の緊急援助物資を輸送したりと重要な役割を果たします。
現在は、アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)を支援するサポートオフィス(UNSOA)のオペレーション・プランニング部署でロジスティック・オフィサーとして働いています。ここは、ソマリアに入っているアフリカ軍からの要請に応じて、ナイロビにあるUNSOAの他の部署と連絡、調整する要の部署です。アフリカ軍兵士や武器の輸送、食料配送をするほか、ソマリア内でのAMISOMとUNSOAの拠点をつくり、運営するための貨物や衛星通信の機材、緊急医療パック、薬などを、首都モガディシュをはじめソマリア各地に送っています。
財政管理から後方支援まで、幅広い業務を経験
私がUNSOAに短期派遣されていた2010年は、ソマリアでの戦闘がまだ激しく、テロリスト・グル-プのアルシャーバブがモガディシュを占領している時期でした。彼らのテロ攻撃を避けるため、国連機のスケジュールや乗客名簿は極秘で作られ、私はまさに名簿作成を担当していました。飛行機の席が限られている中で乗客の優先順位を決めたり、モガディシュでのキャンプの部屋を確保したり…。何重ものセキュリティ・クリアランスを調整してからようやく確定できるという状況だったため、リクエストを出してから飛行機に乗れるまで平均1週間を要していました。
その後、国連ソマリア支援ミッション(UNSOM)の財政管理、ロジサポートもUNSOAに委任され、国連ソマリア政治事務所(UNPOS)の2つの地域事務所を建てるためのプロジェクトを任されました。様々な部署、人々と会議を重ね、予算の確保をはじめ資材の調達、配送、建築状況のモニタリングなど全般を管理し、2012年にようやく新しい事務所を立ち上げました。
ナイロビは家族連れでも働きやすい環境
プライベートでは、国連ネパール・ミッション(UNMIN)で同僚だったネパール人の夫と2010年に結婚し、現在は共にUNSOAで働いています。2012年、2013年に長女、次女が誕生して、現在4人家族でナイロビに在住しています。
国連平和維持活動(PKO)ミッションは、派遣地の治安などによって危険度のカテゴリーがあります。これまで私が従事してきたのは、扶養家族が現地で生活することを認められていない “Non-Family Duty Station” という地域でした。しかし、ナイロビではそれが認められているため、UNSOAも含め多くの国連職員が家族と生活しています。また、学校、保育所が充実していて、現地の方に家事や育児のサポートもお願いできる環境なので、日本やニューヨーク、ジュネーブなど他の国連オフィスと比べても、小さな子どもを持つ人にとっては大変過ごしやすい場所だと感じます。
リベリアやスーダンのミッションでは厳しい生活環境だったため、6週間、8週間ごとにRest & Recuperation(R&R)という国連の制度を利用し、国外に出てリフレッシュする必要がありました。一方、ケニアにはレストラン、ショッピングセンター、サファリなど、国内にも出かける場所がたくさんあり、家族で週末を楽しむことができます。国連のナイロビ事務所は広々とした環境がすばらしく、家族がいる人にもお勧めです。
国連で働くために不可欠なのは「自己アピール」
2004年9月に私が初めてリベリア・ミッションに派遣されたときは、1000人以上いる職員の中で日本人は2人しかいませんでした。PKOミッションでは日本人が少なく、特にロジスティック関係は女性が少ない中で、軍人を相手に仕事をするのは大きなチャレンジに感じました。
これまでの経験から学んだのは、「受身にならずどんどん自分の意見やアイデアを相手に伝えていく必要性」です。カルチャーが違う者同士が働いている国連の中で、「自己アピール」はなくてはならないものです。日本では協調性を重視する傾向がありますが、国連では自分の考えを持ち、それをしっかりと相手に伝えることが大切です。特に国連のインタビューはCompetency Based(能力適正インタビュー)なので、自分のこれまでの経験をどれだけ面接官にアピールができるかが重要になってきます。
日本人は慎重なので、国連の空席告知を見て「必要能力」の項目に一つでも当てはまらないものがあると、自分はそのポストには能力不足だと思い、応募を控える方もいるかもしれません。しかし、私がそうであったように、そのポスト以外でも面接や仕事のオファーが来る可能性もあるので、ひるまずに応募することをお勧めします。