国際海運
国際海事機関(International Maritime Organization: IMO)(www.imo.org)が1959年に第1回総会を開いた時、加盟国の数は40カ国にも満たなかった。現在、加盟国の数は171カ国(170の国連加盟国とクック諸島)となり、さらに3カ国の準加盟国を持つ。世界の商船(トン数)の98パーセント以上がIMOによって開発された主要な国際海運条約に基づいて運行されている。内容は、船員の養成、汚染防止、満載喫水線、トン数の測定、衝突防止、捜索救助、海上交通の促進などである。
海事立法措置の採択がIMOのもっともよく知られた活動である。IMOはこれまで50件以上の条約や議定書を採択した。また、海運業のほとんどすべての側面を規制するおよそ1,000件以上の規則や勧告が採択された。
当初、IMOは安全に関連する問題に重点的に取り組んでいた。その後、環境問題や法律問題、技術協力、安全保障、船舶に対する海賊行為や武装強盗、海運効率化の問題も任務の一部となった。
海上における人命の安全を守ることが、IMOの主要目的であることには変わりない。1974年の「海上における人命の安全のための国際条約(International Convention for the Safety of Life at Sea: SOLAS、1974年)」は、海上のあらゆる安全と危機管理のあらゆる側面に関連する規則を載せ、船舶建造、防火と救命道具から危機管理、貨物の輸送の問題まで取り上げている。「海上における遭難及び安全に関する世界的制度(Global Maritime Distress and Safety System: GMDSS)」は現在再検討中で近代化されつつあるが、SOLASの下では義務的で、世界のどこの海域にいても、船舶の遭難警報(アラート)は受信され、応答されることを可能になる。2017年1月1日、二つの新しい義務的コードが発効した。一つは、環境によりクリーンであるとしてますます利用されるようになったガスもしくはその他の低引火点燃料を使用する船舶の安全に関するもので、二つ目は「極海を航行する船舶のための国際コード:極海コード(International Code for Ships Operating in Polar Waters: Polar Code)」で、北極海と南極海を航行する船舶の数が増えていることから追加の安全かつ環境上の基準を設定している。「極海コード」は「船舶による汚染の防止のための国際条約(International Convention for the Prevention of Pollution from Ships: MARPOL、1973年)」の下でも義務的である。この条約は、航行に伴う排出問題と事故による汚染防止に取り組むもっとも重要な環境条約である。MARPOLの規則は油や大量に輸送される化学物質による汚染防止、梱包された商品、下水、ごみによる汚染、それに船舶による大気汚染の防止を取り上げており、エネルギーの効率化も取り上げられている。MARPOLのもとに、IMOは2011年に国際海運のために義務的なエネルギーの効率化の必要条件を採択した。これは2013年に発効し、国際運輸部門においては最初の義務的措置となった。
IMOが現在環境の分野で行っている活動に、船舶の環境フットプリントを軽くする措置がある。たとえば、クリーンな燃料を使用する、有害な排気物質を削減する、船舶のエネルギー効率を改善する、などである。2017年9月、「船舶バラスト水規制管理条約(Ballast Water Management Convention 2004)」が発効した。これは船舶のバラスト水に侵入する危険のある水生動物種の拡散を防止するためにバラスト水の管理を規制したものである。
IMOの技術協力活動は、IMO条約と国連持続可能な開発目標の実施を支援する。「IMO加盟国監査スキーム(IMO Member State Audit Scheme)」は、2016年に全加盟国に対して義務的となり、IMO文書の適切な実施を支援し、関連するIMO条約の下に、旗、沿岸、港湾の状態等、に関する義務を果たしいているかの概要を加盟国に提供する。このプロセスによって、IMOは目標を絞った支援や能力強化を加盟国に提供することもできる。
IMOの後援のもとに二つの学術機関が運営されおり、特に開発途上国からの学生を中心に、大学院レベルの訓練を提供している。スウェーデンのマルメにある世界海事大学(World Maritime University)とマルタのムシダにある国際海事法研究所である。