社会開発
すべての人のためにより良い生活を実現することが開発努力の中心に据えられるようにするために、国連が何十年にもわたって開発の社会的側面を強調してきた。そして、健康、教育、家族計画、住宅および衛生に関する社会サービスをすべての人々に提供する政府の努力を率先して支援してきた。国連の進化していく政策や計画が常に強調してきたことは、開発が持つ社会的、経済的、環境的、文化的要因は互いに関連し合っており、そのうちの一つだけを切り離して追及することはできない、ということであった。
グローバル化と自由化が社会開発の新たな課題となっている。グローバル化の恩恵をより公平に分かち合うべきだとの願いが強まっている。国連は社会問題に対しては「人間中心」のアプローチを採り、個人、家族、地域社会を中心におく開発戦略を促進している。国連が取り組んでいるのは保健、教育、人口のような問題、そして女性、子どもや若者、先住民、障害者、高齢者、その他社会と開発の主流から取り残された人々のような社会的弱者の状況である。
国連主催の多くのグローバル会議もこれらの問題に焦点を当ててきた。1995年に開かれた世界社会開発サミットは、国際社会が貧困や失業、社会の崩壊との闘いを進めるために集まったことを示す最初の記念すべき会議であった。その結果生まれた「社会開発のためのコペンハーゲン宣言」とその10項目のコミットメントは、グローバルなレベルでの社会契約を意味するものであった。
社会開発がもつ多様な問題は、開発途上国、先進国の双方にとっての課題である。すべての社会は失業、社会の崩壊、長引く貧困の問題を抱えている。そして、強制移住の問題から薬物乱用、組織犯罪、病気の蔓延など、ますます多くの社会問題が各国協調の国際行動をとらない限り解決できない問題となっている。
国連は総会と経済社会理事会(ECOSOC)を通して社会開発の問題に取り組んでいる。この二つの機関が国連全体の政策や優先事業を決め、かつ活動計画を承認する。総会の6主要委員会の一つである社会、人道および文化委員会(Social, Humanitarian and Cultural Committee)は、社会部門に関連した議題を取り上げる。経済社会理事会のもとで社会開発問題を取り上げる主要な政府間機関は社会開発委員会(Commission for Social Development)(https://www.un.org/development/desa/dspd/united-nations-commission-for-social-development-csocd-social-policy-and-development-division.html)である。46カ国で構成され、社会政策や開発の社会的側面についてECOSOC と政府に助言を与える。委員会の2017年会期(2月1日-10日)の優先テーマは、「すべての人のために持続可能な開発を達成するための貧困撲滅戦略 Strategies for eradicating poverty to achieve sustainable development」であった。
事務局の中では経済社会局の社会政策開発部(Division for Social Policy and Development)(www.un.org/esa/socdev)がこれらの政府間機関に役務を提供し、調査研究、分析、専門家によるガイダンスを行っている。国連システム全体としては、これら以外にも社会開発のさまざまな側面を取り上げる多くの専門機関や基金、事務所がある。